【VOL146】ポーターの競争戦略に学ぶ中小企業の差別化:参入障壁編

読了時間目安:約 19分12秒

中小企業の経営が厳しい理由の一つに差別化ができていないことがあります。
差別化がなぜできないのか?
良いアイディアが思いつき商品やサービスを開発したとしても真似されてしまい、すぐに競争になってしまうからです。
真似されないためにどうしたら良いのか?
それは思いついたアイディアに参入障壁を考え商品化やサービス化をすることにあります。
今回は、少し理論が中心になりますが、ポーターの競争の戦略という本にヒントがあります。



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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『ポーターの競争戦略に学ぶ中小企業の差別化:参入障壁編』です。(編集前のメルマガは2017年6月21日(水)に配信されています)

ビジネスの4原則

ビジネスの4原則というのをご存知でしょうか?
堀江貴文氏が提唱したとも言われているこの4原則ですが、まずビジネスを始めるのであれば、この4つをすべてでないにしてもできる限り満たしているとビジネスの成功確率は高くなると言われています。

小資本で始められる

少ない元手で始められるということは、失敗してもやり直しができます。
失敗してもやり直しができるということは、トライ&エラーを何回も繰り返すことができ、ビジネスの基本であるPDCAを何回も回すことができるということになります。

また、ビジネスは少ない元手で大きな利益を出せるものほどビジネスモデルが優れていると言われています。
そのため、総資本経常利益率(ROA)や株主資本利益率(ROE)などが、株主や金融機関からの企業評価に使われています。

【VOL66】企業の経営状態がわかる4つの見るべき財務上の数字

【VOL119】他社の経営を数字で見るなら総資本経常利益率に注目!業種別平均も公開!

また、最初の元手がかかるということは、資金調達の難易度や労力はもちろん、返済分も稼ぐことができないとお金が回らないことになり、自然とビジネスの難易度はあがりますので、小資本で始められれば始められるほど、成功確率が高くなると言えます。

在庫がない(または少ない)

在庫を抱えるリスクについては他の記事で解説していますが、仕入れコストが発生し、売れるまでのタイムラグが発生します。
結果的に、お金を支払ってから入金されるまでのタイムラグが発生し、運転資金が必要となります。

また、在庫が定期的に売れて、一般的に言う回転をすれば、まだ良いのですが、仕入れてから売るということは、売れないということもあり、在庫がロスする可能性も秘めています。
加えて、在庫管理の手間や倉庫代などのコストがかかります。

在庫がないビジネス(例えば、コンサル業やアフィリエイト)であれば、そういったリスクが極端に少なくなります。
そのため在庫がない(または少ない)ビジネスが推奨されています。

意外とこの在庫のリスクを考えないことが多いのですが、黒字倒産の理由に在庫が挙げられることが少なくないように、在庫を持つということそれ自体が大きなリスクを抱えることになります。

更には、ビジネスが成長し、取引量が増加すると、必然的に在庫量も多くしなければならなくなり、資金繰りが困難になります。

【VOL120】経営上の在庫リスクと在庫のメリット・デメリット

【VOL121】商品(在庫)回転率を使った適正在庫の考え方

利益率の高い

ビジネスの中で最も難しいものの1つが、新規のお客様の開拓です。
以前、中小企業の価格競争参入は間違い?フロントエンドとバックエンドの使い方という記事で、「1,000円のものを1,000個売って100万円の売上を達成するのと、10万円のものを10個売って100万円の売上を達成するのではどちらが簡単か?」と書きましたが、圧倒的に後者のほうが簡単です。

1個あたりの利益率が高い商品やサービスを売ることで、お客様単価も高くなるケースが多く、新規のお客様を大量に獲得しなければいけないビジネスモデルから脱出できるということになります。
(厳密には利益率というよりは利益額の話ですが・・・)

また、利益率が高いということは原価が少ないということになります。
仕入や外注がない、または少ないということになりますので、仕入先や外注先への依存度が下がり、業者を探すコストも少なくてすみます。
また、先に出ていくお金が少なくなり、リスクも軽減されることとなります。

そのため100円売って1円しか儲からないビジネスより、100円売って100円儲かる粗利益率の高いビジネスが推奨されています。

毎月定期収入が入る

利益率が高いのところにも書きましたが、新規のお客様を開拓するというのはビジネスで難しいことの1つです。
常に新規のお客様を獲得しなければいけないビジネスでは、来月の収入の予測をなかなか立てることができず、常にお客様の開拓に労力とお金を使い続けることとなります。

極端な話ですが、来月の売上がなかったら資金繰りが回らないというプレッシャーに追われながら日々を過ごさなければいけないわけですから、余程その環境に追い込まれなければ力を発揮できないという人以外は、精神的にも厳しい環境といえます。

これが、毎月定期収入が入るビジネスモデルであれば、あと何件お客様が増えれば毎月の資金繰りは回るようになり、残ったお金は毎月いくらづつ投資するとか貯金するとか、計画的な運営ができるようになります。

