【VOL122】中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎

読了時間目安:約 20分26秒

以前のメルマガで経営に必要な役割はセールス(営業)・マネジメント(管理)・スキル(技術)・ファイナンス(財務)とお伝えしました。
マーケティングは、その企業の価値をお客様にどう伝えるか、その活動に関わるものすべてのことを指します。
特に商品サービスの差別化から営業、集客、販売が大切になります。
中小企業の経営が厳しい原因の1つにマーケティング活動がしっかりできていないという点があります。
最低限必要なマーケティングの知識を覚えて実行していただくだけで、業績は大きく変わってきます。



参考:
【VOL117】中小企業の経営に必要な4つの役割を徹底解剖



今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で配信している内容です。

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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎』です。(編集前のメルマガは2016年8月31日(水)に配信されています)

マーケティングとは?

マーケティングというと市場調査のような意味合いに思いがちですが、広義の意味では『企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念』(Wikipediaより)とされています。

ここでは、「4つの役割をいかにデザインするか?」という概念をマーケティングと定義します。

もう狭い意味で表すと、「商品・サービスを開発(=スキル)して、誰にどうやって売るか(=セールス)がマーケティング」となります。

今回は特にこの「「商品・サービスを開発(=スキル)して、誰にどうやって売るか(=セールス)」の部分に注目していきます。

マーケティングのフレームワークに目移りしない

世の中にはたくさんのフレームワークが溢れていますが、マーケティングの世界も例外ではありません。
更にマーケティングの世界では新しいフレームワークがどんどん出てきますので、それを全て把握していこうとすると大変です。
そして、大手の広告会社でもあれば流行や時代の流れを追いかけなければいけませんが、中小企業の経営者であればどんどん現れては廃れていくマーケティング理論を追いかけてもほとんど効果がありません。

それよりも、フレームワークや理論は考え方の原則を理解することが大事です。
名前を覚える意味はほとんどありません。
まるでその言葉を知っていて当然と話してくる方と話すときに役立つ程度です。

例えば消費者の購買行動プロセスとして有名なフレームワークにAIDMA(アイドマ)の法則やAISAS(アイサス)の法則というものがあります。

AIDMAの法則とは?

A・・・Attention(=認知・注意)
I・・・Interest(=興味・関心)
D・・・Desire(欲求)
M・・・Memory(記憶)
A・・・Action(行動)

説明するまでもないかも知れませんが、例えば、

電車の中吊り広告で商品を見て(=認知)、この商品面白そうだなあと思う(=興味)、そして欲しいと思い(=欲求)、その商品を覚え(=記憶)、購入する(=行動)

という購買までの一連の消費者の心の動きを表したのがこのAIDMAの法則です。

認知の段階ではどういう方法をとるか?
関心を引くようなキャッチコピーになっているか?

・・・
・・・

などとフレームワークに当てはめて考えていくと、自社に足りないものが見えてきます。

AISASの法則とは?

一方で、その後、インターネットの発達で消費者の行動が変わったとして提唱されはじめたのがAISASの法則です。

A・・・Attention(認知・注意)
I・・・Interest(興味・関心)
S・・・Search(検索)
A・・・Action(行動)
S・・・Share(共有)

AとIはAIDMAの法則の時と同じです。

しかし、その後の行動が、販売者側が用意した口コミや評判ではなく、インターネットを使って検索して調べるというところがインターネットが一般的になる前後で違うため新しい論理が提唱された背景です。
口コミや評判だけでなく、他社商品サービスとの比較や価格比較などもインターネットを使うことで容易になっています。

そして更にはSNSなどを使用してその商品やサービスについて感想を書く(Share)も多くされています。

そういう意味ではマーケティング戦略自体もインターネットも無視できませんし、SNSでどうやったらシェアされるのかも考えなければいけません。

次々と現れるフレームワーク

そしてこのAISASの次にくる法則と言われているのが、「Dual AISAS(デュアル・アイサス)」だとか、「AIDCA(アイドカ)」だとか、「SIPS(シップス)」だとか、「CIR(シアー)」だとか言われています。

