【VOL100】労働生産性と労働分配率、その考え方の違いと経営への活かし方

読了時間目安:約 9分46秒

労働生産性と労働分配率という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
2つは似たような財務指標ですが、考え方が違います。
自社の2つの数値を知っているが、経営にどう活かしたら良いかわからないという方も多いのではないでしょうか?

今回は、その考え方の違いと経営への活かし方のヒントをまとめてみました。



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今回は『労働生産性と労働分配率、その考え方の違いと経営への活かし方』です。(編集前のメルマガは2016年3月30日(水)に配信されています)

労働生産性とは?

労働生産性とは、粗利益額÷人件費で求められる、人件費の何倍の粗利益を稼ぐことができているかを見るための指標です。

粗利益額、売上総利益、限界利益の違いが知りたい方はこちら
【VOL96】売上総利益(粗利益)と限界利益の違いと経営への活かし方!

よく自分の給料の何倍の粗利益を稼ぎましょうとか言うことはないでしょうか?

参考記事

【VOL90】社員・スタッフ1人あたりいくら稼いだら良いのか?

この時の人件費には、給料手当の他、法定福利費(社会保険)や福利厚生費、通勤費が入ります。

また、直接売上を稼ぐ営業部門の他、総務や経理といった売上を稼がない間接部門の人件費も入ります。
但し、外注費や外注加工費といった経費は入りません。

労働分配率とは

労働分配率とは、人件費÷粗利益額で求められる、粗利益額のうちに人件費が何%を占めるかを指し示した指標です。

人件費と粗利益額の定義は、労働生産性と同じです。

つまり、割り算の割る方と割られる方を逆にしただけです。

労働生産性と労働分配率の考え方の違い

計算式は、割り算の割る方と割られる方を逆にしただけなのですが、その考え方は全く違います。

労働生産性は、人件費の何倍の粗利益額を稼いでいるかを考える指標であるのに対して、

労働分配率は、稼いだ粗利益額を人件費に何%分配しているかを考える指標となっています。

鶏が先か卵が先かみたいな話に聞こえますが、粗利益額が先か、人件費が先かというお話になります。

労働生産性の経営への活かし方

人件費を20万円/月の社員がいたとします。

その人が稼ぐ粗利益額が20万円だったとすると、お給料をあげてあげることはできません。

給料をあげたければ、最低でも人件費以上の粗利益額を稼いでもらわなければいけません。

つまり1人1人の生産性を表す指標ですから、お給料をあげたければ、社員が粗利益額を稼ぐ仕組みを会社が作る(もしくは社員が頑張る)ということになります。

実際には人件費の他にも事業をやっていれば、固定費がかかるので、稼いだ粗利益額を丸ごと分配はできないのですが、そのことは労働分配率のところで書きます。

参考
【VOL90】社員・スタッフ1人あたりいくら稼いだら良いのか?

労働生産性は、稼ぐ=生産性にフォーカスする指標ですので、どうしたら粗利益額が増えるかを考える方向に思考が進みます。

会社や事業の成長を目指すのであれば、労働分配率より労働生産性で物事を考えることが大切です。

「事業効率をあげる=儲かる仕組みを作ること」こそが、生産性向上への第一歩です。

参考
【VOL35】経営は能率主義では失敗します。経営者の仕事は儲かる事業構造を作ることです。(メルマガ版財務講座)

労働分配率の経営への活かし方

労働分配率は、会社や事業のバランスを見る指標です。

理想の損益分岐点は80%であるという話は何度もお伝えしてきましたが、損益分岐点が80%ということは、粗利益額のうち20%は経常利益として残さなければいけないこととなります。

損益分岐点比率=固定費÷粗利益額

粗利益額(100%)=固定費(80%)+経常利益(20%)のため



損益分岐点比率がなぜ80%が理想かはこちら

【VOL5】損益分岐点という考え方を理解して事業計画を自在に作れるようになりましょう(メルマガ版財務講座)

【VOL6】損益分岐点売上高の計算方法を覚え、自在に事業計画を立てましょう!(メルマガ版財務講座)



経常利益を20%残さなければいけないということは、人件費+固定費=80%以内に納まっていなければいけません。

人件費と固定費の割合は業種というよりは、業態によるのですが、一般的には人件費40%〜60%、固定費30%〜50%程度です。

労働分配率を重視して経営をしようとすると、どうしても経費の削減に目がいきがちです。

ムダな経費はもちろん削減した方が良いのですが、経費を削減して成長している企業はほとんどありません、特に中小企業は。

ですので、時たま確認し、異常値が出てないかを考えるくらいのほうが理想です。

なぜ業種ではなく、業態によって適正な労働分配率は違うのか?

労働分配率は、業種ではなく業態によって違うと前述しましたが、その理由をお話しします。

例えば、建設業で人工出しをしている企業は、業種的には建設業ですが、業態的には派遣業に似ています。

人工出しとは、簡単に言うと建設現場に必要な人数の大工や職人を連れていき、1日いくらで元請けからお金をもらう商売です。

なので、人工さんが、社員なのか、外注なのかによって、人件費も粗利益率も違ってきます。

他にも、必要なSEを大手企業の要望に沿って常駐させている企業も、それが外注の派遣なのか、社員の常駐かによって労働分配率は変わってきます。

総務経理を外注にするか社員にするか、WEB担当者を外注にするか社員にするか、いろんな要素によって変わってくるので、業種平均を見てもあまり参考にならないことがわかると思います。

大切なのは、労働分配率ではなく、固定費と人件費が粗利益額に占める割合(=損益分岐点比率)が80%以下になっていることです。

外注さんが多ければ、人件費ももちろん減りますし、広い事務所も必要ないでしょうから家賃などの固定費も減るはずです。

そのバランスが大事となります。

一方、労働生産性は社員、スタッフのお給料をあげたければ、当然に生産性をあげていかなければなりません。

なので、経営視点で見る場合も労働分配率と労働生産性の考え方は違うことになります。

傾向はあっても本当に自社にとって目指すべき労働分配率や労働生産性は、事業によってそれぞれです。
本当に知りたければ、キチンと自社を知っていて、かつ、他の事業のこともたくさん知っている人にご相談することをお勧めします。

生産

編集後記

事業を成長させたければ、経費をおさえるのではなく、どうしたら売上を伸ばせるのか、粗利益額を稼げるのかを考えることが大切です。

よほど事業規模が大きく、不採算部門でもあるのであれば、不採算部門の廃止などの経費を抑える処置も必要ですし、その結果として事業が成長することもあるでしょうが、中小企業の場合には経費削減で事業が成長した事例を私は知りません。

減収増益で喜ぶのは金融機関だけです。

もちろん、赤字体質で何としてでも利益を出さなければいけない企業は経費削減も大胆にやらなければいけないですが。。。

経費削減+金融戦略でマイナスだったキャッシュフローをプラスにすることは可能です。

金融機関についてはこちらの記事を。
金融機関・銀行・資金調達に関連する記事

個人的な話ではありますが、ついにこのメルマガも100回目を迎えました。
やはりキリの良い数字は気持ちがいいですね。

これもいつもお読みいただいている皆さまのお陰です。
ありがとうございます。

これからも引き続きよろしくお願いします。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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