【VOL107】変動費と原価(製造原価)の違いを理解すると会計が経営に役立ちます!

読了時間目安:約 18分5秒

変動費と原価(製造原価)の違いは会社の経営を数字で見る上でとても大切なことです。
今回は変動費と原価(製造原価)の考え方の違いを経営の観点からご説明致します。

これが理解できると、例えば、商品(又は製品)1つおまけしたときの損益の影響や、値引きをいくらまでしたら商品1つをおまけした時と同じ損益への影響額になるか、その商品から撤退すべきか、追加注文を受けるべきか受けないべきかなどの経営判断が数字でわかるようになります。

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『変動費と原価(製造原価)の違いを理解すると会計が経営に役立ちます!』です。(編集前のメルマガは2016年5月18日(水)に配信されています)

変動費と原価(製造原価)の違い

以前のメルマガ、【VOL96】売上総利益(粗利益)と限界利益の違いと経営への活かし方!でもご説明しましたが、

売上高から変動費を引いたのが限界利益で、売上高から原価(製造原価)を引いたのが売上総利益(粗利益)です。

変動費とは?

その名前のとおり、売上高の増減により変動する経費のことです。
具体的には商品を作るための材料代であったり、商品を加工するための外注加工費だったりします。

変動費と対になるのは固定費で、例えば工場の家賃や機械のリース代などは、商品を何個作ろうが毎月同じだけの金額が固定的にかかりますので固定費となります。(商品を増産するために新しい工場が必要、新しい機械が必要などで、別途お金がかかることもありますが、売上に比例するわけではありませんので、変動費とはいいません。)

原価(製造原価)とは?

原価とは商品をつくるのにかかった経費すべてを言います。

上記の例でいえば、商品を作るための材料費や商品を加工するための外注加工費はもちろん、機械のリース代や工場の地代家賃、工場で働く人の人件費などすべてが入ります。(わかりやすくするために工場で商品=製品を作ることを前提としています)

営業マンや事務員の人件費や販売店の家賃など商品を作るのに直接関係ない経費は原価に含まれません。

変動費と原価(製造原価)の在庫の考え方

少し余談になりますが…

例えば、1個あたりの材料費1,000円、外注加工費1,500円、工場全体の働く人の人件費(=労務費)が500万円/月、地代家賃が40万円/月、機械のリース代が200万円/月、かかったとします。(他にも水道光熱費など実際にはかかる経費はありますが、割愛します)

仮に1万個作って9千個売れ、1千個が在庫になったとすると、

変動費で計算した場合には、
1万個×材料費1,000円=10,000,000円
1万個×外注加工費1,500円=15,000,000円

合計25,000,000円が変動費となります。

25,000,000円÷1万個=2,500円が1個あたりの変動費ですから、在庫の金額は1,000個×2,500円=2,500,000円となります。



一方で、原価計算をすると、
1万個×材料費1,000円=10,000,000円
1万個×外注加工費1,500円=15,000,000円
に、
労務費5,000,000円
地代家賃400,000円
リース代2,000,000円
がかかり、

合計、32,400,000円となります。

32,400,000円÷1万個=3,240円が1個あたりの原価となり、3,240,000円が在庫となります。

さらに余談ではありますが、税務申告や会社法上では、原価計算をした上での在庫を使いますので、この場合の在庫は3,240,000円となります。

変動費と原価で考えた場合の経営判断の違い

今回はわかりづらくなりますので、在庫の概念は割愛します。
上記で説明したことは申し訳ございませんが、忘れてください。

仮に商品を3,000円で1万個を販売したとしましょう。

変動費で考えた場合

売上高  30,000,000円(@3,000円)
材料費  10,000,000円(@1,000円)
加工費  15,000,000円(@1,500円)
限界利益  5,000,000円(@ 500円)
人件費   5,000,000円
地代家賃   400,000円
リース代  2,000,000円
損益   ▲2,400,000円

となります。

MQ会計の考え方を思い出していただきたいのですが、
固定費が人件費+地代家賃+リース代=7,400,000円ですので、

7,400,000円を粗利益額で稼がなければ利益がでないこととなります。

つまり1個当たりの限界利益額が500円ですから、7,400,000円÷500円=14,800個売らなければいけないということが明確になります。

4,800個余分に作る余力が人員、工場にあれば4,800個を増産し販売する方針をとればいいこととなります。

原価で考えた場合

売上高  30,000,000円(@3,000円)
材料費  10,000,000円(@1,000円)
加工費  15,000,000円(@1,500円)
人件費   5,000,000円(@ 500円)
地代家賃   400,000円(@  40円)
リース代  2,000,000円(@ 200円)
損益   ▲2,400,000円(@ ▲240円)

