【VOL157】法人化のメリット・デメリットと費用とタイミング

読了時間目安:約 14分37秒

個人事業主やフリーランスの方にとって、法人化したほうが良いのか、このまま個人事業でやり続けたほうが良いのかは、悩むポイントの1つです。
今回は法人化のメリットと費用・タイミングについて解説します。


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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『フリーランスが稼がなければいけない収入とそのために必要な6つのスキル』です。(編集前のメルマガは2019年10月2日(水)に配信されています)

法人化のタイミングはいつか?

法人にしたほうが良いのか、個人のまま続けたほうが良いのかは悩むポイントの1つです。
法人にすることのメリットとデメリットにも関連することではありますが、まずは法人化のタイミングから見ていきましょう。

売上が1,000万を超えた2年後

まず真っ先に思いつくのは消費税を納めなくてはいけない、課税事業者になるか否かのタイミングです。
(課税)売上が1,000万円を超えた年の2年後から消費税の納付事業者(課税事業者)になります。
2019年に1,000万円を超えても、2020年は免税事業者、2021年から課税事業者になります。
仮に2020年が1,000万未満だとしても2021年は課税事業者です(2022年は免税に戻りますが…)

仮に990万売上があって、550万の経費がある会社だとします。
例なのでわかりやすく、すべて消費税のかかる課税売上、課税仕入、消費税10%だとします。

【免税事業者】
990万ー550万=440万
440万が利益となります。

【課税事業者】
990万(内90万消費税)-550万(内50万消費税)=440万
ここまでは一緒ですが、
売上と一緒にもらった90万から、経費と一緒に払った50万円の差額の40万円を消費税で納税することとなります。
つまり400万が利益となります。

法人化すると資本金1,000万円未満だと、最初の2年間は課税事業者か免税事業者かの選択ができます。
(課税になりたいときは届け出をする方式です)

小さくはない金額ですので、このタイミングは法人化を悩むタイミングとなります。

※課税売上が1,000万ですので、福祉や教育などの非課税売上や輸出売上などは含みません。

※2023年から消費税のインボイス制度の導入が検討されています。
免税事業者は消費税額を請求できない制度となります。
詳細は省きますが企業相手に仕事をしている業種の方は免税事業者のメリットがなくなっていきます。

法人でないと取引できない取引先ができたとき

まだまだ個人より法人のほうが信用があります。
1円でも会社を作れるようになった時点で、個人より法人のほうが信用できるというのもおかしいとは思いますが、まだまだ残っています。

1人法人とかもありますので、無限責任の個人のほうが、有限責任の法人より信用があるような気がしますが…

本題からそれましたが、個人事業主とは取引しないという企業もあります。
取引規模にもよりますが、法人化するだけでチャンスがつかめるのであれば、法人化するタイミングの1つといえます。

人を雇用して拡大しようと思ったとき

個人事業より法人のほうが信用があるというのに関連しますが、採用をしようとおもったときに、個人事業より法人のほうが有利に働くことがほとんどです。

知人やそのツテによる縁故採用ではなく、広告媒体等を使って採用募集をしようと思ったときには法人化を検討する1つの良いタイミングです。

個人事業の利益が500万~800万を超えるころ

厳密には法人、個人ともに税金がかかるのは所得なので、所得で500万~800万を超えるころです。

所得税も法人税も累進課税ですが、所得税のほうが税率がどんどん上がっていきます。

法人税と所得税の税率

【所得税の所得と税率】
195万円以下・・・・・・・5%
195万超330万以下・・・・10%(控除額97,500円)
330万超695万以下・・・・20%(控除額427,500円)
695万超900万以下・・・・23%(控除額636,000円)
900万超1,800万以下・・・33%(控除1,536,000円)
1,800万超4,000万以下・・40%(控除2,796,000円)
4,000万超・・・・・・・・45%(控除4,796,000円)

