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今更ながらではありますが、当サイトでも仮想通貨について取り扱っていきます。
2017年は仮想通貨の熱が一気に盛り上がり、2018年には3月15日までに確定申告をした方かもいらっしゃるかと思います。
仮想通貨は雑所得という発表が国税庁からされ話題にもなりましたが、一方で法人の会計処理や申告方法についてはあまり話題にされていませんでした。
2017年12月6日に「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」ということで、2018年4月1日開始事業年度からの摘要を目指して案が発表されました。
第1回目はその内容を中心に会計処理や勘定科目について書いていきます。



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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『法人が仮想通貨の会計処理と勘定科目で悩んだら』です。(編集前のメルマガは2018年4月4日(水)に配信されています)

仮想通貨で想定される取引

基本的に仮想通貨に限らず全てのものが、「買う」「売る」「交換する」などの取引などに分類されます。
これに加えてハードフォークやらマイニングやらあってややこしいのが仮想通貨ですが、これはまた後述します。
その他に関しては下記の3つが基本的な考え方になりますので、まずは通常の3パターンを解説します。
その上でどの取引に該当するのか

有価証券の場合

購入目的によって仕訳が変わります。
売買目的であれば、有価証券という勘定科目を使い、基本的には決算時に時価評価します。
10月10日に買った100万円の有価証券が、3月決算で時価105万円だった場合には5万円の利益が出たとみなすということになります。

一方、投資目的であれば、投資有価証券という勘定科目を使用します。
そして上記と同じように10月10日に買った100万円の有価証券が、3月決算で時価105万円だった場合でも時価評価はせず、売却するまでは100万円の取得したときの価格で帳簿には載ってくることとなります。

外貨などの場合

現金同等物という考え方をし、現金預金の勘定科目のどれかになり、原則は使用時(=売却時)に時価評価します。
(複数処理方法がありますが、本題ではないので割愛します。)

また決算時に保有する外貨は必ず時価評価となり、為替損益を認識します。
投資目的だから取得価格のままで良いということはありません。

その他の場合

例えば、パソコンは買ったときの目的によって仕訳は変わってきます。
売買目的でパソコンを買った場合、仕入という勘定科目になります。
パソコンが売れたときに原価として費用になります。

一方で会社での使用目的で買った場合には備品(又は工具器具備品など)という勘定科目になります。
そして耐用年数に応じて減価償却として費用になります。

仮想通貨は通貨なのか?

会計用語では現金同等物などと呼んだりしますが、通貨というくらいだから外貨と同じように時価評価すべきなのか、それとも有価証券と同等の扱いで購入目的に応じて時価評価するしないがあるのかなどが論点の1つでした。

その答えが、2017年12月6日に「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」で考え方が明らかになったといえます。
(但しあくまで当面の取扱いであり、確定ではないので変わる可能性はありますが。)

期末での時価評価が必要か否かについて、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」では、「活溌な市場が存在するかしないか」で判断すると書かれています。

活溌な市場とは?

活溌な市場の定義を「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」で定義しています。

活発な市場が存在する場合とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとする。

とされています。

曖昧すぎてよくわかりませんね…
現状ではこれ以外に発表はありません。

活溌な市場が存在する場合

会計上では、活溌な市場が存在する場合には、期末に含み損益を明確にするため時価評価が必要とされています。

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。
(「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」より)

活溌な市場が存在しない場合

会計上では、活溌な市場が存在しない場合には取得価格を使用するように定められています。
取得価格以上に価値があがっていても含み益を計上する必要はありませんが、取得価格を下回る価値になった場合には、差額を損失処理しましょうとされています。
会計特有の保守主義の則ったものですが、活溌な市場が存在しない=売買価格が存在しないという意味でもあるので、取得価格を下回ったか回ってないか判断するのは意外と難題です。

活溌な市場が存在する=上場企業の株価
活溌な市場が存在しない=非上場企業の株価
みたいに想像するとわかりやすいです。

仮想通貨取引所で売買できるものはすべて価格がついているので、「活溌な市場が存在する」と定義されると予測します。

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨について、活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。
(「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」より)