となります。

結果1個作って売るのに240円赤字になるので、原価をどう削減するかが焦点となりがちです。

しかし、実際には人員、工場に余力があるのであれば、1万個ではなく2万個作っても、人件費、地代家賃、リース代の金額は変わりませんので、原価を削減しなくても十分に利益がでます。

ここで、間違った経営判断をして、材料の仕入先や加工業者のコストカット、工場で働く社員の人件費カットなどをすると誰も幸せにならない結果となります。

判断のポイントは販売(生産)個数を増やして固定費が増えるか

仮に上記の例で2万個生産及び販売を同じ固定費でできるのであれば、

売上高  60,000,000円(@3,000円)
材料費  20,000,000円(@1,000円)
加工費  30,000,000円(@1,500円)
人件費   5,000,000円(@ 250円)
地代家賃   400,000円(@  20円)
リース代  2,000,000円(@ 100円)
損益    2,600,000円(@ 130円)

1個当たりの原価は1,000円+1,500円+250円+20円+100円=2,870円に下がるので、1個あたり130円の利益がでることとなります。

しかし、もう生産及び販売能力が目一杯で、1万個から倍の2万個を作るのに、工場も人員も機械ももう1式用意しなければ行けない場合には、同じだけ人件費、地代家賃、リース代がかかるので、1個あたりの利益は▲240円となってしまいます。

ただ、生産もしくは販売能力限界まで稼働しているのに赤字ということは、商売として儲からないということですから、現実にはそれでは経営が成り立ちません。(もしそうだとすれば、販売単価をあげるか、材料、加工費、家賃、人件費、リース料などの原価を下げる以外にありません)

おまけ1個つけるのと割引するのはどっちがお得か?

ということで、生産もしくは販売能力は限界ではなく、2万個生産し販売する余力があるとします。
(生産するのは簡単でも販売するための努力はしなければいけませんが…)

この場合原価で考えると1個あたり2,870円作るのにコストがかかっていることとなりますが、変動費で考えると2,500円です。

つまり、1個商品をおまけするということは、2,500円ただであげるのと変わりません。

ですので、値引きで2,500円以上するとおまけをあげるより損をすることになります。

また、お客様としても、2,500円引かれるより、3,000円の商品をもらったと考えるほうが、お得な気がするのではないでしょうか?

たまーに、3,000円の商品をもらえるなら3,000円引いて欲しいという方がいらっしゃるかと思いますが、原価と売価の違いをわかっていない(またはわかっているけどあえて言う)ケースですので、数字上の話だけであれば応じる必要はありません。

その商品から撤退すべきかしないべきか

仮に上記の人件費、家賃、リース代で、A商品(売価3,000円)を5千個とB商品(売価4,000円)で5千個で合計1万個の商品をつくっている会社があるとします。

さて、A商品、B商品どちらから撤退すべきでしょうか?それともどちらからも撤退しない、もしくはどちらからも撤退すべきでしょうか?
数字で経営判断をしてみましょう。

人件費、家賃、リース代などはA商品、B商品で半々の稼働で、材料費及び加工費はA商品もB商品も1個あたり同じ金額だとします。

原価で考えると…

A商品

売上高  15,000,000円(@3,000円)(3,000円×5,000個)
材料費   5,000,000円(@1,000円)(1,000円×5,000個)
加工費   7,500,000円(@1,500円)(1,500円×5,000個)
人件費   2,500,000円(@ 500円)(5,000,000円×1/2÷5,000個)
地代家賃   200,000円(@  40円)(400,000円×1/2÷5,000個)
リース代  1,000,000円(@ 200円)(1,000,000円×1/2÷5,000個)
損益   ▲2,400,000円(▲ 240円)

B商品

売上高  20,000,000円(@4,000円)(4,000円×5,000個)
材料費   5,000,000円(@1,000円)(1,000円×5,000個)
加工費   7,500,000円(@1,500円)(1,500円×5,000個)
人件費   2,500,000円(@ 500円)(5,000,000円×1/2÷5,000個)
地代家賃   200,000円(@  40円)(400,000円×1/2÷5,000個)
リース代  1,000,000円(@ 200円)(1,000,000円×1/2÷5,000個)
損益    3,800,000円(@ 760円)

商品Aから撤退しても良いのか?

