【VOL76】長期の利益計画から考える資金繰りと金融機関との付き合い方

読了時間目安:約 9分11秒

前回、長期の利益計画とあるものを組み合わせることで、長期的な資金繰りが予測できることをご説明させていただきました。
その予測があることで金融機関とも上手に付き合うことができますし、会社や事業の進むべき方向もはっきりします。

何より、長期の利益計画が正しいのか正しくないのか、事業を継続、維持するために必要な利益計画になっているかを確かめる指標ともなります。

今回はそれを更にわかりやすくするために事例を使ってご説明させていただきます。

前回の内容

【VOL75】利益計画と資金計画から考える長期的な財務計画の考え方



今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。

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今回は『長期の利益計画から考える資金繰りと金融機関との付き合い方』です。(編集前のメルマガは2015年10月14日(水)に配信されています)

手元に残るお金=減価償却費+税引き後利益ー金融機関への返済ー新規投資

前回の復習になりますが、長期的に考えた時の資金繰りは「手元にある現金預金ー減価償却費+税引き後利益ー金融機関への返済ー新規投資=将来の手元にあるお金」となります。

なぜ減価償却費が関係あるのか忘れてしまった方はこちら
【VOL2】減価償却費に代表される会計の罠にひっかからないように気をつけましょう!(メルマガ版財務講座)

例外は「新規の金融機関を含む借入」や「新規の出資」、「資産の売却(保険の解約含む)」となります。

それ以外は、入金のタイミングと支払のタイミングのずれなどで、短期的に損益と資金繰りが一致しないありますが、一時的なことで長期的にみれば、必ず上記の考え方どおりになります。

例題で考える利益計画と長期の資金繰り予測

例題で考えてみましょう。

手元現金預金500万円、借入金5000万円(返済期間5年)

◯利益計画

売上1億、粗利益5,000万円、営業利益1,000万円、経常利益900万円、税引き後利益540万円、減価償却費は300万円

つまり、
粗利益率50%、固定費4,000万円(内減価償却費300万円)、営業外損益100万円、法人税等40%となります。

※例題を簡単にするために毎年利益計画は同じとし、新規投資もないとします。(普通は成長する利益計画を立てますし、減価償却費も新しい投資がなければ年々減っていくと思いますが、説明を簡単にするために割愛します。)

の会社があったとしましょう。

5年後の資金はどうなっていると思いますか?

5年後の資金をシミュレーションしてみる

手元現金預金の増減=税引き後利益+減価償却費ー借入金の返済ですから、

税引き後利益540万円+減価償却費300万円ー借入金の返済1,000万円=▲160万円

つまり160万円ずつお金が減っていくことになります。

結果5年間で160万円×5=800万円のお金が減りますので、現在の手元現金預金300万円ー800万円=▲500万円で資金がショートしていることがわかると思います。

この例題、損益分岐点比率(100%ー経常利益÷粗利益額)が82%と損益だけを見たら非常に良い数字の会社ですが、何の対策もせずにただ5年間を過ごしたら、資金が2年目にショートすることがわかります。(300万円-160万円×2年=▲20万円)

なので、金融機関に対して、2年目の途中で借りれるように今から動いておくことが大切になりますし、そういう長期的な視点をもっている中小企業や経営者は金融機関から評価されることとなります。

金融機関との付き合い方について知りたい方はこちらから
「金融機関・銀行・資金調達」に関する記事一覧

売上が80%になったらもシミュレーションしておく

仮に売上が80%になったらどうなるかをシミュレーションしておくことも重要です。

その場合の資金繰りはどうなるのか、それも想定しておきましょう。

この例題であれば、

売上高
1億×80%=8000万円

粗利益額
8,000万円×粗利益率50%=4,000万円

営業損益
4,000万円-固定費4,000万円=0

経常損益
0-営業外損益▲100万円=▲100万円

税引き後利益
▲100万円(赤字で税金がかからないため)

手元資金の増減
税引き後損益▲100万円+減価償却費300万円ー返済500万円=▲300万円



売上が80%になってしまったら、1年で資金がショートしてしまいます。

今期中に1度借入をしたい旨を金融機関に伝えておくべきかもしれません。(いつ最後に借りたのかや直近2期分の決算書の状況等にもよりますので、一概にはいえませんがシミュレーションしてみて気になる方はプロの方に相談してみて下さい。もちろん当メルマガへご質問いただいても構いません)



余談ですが、この例題、会社の売上や経費の規模に対して極端に手元資金が少ないですね…

適正な手元資金(運転資金)を知りたい方はこちらの記事から。
【VOL39】事業に必要な運転資金を「月商何ヶ月分」という危険な考え方をしていませんか?

金融機関に好印象をもってもらうために

今回の話で重要なのは、計画性です。

1ヶ月前になって突然お金を貸して欲しいという人より、長期的な事業の見通しがあって数年後にお金を貸してほしいという人のほうが信用できるという当たり前の話です。

毎月ではなくても構いませんが、定期的に金融機関の担当者に事業の業績を報告することも大切です。

毎月試算表は必ず作り、利益計画となぜずれているのかを報告できると更に良いです。

毎月の試算表づくりに苦戦している方は下記を参考にしてみて下さい。

【VOL28】試算表は経営者の成績表です。早く見て対策を練ることに価値があります(メルマガ版財務講座)

【VOL29】試算表を早く作れない理由は意外と簡単に解決できます(メルマガ版財務講座)

【VOL30】自社ルールを作ることが、毎月の試算表を早く作るための秘訣です(メルマガ版財務講座)

この辺りのことは金融機関とだからということではなく、人対人で信頼を得るためにやったほうが良いことと変わらないと思います。

そのためのテクニックの一つとして利益計画から長期的な資金繰りを考える方法が活かされるわけです。

未来をはっきりさせる

編集後記

金融機関から好印象を受けるために利益計画から長期的な資金繰り予測をするみたいな書き方をしましたが、本来は違います。

本来の目的は数字で自社または事業の未来を明確にすることと、対策を考えることにあります。

資金がショートするのであれば、金融機関から借入をするという対策を考えるのは1つの方法でしかありません。

本来は売上を増やす、もっといえば単価をあげるのか、お客様数を増やすのか、原価を下げて粗利益率を改善するのか、固定費を削減するのか、借入の返済年数を伸ばすのかなどなど。

今回の利益計画から長期的な資金繰りを考えるという基礎がわかっていれば、どうしたらもっと自社または事業がよくなるか対策を考えるのは簡単です。

次回は、その辺りをもっと掘り下げていきます。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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