仮想通貨の法人税の取扱

上記はあくまでも会計の話しであり、税金の取扱はどうなるかは別です。
国税庁は個人の仮想通貨の取引については原則は雑所得になると発表していますが、実は法人の取扱は発表していません。

期末の取り扱いはあくまで予測になります。

ケース1:取得価格

会計上は活溌な市場がある場合には時価評価が求められましたが、法人税法では時価評価は不要(損金不算入及び益金不算入)に現状はなる見込みです。

価格の上下動が激しく、含み益が出て課税できる可能性もありますが、含み損が出て税金を徴収できない可能性もあることが1つと、税法の基本である担税力に応じた課税という概念があるため、未実現利益に対して課税はしないという考え方です。

この場合、後述する売却、交換の時価に応じて損益を把握し、法人税では期末に関しては取得した価格をそのまま使用することになります。

個人で仮想通貨を購入した場合と結果的には変わらないということになります。

ケース2:購入目的に応じて

前述した有価証券と同じ考え方です。

売買目的で購入している場合には期末に法人税でも含み益や含み損を把握し、税金の計算に考慮します。
一方で投資目的であれば投資有価証券などと同様に取得価格で評価し、売却または交換した際に実現損益を税金の計算に考慮することになります。

ケース3:常に時価評価

仮想通貨は現金同等物であるとして、持っている通貨をすべて時価評価するという考え方です。
この場合には、期末時に簿価と時価に差額がある場合には損または益を把握し、含み益には課税、含み損は所得から引くことができます。

但し、この場合も外貨預金の例を基に短期なら時価評価、長期なら取得価格という評価が類推適用されるはずですが、仮想通貨に定期預金のような概念が現在はないため、すべて時価評価となります。

法人が仮想通貨の損益を把握するケース

法人の場合には、期末の損益把握をどうするかが最大の論点です。
それ以外の損益の把握に関しては、国税庁が発表した個人の所得税の取扱を参照にすれば問題ありません。
売却時と交換時が損益を把握するタイミングとなります。

売却時の損益把握

売却時とは、購入していた仮想通貨を売った時点を指します。
例えば、1,000円で買った仮想通貨を1,500円で売った場合には500円の利益がでますので、500円が税金の計算にも加味されます。

仕訳例:
(借方)現金預金1,500円 (貸方)仮想通貨1,000円
             (貸方)売却益  500円

売却時の注意点

必ずしも円に変えなくても売却と見られることに注意が必要です。
例えばビットコインを100万円で購入。
時価が150万円になった際に、NEMという仮想通貨を150万円分ビットコインで買った場合には、50万円の利益がその時点で把握されます。

仕訳例:
(借方)仮想通貨A 150万円 (貸方)仮想通貨B 100万円
               (貸方)売却益   50万円

交換時の損益把握

仮想通貨は有価証券などとは違って、仮想通貨そのものでモノを買うことができます。
1,000円で購入した仮想通貨で、時価が1,500円になった時点で、1,500円分のモノ(例えばボールペンなど)を購入した場合には、購入時を仮想通貨とモノの交換とみなし、その時点の損益を把握します。
この場合500円の利益が実現したとみなします。

仕訳例
(借方)消耗品費1,500円 (貸方)仮想通貨1,000円
             (貸方)売却益  500円

仮想通貨の取得価格の算出方法

ここまでの例ではわかりやすいように仮想通貨を1回しか買ってない事例を使ってきましたが、実際には何回にも分けて買ったり売ったりをするものです。
その場合、10ビットコインを1,000,000円(=1ビットコイン100,000円)と10ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン75,000円)で購入、10ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン150,000円)で売却、15ビットコインを1,800,000円で購入など1年間に複数の取引が発生する場合がほとんどです。

現状は移動平均法と総平均法による取得価格の算出が一般的です。
その他にも先入先出法や後入先出法、最終仕入原価法などがあります。
ここでは一般的な移動平均法と総平均法について解説します。
基本的には棚卸資産の評価と同様ですので、参考にしてみてください。

移動平均法

上記の事例を基に移動平均法で求めると、
「10ビットコインを1,000,000円(=1ビットコイン100,000円)と20ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン75,000円)で購入、10ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン150,000円)で売却」
ですので、1ビットコインは売却時点までの取得価格の平均を使います。