それぞれの理論がもちろん役には立つのですが、どんどん現れては廃れていくフレームワークを覚えていくとなるとそれだけで大変です。

今回紹介したのは購買行動モデルのフレームワークだけです。
それだけでもこんなにあるわけですから、マーケティングだけやっていれば良い人は別としても、他にもたくさんやることがある経営者には時間のコストパフォーマンスが悪すぎます。

重要なのは、消費者の購買行動、つまり購買に至るまでの心理と行動を考えて、商品やサービスの開発、販売をしなければいけないという一点です。
そこさえ抑えれば新しい法則や理論が出てきたとしても振り回されることがなくなります。

余談になりますが、気になっているかたもいらっしゃると思いますので、AISASの法則の次にくるだろうと言われている法則のうち上記であげた4つだけですが、簡単にご紹介しておきます。
気になったものがあれば詳しく調べてみてください。

Dual AISAS(デュアル・アイサス)とは?

ちょっと複雑なのですが、この法則は「買いたいのAISAS」と「広めたいのA+ISAS」に分かれます。

買いたいのAISASは通常のAISASと同様に
A・・・Attention(認知・注意)
I・・・Interest(興味・関心)
S・・・Search(検索)
A・・・Action(行動)
S・・・Share(共有)
で構成されます。

一方で、広めたいの「A+ISAS」
A・・・Active(起動)
I・・・Interest(興味・関心)
S・・・Share(共有)
A・・・Accept(受容)
S・・・Spread(拡散)

この理論では「買いたい」と「広めたい」によって行動が違うことため、その要素を盛り込んだ法則となっています。
実際に購入しなくても関心を持ち、SNSなどに「面白そう」とか「欲しい」とか投稿したことがある人は多いと思います。
そして、それがまたシェアされ拡散されて認知が広がる、どこかで購入への起動(Active)スイッチになり「A+ISAS」の横軸から「AISAS」の縦軸へ展開されるという考え方が、この「Dual AISAS」です。

AIDCA(アイドカ)の法則

アイダカの法則とも呼ばれAIDMAの法則の発展系です。
中小企業で推奨されているダイレクト・レスポンス・マーケティングでも使われている法則です。

A・・・Active(起動)
I・・・Interest(興味・関心)
D・・・Desire(欲求)
C・・・Conviction(確信)
A・・・Action(行動)

MemoryがConvictionに変わっただけです。
サンプルなどを利用してもらい、購入欲求をどうやって購入の確信に変えてもらうという考え方です。

SIPS(シップス)とは?

SNSの発展により、認知(Attention)というよりは、他人の投稿をみて共感(Sympathize)することから購入行動がはじまるとしたのがこのSIPSです。
もちろんSNSだけでなく企業のPRやCMなどにも共感を求める傾向が増えている背景があります。
(感動系やストーリー性が高いものが多くなっているのもその傾向です)

S・・・Sympathize(共感する)
I・・・Identify(確認する)
P・・・Participate(参加する)
S・・・Share(共有) & Spread(拡散する)

CIR(シアー)とは

C・・・Contact(接触)
I・・・Interest(関心)
R・・・Resonant(共鳴)

行動プロセスに応じて「CIR-D」「CIR-ARD」「CIR-SRD」「CIR-SRARD」の4つに分かれます。

最低限必要なマーケティングのフレームワーク

かなり簡単に購買行動に関するマーケティングの一部に触れましたが、覚えるだけで頭が痛くなりそうなほどたくさんあります。

もちろん知っていたほうが良いものばかりです。
ただ、全部覚えて使いこなすのは大変ですので、今回は最低限中小企業経営者が知っていてほしいマーケティングの基礎に絞ってお伝えします。