上記を見ていただくと、A商品は赤字の▲240万円、B商品は黒字の130万円です。
一見商品Aから撤退しても良いように見えますが、実際には撤退しても人件費、家賃、リース代などの固定費はかかってしまうので、商品Aの売上高1,500万円から材料費500万、加工費750万を引いた限界利益である250万がなくなってしまうだけです。

つまり、

売上高  20,000,000円(B商品分)(@4,000円)(4,000円×5,000個)
材料費   5,000,000円(B商品分)(@1,000円)(1,000円×5,000個)
加工費   7,500,000円(B商品分)(@1,500円)(1,500円×5,000個)
人件費   5,000,000円(A+B商品分)(@1,000円)(5,000,000円×÷5,000個)
地代家賃   400,000円(A+B商品分)(@  80円)(400,000円÷5,000個)
リース代  2,000,000円(A+B商品分)(@ 400円)(1,000,000円÷5,000個)
損益     100,000円(@ 760円)

となってしまいます。

A商品もB商品も売っていれば▲240万円+380万円=140万円のプラスだったのにも関わらずA商品の販売を辞めてしまうと10万円しか利益がでないこととなってしまいます。

但し、A商品を作っていた生産能力(工場のライン)などで、B商品を作り販売することができる、または利益率の良いC商品を販売することができるのであれば、A商品の販売をやめて新たな商品に切り替えることができます。

まず第一に大切なのは限界利益がでているかどうか

撤退すべきかどうかの第一基準は限界利益が出ているかどうかです。
限界利益の出ない商品からは即時撤退をすべきです。

A商品の限界利益

売上高  15,000,000円(@3,000円)(3,000円×5,000個)
材料費   5,000,000円(@1,000円)(1,000円×5,000個)
加工費   7,500,000円(@1,500円)(1,500円×5,000個)
限界利益  2,500,000円(@ 250円)

B商品の限界利益

売上高  20,000,000円(@4,000円)(4,000円×5,000個)
材料費   5,000,000円(@1,000円)(1,000円×5,000個)
加工費   7,500,000円(@1,500円)(1,500円×5,000個)
限界利益  7,500,000円(@ 750円)

限界利益がでている場合の経営判断

限界利益は出ているが、固定費を引くと赤字の場合には、数字をどう使って経営判断をすれば良いのかというと、これも変動費、固定費で考えるとすぐにわかります。

原価計算ではわかりません。

次回は限界利益が出ている場合の経営判断の基準について書いていきます。

指標の1つとしては、1個あたりの商品サービスにどのくらいの原価がかかっているのかを調べることはもちろん大切です。

しかし、経営にとってもっとも大切なことは、限界利益が固定費を上回っているかどうかです。

そしてどうしたら限界利益が固定費を上回ることができるのか気づく指標になるのが会計資料でなければいけません。

会計資料を経営の地図にするために、財務や会計についての見る技術を身につけていきましょう。

経費の比較

編集後記

変動費と原価の違いについてご説明しました。

会計基準は原価を使うことが基本ですが、中小企業の経営においては、変動費と固定費にわけたほうが、正しい経営判断ができます。

上記の事例で原価計算に基づいて、A商品から撤退するなどという経営判断をしてしまったらとんでもないことになってしまうからです。

キチンとA商品から撤退した場合に、A商品より利益率の良い商品がある、または、A商品を撤退するかわりにそこにかかる人件費、家賃、リース代などの固定費を削減することができるなどの目処が立っていない場合には利益を減らしてしまう、または、赤字を拡大させてしまうという結果しか生みません。

利益率で考えるのではなく、利益額で考えなければ、利益のでる経営はできないということになります。



関連記事

【VOL34】数字に強い経営者は「率で見る数字」と「額で見る数字」を理解しています。(メルマガ版財務講座)

限界利益で考える経営は以下の記事を参考にしてみてください。

【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう

【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!

http://kigyo-jyuku.asia/1293/zaimu-merumaga81-mq-example/


最後に

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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