【法人税の所得と税率】
毎年のように税率が下がっていますが、法人税・地方税すべて合わせたいわゆる実効税率と呼ばれるもので概ね
400万以下・・・・・・・・・約26%
400万超800万以下の部分・・約27.6%
800万超・・・・・・・・・・約33.6%
となっています。

単純な税率比較しても900万を超えたら、個人33%、法人33.6%となりほぼ変わりません。
個人の住民税を約10%と考えると、330万を超えたら、個人30%(所得税20%+住民税10%)、法人26%と法人のほうが低くなります。

ただし累進課税なので、330万までの部分は低い税率がかかるので、仮に400万だとすると
法人・・・400万×26%=104万
個人・・・400万×30%-427,500円=約77万
となり、まだ個人のほうが税金は安く済みます。
(割愛しましたが、個人には更に扶養控除や基礎控除など控除項目がありますので)

給与所得控除の存在

個人だと、400万円の利益がでたらそのまま課税されてしまいますが、法人から給与をとると同じ400万でも給与所得控除が使え課税されるのは266万になります。

給与所得者は経費が基本認められないので、概算でこのくらいは経費がかかっているとみなして良いよというのが決まっています。

【給与所得控除】
180万円以下・・・・・・収入金額の40%(65万円未満は65万円)
180万超360万未満・・・収入金額×30%+18万
360万超660万未満・・・収入金額×20%+54万
660万超1,000万未満・・収入金額×10%+120万
1,000万超・・・・・・・220万上限

400万の給与の場合には、
400万×20%+54万=134万
が概算経費に認められ、
400万ー134万=266万円に課税されることとなります。

つまりうまくやれば、会社で400万利益がでても400万を給与でとり
法人・・・0円×26%=0円
本人・・・266万×20%-97,500円=約43万
となり、
個人事業のときより税金が安くなります。

しかし、法人の役員の給料は期の最初から3ヶ月以内に決めなければいけなく、かつ、1年間は変えられないため、そんなにうまくいくケースは稀です。

だいたいこの税率差や給与所得控除を使うことで法人化するメリットがあると言われているのが700万くらい個人事業で利益がでたらと言われていますが、個人的には500万くらいからメリットがでるケースがあるので、そのくらいから法人化を検討しても良いと思っています。

検討する際には絶対に専門家に頼んでシミュレーションすることをお勧めします。
上記の計算はわかりやすく説明するためにかなりのものを割愛してますし、個人個人の扶養の人数や小規模企業共済への加入状況によって、どの時点からメリットがあるかは変わってきますので。

節税が必要だと思ったとき

代表的な例としては生命保険や退職金になります。
生命保険は個人では一般生命保険の新旧と個人年金保険を併せても、最大12万円までしかいくらかけても所得から控除できません。
一方で法人は契約形態や保険の種類にもよりますが、全額経費になるものから全額経費にならないものまであります。
年間100万円の生命保険に入っていたら個人は最大12万円までしか経費になりませんが、法人であれば最大100万が経費になります。

※2019年10月現在、全額損金になる生命保険は商品としてなくなっています。
また新しい商品がでてくる可能性はあります。

また、退職金に関しては、個人では代表者に出すことはできませんが、法人であれば引退するときに退職金を出すことができ、過大でなければ経費にすることができます。
また、所得税のほうでも個人事業の事業所得や役員報酬の給与所得などより優遇されており、利益がでているのであれば法人化し活用しない手はありません。

1件当たりの取引額が大きくなってきたとき

上記に書いた個人は無限責任、法人は有限責任という話に関連しますが、
1件当たりの取引金額が大きくなり、リスクが大きくなってきたときには法人化を検討するのも1つの手です。

せこい言い方のようですが、損害賠償などが発生した場合、
個人であれば事業をたたんでも本人に支払の義務がありますが、
法人であれば倒産してしまえば支払義務を免れます。