3C分析

次の3つのCをとって3Cと呼びます。

C・・・Customer(市場)
C・・・competitor(競合)
C・・・company(自社)

Companyは自社の商品・サービス
Customerはお客様
Competitorはライバル企業

と置き換えることもできます。



いつも中小企業のお手伝いをさせていただくときに経営者に聞くのは、

「なぜお客様はライバル企業の商品ではなく、御社の商品を買ってくれるのですか?」

という質問です。

この質問に答えられる企業や事業は傾向として伸びます。
もちろんキチンとした分析に基づいていないケースもありますが、意図をしっかりと持ってビジネスをやっているかやっていないかがわかるからです。

3Cは差別化のフレームワークです。
自社の優れたところ、ライバルに勝てるか、お客様に受け入れてもらえるのかという視点での分析になります。

「なぜお客様はライバル企業の商品ではなく、御社の商品を買ってくれるのですか?」

この質問に自分たちすら答えられないようでは、お客様に購入の明確な答えや理由はもっとないわけですから、買っていただけるわけがありません。

中小企業は特に差別化が大事です。
そのためにも上記の質問に答えられるように3C分析を十分にする必要があります。

この質問に答えられないのに広告や販促をしてもほぼ無意味です。
あくまで広告や販促は伝える手段であって、伝える中身がなければお客様には何も届かないからです。

自社(事業)の存在意義や存在目的はもちろん、理念やビジョンを含めて自社の差別化であり、ポジションニングです。
まずはここを明確にしないと次に進むことはできません。

3M

3Cで自社の強み、お客様層が絞り込めたら、次はどう伝えるかです。
その時に役に立つのが3Mという考え方です。

M・・・Market(マーケット)
M・・・Message(メッセージ)
M・・・Media(メディア)

マーケットは3Cで定めた市場とほぼ同義です。
しかし、どう伝えるかを考えたときに最も大切なこととなります。

年齢、生活習慣、地域性などにより、伝わるメッセージは違いますし、見るメディアも変わってきます。

少し大げさな例になりますが、高齢の方をマーケットに設定しているのにインターネットを中心に最近の流行り言葉でメッセージを伝えてもほとんど効果はありません。

逆に若者相手に新聞の折り込み広告も効果は低いでしょう。

どんなマーケット(お客様層)にどんなメッセージ(自社の強みや差別化要素、お客様のメリットなど)をどのメディア(媒体、宣伝方法など)を使って伝えるかというのを考えるのが3Mという考え方です。

3Mに関しては大枠の考え方と豊富な事例が小さな会社のためのマーケティング入門という本に書いてありますので一読をお勧めします。
アメリカの事例ではありますが、ほぼすべての業種の事例が載っているので参考になると思います。
また、他業種の工夫も自分の業種へ取り入れることができたら、それも差別化要素の1つとなります。

差別化とメッセージ作成の仕方

中小企業が最低限抑えておかなければいけないマーケティングは3Cと3Mです。
つまり「差別化してどう伝えるか」これを考えることがもっとも大事ということです。

とはいえ、その差別化が難しい、どう伝えるかが難しいという人も少なくないはずです。

まず差別化に関しては、経営方針書を作ってみるというのも1つの方法です。
起業した動機や、事業を通してどんな付加価値をお客様に提供していきたいのか、社会にどんな影響を与えていきたいのか、商品サービスの誕生秘話、込められた想いなどを経営方針書を作るためには考えていく必要があります。

その結果、他社にはない自社の差別化要素が発見できます。



参考:

【VOL115】BSCや人事評価制度の導入前に絶対に必要な経営計画書(経営方針書

→)【VOL110】経営計画や事業計画は中小企業経営に必要なのか?