ですので、少額でも定期的に収入が入ってくるビジネスをすることは、ビジネスを成長させるためにも、リスクを回避するためにも有効な方法といえます。

4原則に則ったビジネスの参入障壁

4原則はとても理にかなったものですが、この条件を満たせば満たすほど、ライバルの参入障壁は作りづらくなります。

元出が少なくて済むのであれば誰でも参入することができてしまい、成功事例ができた後はあっという間にライバルが増えます。
在庫に関しても同様で、品揃えや独占仕入などで本来は差別化できる要素がありますが、在庫がない商売ではそういう差別化は難しくなります。

以下、利益率が高い、定期収入があるという点も同様で、新規顧客開拓が苦手な人でもビジネスがしやすい点1つをとっても参入障壁が低くなります。

例えば、コンサル業。
多くはパソコン1台で起業でき、在庫はなく、売上=粗利益と利益率も高く、毎月顧問料が入るという4原則のほぼすべてに当てはまるビジネスになります。
その結果、誰も彼もがコンサルタントを名乗り、コンサルタントは怪しいという印象すら一般化してしまうほど、飽和状態になっています。

また、アフィリエイトも同様で、パソコン1台で企業、在庫無し、売上=粗利益、定額ではないが毎月収入が入る可能性が高いという4原則に即しています。
結果、副業でアフィリエイトに参入する人も多く競争相手は増加しています。
こちらは更に知識や経験が必要という参入障壁がないため、大手企業が資金を投入し量産するという体制も行われ、なかなか個人が勝ちづらくなっている業界となりつつあります。

中小企業や小規模事業者はどう参入障壁をつくるべきか?

例として少し書かせていただいた、コンサルタントやアフィリエイターでも差別化に成功し、中小企業や小規模事業者でもビジネスで成功している方も少なくありません。
成功している方の多くが実践しているのが、大手やライバルが容易に参入しづらい参入障壁を作るということです。

その参入障壁の考え方がポーターの競争の戦略の中にファイブフォースというフレームワークの中で紹介されています。

ファイブフォース:新規参入の脅威

ポーターの競争戦略に書かれているファイブフォースは、①新規参入の脅威、②業界内の競争、③代替品の脅威、④買い手の交渉力、⑤売り手の交渉力の5つから構成されています。
そのうち、①の新規参入の脅威で書かれている8つの項目が参入障壁を考える上でのポイントになります。

規模の経済性があるか?

規模の経済性とは、例えば大量に作ればコストが削減できるものをいいます。
多くの場合、1個のものを仕入れるより、大量に仕入れるほうが1個あたりの値段が安くなるように、規模の経済性が働くことが多くなります。
これは、仕入原価の話だけでなく、社員教育やマーケティング、サービスなどすべての分野で働く経済の原理となります。

この規模の経済性がある業界や業態であればあるほど、後発参入組のほうが競争は不利になり、参入障壁は高いといえます。

業界で製品の差別化ができているか?

差別化の結果、ブランディングができていて、お客様の製品やサービスへの忠誠度が高いかどうかがポイントとなります。
例えば、ビールならキリン、カレーはCoCo壱番屋、化粧品は資生堂など、誰もが知っている企業がある業界は新規参入が難しくなります。
一方で、定番の企業がなく、企業同士が群雄割拠し、シェアを獲得できていない業界ほど新規参入者にチャンスが生まれることとなります。

参入に巨額の投資が必要か?

4原則のところでも少し書きましたが、新規参入に巨額の投資が必要であればあるほど、資金調達のリスク、うまくいかなかったときのリスクなど新規参入の際のリスクが高くなり、参入障壁となります。
仮に誰がやっても儲かるビジネスがあったとしても、1兆円の初期投資が必要となれば、それだけで参入できる人は少なくなります。
数百万円で開業できる飲食業や理美容業が多いのも、病院より歯医者が多いのも、この初期費用の参入障壁が少ないからです。

仕入先を変えるコストが高いか?

これは自社が仕入先を変えるということではなく、自社が売っている商品をお客様が変えるコストがどの程度あるかという視点だということがポイントです。
例えば、会社で使う消耗品をアスクルからカウネットに変えるのには、ほとんどコストがかかりません。
つまり、消耗品業者は参入障壁がほとんどないといえます。

一方で、会計事務所を変えるとなると消耗品業者を変えるよりコストは高くなります。
経理の方法を変える必要がある場合もありますし、仮になかったとしても現状の経理のやり方をイチから会計事務所に伝え直さなければいけません。

自社のお客様が購入先を変えるコストが高ければ高いほど、参入障壁が高いといえます。

流通チャネルの確保が困難か?