※ただし、金融機関からの借入で多く行われるように個人の連帯保証をつけた場合には、この限りではありません。

法人設立にかかる費用

会社には株式会社、合同会社、合資会社などなど様々な形態がありますので、ここでは代表的な株式会社と合同会社について設立費用を書いていきます。

会社の種類はこちらの記事を
【VOL144】起業をするときに知っておきたい会社の種類と特徴

株式会社の設立費用

定款認証費用 52,000円
収入印紙代 40,000円(電子認証の場合0円)
登録免許税 150,000円
計 242,000円(電子認証の場合202,000円)

これが必ずかかるお金で、これ以外に謄本の発行費用(約2,000円)や法人印の購入費用などがかかります。

また、司法書士に頼む場合には司法書士への報酬がかかります。

合同会社の設立費用

定款認証手数料 0円
収入印紙代 40,000円(電子認証の場合0円)
登録免許税 60,000円
計 100,000円(電子認証の場合60,000円)

株式会社の場合と同様でこれ以外に謄本の発行費用や印鑑購入費用、司法書士に頼む場合には報酬がかかります。

司法書士の会社設立報酬の相場

ピンキリではありますが、5万~20万が多いようです。
たまに0円というのもありますが、税理士との顧問契約を1年することになっていたりもするので注意が必要です。

私がお勧めなのは「会社格安センター」です。
ネット上でやり取りする割には親切ですし、なにより7,600円と安いです。
2社ほどここで設立しました。
但し注意なのはその後、税理士の紹介やHP業者の紹介などの営業電話はかかってきました(笑)
全部お断りしましたが…

法人化するメリット

上記の法人化のタイミングはいつか?に書いてしまったので割愛しますが、
節税、信用力が大きなメリットになります。

法人化のデメリット

法人化すると個人事業時代には必要のなかったことが必要になったり、費用が掛かったり、手間が増えたりでデメリットだと感じることも多くあります。
代表的なものを取り上げてみました。

社会保険への加入が義務付けられる

法人の場合には、社会保険への加入が義務です。
個人事業の場合には一定の要件を満たせば加入義務はありませんし、
事業主は加入できません。
(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の中には個人事業でもスタッフを雇ったら加入しなければいけないものもありますが、今回の趣旨とは離れるので割愛します)

概ね額面給与の30%が社会保険料となります。
それを法人と本人で15%ずつ負担することとなります。

この負担は結構大きな負担になります。

赤字でも均等割りという税金がかかる

個人事業の場合には、所得が出なければ税金がかかりません。
しかし、法人の場合には均等割りという地方税がかかります。
資本金1,000万以下、事業所1か所、人数50人以下で年間7万円になります。

ランニングコストまたは手間が増える

個人の確定申告は自分でやっている人も多いと思いますが、
法人の申告となると専門的な知識がより必要になるので、ほとんどの人が税理士に頼んでいます。
申告料だけでも安くて10万円くらいはしますし、月々の顧問契約になるとそれとは別に3-5万くらいは顧問料がかかります。

また社会保険に加入するので、場合によっては社会保険労務士との契約も必要になります。

これらを自分自身や自社でやろうとすると手間はもちろん出来るようになるための労力も相当かかります。

役員の任期が満了したら再任であっても登記が必要だったり、代表者が引っ越したら代表者住所の変更登記が必要だったりと個人事業のころより必要な手続きは増え煩雑になります。

incorporated/

編集後記

法人化にはメリットとデメリットともにあります。
今回書いたのは一般的な例ですので、実際に法人化を検討するようになったら専門家に相談することをお勧めします。
特に税金面に関しては個々人の状況によって大きく変わります。

例えば、先日書いた、小規模企業共済や倒産防止共済をやっているかによっても、まだまだ個人事業のままでも節税できる可能性もあります。

【VOL151】中小企業経営者の退職金制度!小規模企業共済のメリットとは?

【VOL134】資金繰り改善:倒産防止共済の4つのメリットを徹底解説

賃貸収入のある不動産を持っているのであれば、法人化して株式という形で相続したほうが良いケースもあります。

それぞれケースによって異なってきますので、判断は慎重にしていきましょう。

一応、宣伝を(笑)
私たちにご相談いただければ、私たちと提携している税理士が相談に乗ってくれますよ!


最後に

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