(1,000,000円+1,000,000円)÷30ビットコイン=1ビットコイン約83,333円になります。

売ったのが10ビットコインですので、83,333×10=833,330円となります。
(端数の処理は適当ですのでご了承ください)

売却価格1,500,000円ー取得価格833,330円=利益666,670円となります。

総平均法

総平均法は、売った時点を加味せず、年間の総購入額÷総購入数で計算します。
上記の例では、
「10ビットコインを1,000,000円(=1ビットコイン100,000円)と10ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン75,000円)で購入、10ビットコインを1,500,000円(=1ビットコイン150,000円)で売却、15ビットコインを1,800,000円で購入」
ですので、

総購入額は、1,000,000円+1,500,000円+1,800,000円=4,300,000円、
総購入数は、10BTC+10BTC+15BTC=35BTC
となります。

4,300,000円÷35BTC=122,857円/1BTC
となります。

結果、売却1,500,000円ー122,857×10BTC=利益271,430円
となります。

移動平均法と総平均法の違い

上記見て頂いた通り、算出方法により利益の額が一時的に変わります。
(最終的に全部売れば同じになります。)

総平均法以外の方法は、計算が煩雑で手間がかかるというデメリットがあります。
つまり総平均法は計算が簡単というメリットがあるということです。
一方で移動平均法のほうが、実際の感覚値と近くなるというメリットがあります。

上記の事例では、150万で売却した時点では、60万ちょっとの利益がでると思って売却したというのが実態に近いはずです。
その後に購入したBTCに関しては、これからまた時価があがると思って購入しているのが一般的ですので、まだ利益が実現していません。
にも関わらず、年間の取引を全部ひっくるめて計算してしますのが総平均法です。

その他にも、期末に向けて時価があがっていて購入した場合には総平均法は移動平均法に比べて利益が小さくなる、時価が下がっている場合には利益が大きくなるという特徴があります。

どちらを選択するかは一長一短ですが、計算が簡単な総平均法か、計算に苦労しても実態に近い移動平均法かという選択になります。

右肩あがりの相場が続くと予想する方は節税のために総平均法を選択するのも1つですが、逆に右肩下がりに転換してしますと想像している以上の利益が計上されてしまうリスクもあります。

ビットコインのマイニングについて

発掘またはマイニングと呼ばれる方法によってビットコインを取得する方法があります。

この場合にはマイニングによってビットコインを得た時点の時価で収益を計上することになります。
1BTCが100万円のときにマイニングで得た場合には、100万円の利益を計上します。

もちろんマイニングに要した必要経費(電気代など)は経費に計上できますので、差し引きの利益に課税されることとなります。

仮想通貨の勘定科目

勘定科目については未だ特に定められていません。

購入時は「仮想通貨」という勘定科目を作って差し支えありません。
(複数の仮想通貨を取り扱う場合には補助で分けることを推奨します)

仮想通貨を購入前の取引所にある日本円に関しては、「預け金」で問題ありません。

また、売却に伴う損益は、
営業外収益で、仮想通貨売却益、仮想通貨売却損で現段階では良いかと思います。

但し、仮想通貨の取引を本業として行う前提の場合(登記簿謄本の事業の目的に記載されているなど)には、購入時は「仕入」、販売時には「売上」にし、損益を営業収益に入れることが妥当です。

もちろんその場合には期末には残っている仮想通貨を「期末棚卸資産」として計上する必要があります。

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編集後記

まだまだ不透明な部分のある仮想通貨の法人での課税関係です。
3月15日に平成29年の確定申告があったため所得税の取扱は先行して発表されました。
法人税についても「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」が、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に適用することを想定していますので、その後初めての期末を迎える平成31年3月31日に向けて取扱が発表されていくはずです。

恐らく毎年12月ごろに税制改正の大綱がでるので、それに伴って平成30年の年末ごろに出るのではないかと思っています。

まだ発表になっていない段階ではありますが、次回は仮想通貨を法人と個人で取り扱う場合のメリット・デメリットなどの比較をしていきます。


最後に

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