【VOL154】仮想通貨を法人で取り扱うメリットとデメリット

読了時間目安:約 12分57秒

前回に引き続き仮想通貨のお話です。
個人で仮想通貨を売買するより、法人で売買したほうが良いんじゃないか?
とか、
法人と個人とどっちが得なのか?

と考える経営者は少なくないと思います。

今回は法人で仮想通貨を売買するメリット・デメリットを個人と比較しながら書いていきます。


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今回は『仮想通貨を法人で取り扱うメリットとデメリット』です。(編集前のメルマガは2018年6月13日(水)に配信されています)

仮想通貨を法人で取り扱うメリット

仮想通貨を法人で売買するメリットは以下の4つです。

利益が大きくなると税率が低くなる

個人の仮想通貨の売買による所得が雑所得であると国税庁より発表がありました。
(2017年12月1日に発表された「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」に詳細が書かれています。)

細かい法律の話は省きますが、株やFXは譲渡所得とされていて分離課税になります。
分離という言葉が表すように、分けて離して税金が課税されます。
株やFXは、一律20%というのが現状の税率です。

一方で仮想通は雑所得。
雑所得は例外をのぞいて総合課税と呼ばれるまとめて税金を課税する方式で課税されます。

所得税は累進課税という言葉を聞いたことがある方も多いのではないかと思いますが、
利益(=所得)が大きくなればなるほど税率は高くなります。

約5%〜45%の変動幅がある所得税に約10%の住民税がかかる計算になります。
所得に応じた所得税率はこちら

法人も累進課税が一部取り入れられていますが、所得税ほどではありません。
また、昨今、海外との競争力を高めるためという目的で、法人税率がかなり引き下げられています。

実効税率と呼ばれる、法人税・地方法人税・法人県民税・法人市民税・法人事業税などすべての税金を併せた税率は約30%と言われています。

細かいことをいえば、年所得が、400万までと、年400万〜800万まで、年800万超えによって実効税率は変わりますが…

800万を超えた部分で約33.4%と言われています。

つまり最大55%にあがる所得税より、たくさん利益がでた場合には法人税のほうが安く抑えられるということです。

逆に言えば、売買利益が少なければ個人のほうが得になるケースもあるということです。

どちらが得か、個別のシミュレーションは税理士などの専門家にしてもらうのをお勧めします。
(参考記事:
失敗しない税理士の「選び方」と「選ぶときの5つのポイント」

また、仮想通貨は現在雑所得という発表がされていますが、将来的には所得区分が変わる可能性もあります。
FXも最初のころは雑所得でしたが、現在は分離課税に変更になりました。

新しいものはとりあえず雑所得になる傾向があり、数年経ってからより適正な区分に変更になることが多いのが税金の特徴としてあります。

仮に株式やFXと同じ取扱になれば、税率のメリットは法人よりむしろ個人にあることになります。

経費が認められる

雑所得では、その収益を獲得するために直接要した経費しか認められません。
直接とは、仮想通貨であればその購入した通貨の代金と手数料程度です。

一方、法人であれば事業に関係あれば間接的な経費も認められます。

例えば、仮想通貨のセミナー代や書籍代なども経費になります。
また仮想通貨の取引に必要なPCや電気代など幅広い経費を計上できます。
(具体的にはケースによるので、何が経費になるかは税理士などの専門家にご相談ください)

個人でも事業所得として認められれば、事業所得となり上記のような経費も認められる可能性があります。
しかし、現状では事業所得として認められるのは難しいとされていて、現実的ではありません。

損益通算ができる

個人でも仮想通貨どおしでの損益通算は同じ年であればできます。
例えばビットコインで100万円利益がでたけど、モナーコインで50万円損してしまったなど。
この場合は100万円-50万円=50万円がその年の損益となります。

しかし、給料や不動産収入との通算はできません。
仮に仮想通貨で300万損していて、不動産で300万円利益が出ていたとすると、
利益と損は通算できず、不動産の利益300万円に対して税金がかかることとなります。

法人の場合には、すべての収入からすべての費用をひくことができますので、
上記の場合には通算損益ゼロとして税金はかかりません。

事業で大損して仮想通貨で儲かっても同じことが言えます。
個人では事業でどんなに損しても仮想通貨の利益には税金がかかります。
しかし、法人であれば通算した損益にしか税金がかかりません。

損失を繰り越すことができる

個人の雑所得の場合には、たとえ損が出たとしても翌年には繰り越すことができません。
(事業所得や譲渡所得の場合には3年繰り越すことができます)

一方で法人の場合には9年間損失を繰り越すことができ、
過去に出してしまった損失の分までは利益が出ても税金がかかりません。

これは大きなメリットです。
税金は1年という単位でかかるケースがほとんどですが、
事業にしても投資にしても継続的に行うものです。

3年でトータル300万の利益がでたとしても、
1年目=▲300万
2年目=200万
3年目=400万
だとすると、

個人は1年目の赤字は繰り越せないので、3年トータルで600万に対して税金がかかることになり、
法人は赤字を繰り越せるので、2年目の200万には税金がかからず、
3年目の400万も繰り越した損失100万円を引いた300万にしか税金がかかりません。

トータルの税額だけでなく、仮に税率を30%と仮定して、2年目に60万の納税が発生するのとしないのとでは、
仮想通貨に投資できる金額も変わってきて、実際には3年目の利益の額も変わるでしょうから、
損失を繰り越せるメリットはとても大きいです。