わかりやすいのは運送業などですが、ヤマト運輸に変わってアマゾンの商品を配送するのは、かなり困難です。
これは、アマゾンの配送業者はヤマト運輸という流通チャネルが確定しているからです。
余程のインパクトを与える提案ができなければ、この流通チャネルを破壊することは難しいでしょう。

コンビニへ商品を卸している企業なども同様で、新規でコンビニに商品をおいてもらおうとすれば相当なインパクトが必要です。
既存の業者が新商品を置くのに比べて数倍の努力を要することになります。

こういった流通チャネルが固定されている業界は参入障壁が高いといえます。

規模とは無関係なコスト面で不利か?

独占的な技術を持っているなど、規模が大きくても新規に研究開発で作るにはコストが多大にかかるような強みを持っているかというのも参入障壁になります。

規模とは無関係なコストの中には、
原材料が有利に手に入ることや、立地に恵まれていることはもちろん、習熟又は経験曲線の効果などがあげられます。

習熟又は経験曲線の効果とは、伝統職人などがわかりやすいと思いますが、
原料はお金さえあれば変えますが、それを作る技術はその人に依存します。

結果、お金があって人があっても作れない、または作れたとしても何倍もの時間がかかるという状態が起こることを「習熟又は経験曲線の効果」といい、これも参入障壁の1つとなります。

政府の政策に制限や規制があるか?

テレビは電波法により参入できる業者が実質政府によって定められています。
こういう業界はやはり参入障壁が高いといえます。
ここまで極端でなくとも、弁護士や税理士も国から独占業務を与えられ、特定の業務は誰でもできるわけではありません。

一方で、政府の政策によって突然規制されるような業種も参入障壁が高いと言えます。
例えばタクシー業界、政府の政策により初乗り料金が変わったり、政策による減車や増車が決まったりするような、国の政策を受けやすい業種はリスクも高く、かつ、後発業者が不利になるケースが多いため参入障壁が高いといえます。

参入に対して報復が予想されるか?

新規参入業者に対して、既存業者が結託して報復してきたり、特定の1社が強く嫌がらせを受けたりするような業界はやはり参入障壁が高いといえます。
球団買収や実質テレビ局の買収をしようとして、業界から猛反発という形で報復を受けた過去の事例もあります。
また、業界に限らず地域性という問題もあります。

こういう傾向が強い、業界・地域は参入障壁が高いといえます。

参入障壁

編集後記

ポーターのファイブフォースの新規参入の脅威は、新規参入のしやすさを考える上でのフレームワークにもなりますが、一方で参入後に大手や自社より力のある企業と競争にならないために、どうしたら良いかを考える指標にもなります。
結果的に、自社の差別化にもつながります。

例えば、私の業種は4原則すべてに当てはまり新規参入は簡単なようですが、一度お客様になってしまえば変えるのはお客様にとって手間であるため少なく、かつ、知識や経験が必要な業種ですので、中小企業を対象にこの価格帯でやっているライバルは現れにくいというのが参入障壁になっております。

近いところでいえば、税理士がライバルともいえますが、税理士は税のプロであるのに対し、私は中小企業の業績を改善するのを生業にしているため、結果的には共存できます。

改善の一環で会計業務の部分で経営が見えるような会計帳簿づくりや経理業務にかかっている時間を削減するための改善など重なる部分もありますが、帳簿をみやすくすることや、数字を説明すること、経理を簡単にすることがゴールではなく、その結果経営が良くなることが目的ですので、一時的なライバルになることはあっても、長期的にはライバルにはなりえません。

そして、経営を改善するためには知識も経験も必要なため、大手が仕組みやマニュアルで安売りをすることもできません。
そのため十分な参入障壁を気づけていると思っています。

ただ、その分、それをできる人材を教育するのには時間がかかりますし、そういうことのできる人材を採用しようとすると高給与になるという悩みはありますが・・・・

ぜひポーターのファイブフォースを利用して、自社の参入障壁はどこにあるのかはもちろん、新しいアイディアを思いついたときに新規参入が容易か、参入後の参入障壁は作れるかなどを検証してみていただけたらと思います。

新しいアイディアを思いつき、試行錯誤の末に利益がでるようになっても後発の企業が資金にモノを言わせ真似をしてきて、あっという間に競争になり、資金で負けて撤退となってしまっては意味がありませんので。

ポーターの競争戦略の一部をご紹介しましたが、この本はお薦めです。

少し値段が高い上に内容が難しいので、とりあえずという方はこちらもお薦めです。
私はまずこれから読みました。

競争戦略のエッセンシャル版もあります。



もし、マーケティングで悩まれているようであれば、競争戦略もお勧めですが、まずはこちらから読むことをお勧めします。

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※たった550円とは思えないほど内容が充実しています。

経営者の仕事の中心は、方向性を決め、戦略を練り、マーケティングを行うことです。
それに集中するためにも、本業に直結しない経理や総務といった間接業務に費やす時間を減らし、本業に使う時間を確保することが重要です。
時間がなくて・・・という方はぜひこちらの記事も御覧ください。

【VOL145】記帳代行などの経理業務やバックオフィス業務を外注するメリット


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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