一方で、メッセージの作り方は消費者行動心理の勉強とコピーライティングの技術が必要となってきます。
お客様が何を見てどう感じてどう行動するかがわかれば、それに合わせた文章を書く技術、話す技術があればお客様に伝わるはずです。
有名な本ではありますが、ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則ウェブセールスセールスライティング習得ハンドブックなどの本が消費者の行動心理とコピーライティングの両方が学べる上に実践的ですのでお勧めです。

消費者の行動心理を学ぶのであれば、他にもたくさんの本があります。
本の紹介ばかりになってしまいそうなので、有名な本や有名な法則に関しては次回のメルマガでご紹介したいと思います。



またホームページを作ってみることも1つの方法です。
業者にもよりますが、ホームページ作成の目的が集客やブランディングだと考えるとマーケティングは必須になりますので、必ずペルソナの設定やキャッチコピー作りなどをするはずです。

業者の手助けを得ながらでもいいですし、技術的なところだけ任せて自分で作っても良いですが、自社の定義、お客様層の明確化、キャッチコピーを含めた確かなメッセージが決まっていないと作れないのでマーケティングについて考えることとなります。

そんな貴重な機会ですので丸投げにせず、専門家の助けを借り手も良いので自分自身で作ってみましょう。

マーケティング

編集後記

メルマガ版財務講座にも関わらずマーケティングを取り扱ったのには理由があります。

財務はもちろん大事ですが、中小企業経営には財務戦略ほどではありませんが、マーケティング戦略がありません。

財務に関しては、経営者自身の数字に対する苦手意識であったり、会計の細かさや特殊なルールだったりが、遠ざける原因の1つになっています。

一方でマーケティングに関しては、多くの経営者が営業畑もしくは技術畑からの叩き上げのケースが多いため、理論や法則を学ばなくとも、今までの「経験」「勘」そして多少の困難があっても「度胸」「気合」「根性」でなんとかしてしまうからです。

しかし、だからこそ儲かっていない中小企業が多いという事実があります。
また一時儲かっていても長くは続かず一過性になってしまうという原因も同様です。
儲かっていないから従業員スタッフは低賃金で重労働となってしまい、生産性はあがらず、結果はでず、モチベーションはさがり、という悪循環を繰り返します。

あくまで理想ですが、マーケティングの理想は「販売活動をしなくてもモノが売れる状態を作ること」です。

そして会社や事業に利益を与えてくれるのはお客様であり、売上です。
決して財務や管理、研究や開発、教育といった内部活動ではありません。

中小企業がもう少し、本当にもう少しだけでもマーケティングを取り入れたら経営は大きく変わると思っています。(実際に弊社のお客様は全社とも効果がでています。)

そのため今回はマーケティングについて書きました。

当サイトの名前も「経営ナビ」に変わりました。
中小企業の経営に少しでもお役に立つことがあれば、メルマガを通しても発信していきますので、参考にしていただけたら幸いです。
もちろん財務情報も発信して行きます。

次回は、消費者行動心理について書きたいと思います。

※有名なポーターやコトラーに関してはまた別の機会に触れたいと思っていますので、今回はあえて書いておりません。もちろん重複している箇所もありますが。

2017年6月21日触れてみました。(2017年6月23日追記)
【VOL146】ポーターの競争戦略に学ぶ中小企業の差別化:参入障壁編

【関連記事】



【VOL123】マーケティングを最大限に活かすための消費者心理の基礎と代表例5つ

【VOL124】マーケティングより大切なビジネスモデルの作り方

【VOL135】マーケティングに役立つ心理効果〜印象編5選〜

【VOL136】マーケティングに役立つ心理効果〜特別感4選〜

【VOL137】マーケティングに役立つ心理効果〜表現方法5選〜

【VOL138】マーケティングに役立つ心理効果〜感情編4選〜

【VOL139】マーケティングに役立つ心理効果〜意思決定編4選〜

【VOL140】経営に活かすためのコピーライティング~本質とテクニックを見分けよう~

【VOL141】経営に活かすためのコピーライティング~コピーの型の基礎~


最後に

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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