しかも法人は9年も繰り越せます。

仮想通貨を法人で取り扱うデメリット

法人で仮想通貨を取り扱うデメリットもあります。
新たに法人を設立するケースと経営している法人で取り扱うケースとにわかれますが、以下の4つがあげられます。

法人設立費用がかかる

新たに法人を設立する場合には法人設立費用がかかります。
自分で設立したとしても、
株式会社で約20万円
合同会社で約6万円
の設立費用がかかります。

また、司法書士などにお願いする場合には別途手数料がかかります。

法人運営費用がかかる

個人から以降して、新たに法人を設立するし仮想通貨を取り扱う場合には、個人のときにはかからなかった経費がかかります。

個人に比べて法人の確定申告は複雑です。
多くの法人が自社で確定申告はしておらず、税理士にお願いしています。

小規模の法人でも税理士への費用が安くても約15万〜20万はかかります。
また、帳簿も作らなくてはならず、帳簿の作成もお願いすると月2万〜3万は最低でも経費がかかります。

更に法人には黒字でも赤字でも法人があるというだけでかかる税金もあり、
これが最低でも約7万円かかります。

税務調査がある可能性

可能性の話ではありますが、
税務調査が個人より法人は行われる可能性が高くなります。

仮想通貨の取引自体は、複雑ではないものの未だ法人での取扱が正式に発表されていないため、どういう処理をしたら良いかわからない点もあります。
(詳しくは【VOL153】法人が仮想通貨の会計処理と勘定科目で悩んだらをお読みください。)

追加で税金が課税されるリスクは個人より高くなります。
また、税務調査を自身で対応できるのであればコストは自身の時間だけになりますが、
一般的には顧問税理士に立ち会ってもらうケースがほとんどです。
多くの場合、税務調査立会い料という費用が余計にかかります。

管轄税務署によっても違いますが、一般的には黒字の企業であれば3年に1度くらいの頻度で税務調査が行われています。

利益は法人のもの

法人で獲得した利益は個人のものではなく法人のものになります。

個人で自由に使いたければ何らかの形で法人から個人に移さなければいけません。
この移す際に多くの場合は税金がかかります。

一般的な方法としては役員報酬などの給与所得です。
給与所得には所得税と住民税がかかります。

また、社会保険もかかりますので、毎年一定額を個人に移転したい場合には、
そこまで考えて法人で取り扱うか、個人で取り扱うかを検討することをお勧めします。

結果的に法人にしたほうが社会保険を含めた支払が多くなってしまうこともあります。

法人で取り扱う場合の潜在的リスク

明確に発表されているものではありませんが、リスクが潜むものも解説致します。

取引口座が解説できない可能性

法人アカウントで仮想通貨の取引口座が作れる業者はもちろんあります。(zaifとかビットフライヤーなど)
しかし、アカウント審査で落とされてしまうリスクがあります。

こればかりはやってみないとわからないことですが、
せっかく費用を払って会社を設立しても意味がなかった…
ということも最悪ありえます。

他の事業で数年事業をしている法人は、ほぼ間違いなく法人アカウントの審査は通るでしょう。

新設法人の場合には、登記簿謄本の目的にしっかりと仮想通貨取引と入れる他、資本金の金額を大きくするくらいしか対策はありません。

違う事業を少しやって1度税務申告を終わらせてから、法人アカウント作成をするというのも手かもしれませんが、ハードルは高くなりますね…

法人取引と認められない可能性もある?

メリットで書いたように税率の違いから税金の支払額が変わります。
税金逃れのために意図的にやっていると税務調査などで指摘されて、
法人での取扱が認められず、個人での取扱になってしまうリスクがあります。

それを避けるためにも、
法人の定款に目的として仮想通貨取引を記載すること、
法人名義で取引口座を作ること、
をお勧めします。

金融機関からの評価が下がる?

これも明確に金融機関から発表があったわけではありません。
また、まだまだ新しい取引だからという側面もあります。

貸したお金が仮想通貨の購入に使われてしまうのではないか?
と心配しているというのは私もコンサルの現場で聞いたことがあります。

価格変動が激しく投機的な要素が強いとまだまだ見られています。

また、仮想通貨を買うお金があるなら貸す必要はないと見られるケースももちろんあります。

法人で取り扱うと、個人と違って貸借対照表にどうしても金額が記載されます。

本業が別にある法人で仮想通貨取引をしようとしている法人は注意が必要です。

coin

編集後記

法人で仮想通貨を扱うメリットデメリットについて書きました。
現在、個人で仮想通貨を扱う場合には雑所得という所得に分類されると国税庁が定めていますが、
個人的には、数年後には譲渡所得に変更されるのではないかと思っています。

そうなると税率は個人のほうが安く、損失の繰越も3年まで認められることとなります。

私は、本当に法人の事業として仮想通貨をやろうと思っている場合を除いて、法人取引にするのはお勧めしません。
特にわざわざ法人設立するケースは微妙かと思います。
受けられる恩恵より手間がかかりすぎるかと…

まだまだ法整備が整っていない仮想通貨ですので、最新情報は常にチェックしていく予定です。

余談ですが、私も個人で仮想通貨の定額積立購入をしています。
定額積立購入ですので、大きく儲かったりはしませんが、
話題についていくためとリスクヘッジの意味合いで買っています。

「知らないものだからやらない」ではなく「知らないものだからとりあえずやってみる」
という精神を大切にしています。


最後に

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida

経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。
また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。
なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。
詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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