【VOL86】利益が増えれば財務体質は良くなるのか?

読了時間目安:約 13分53秒

資金会計理論は、粉飾や利益圧縮すら見破ることのできる、財務体質を見るための指標ということは何回かにわけてご説明してきたとおりです。
そして、過去の財務体質だけでなく、未来の財務体質をシミュレーションするのにも優れた指標です。

今回は、「どうしたら財務体質が良くなるのか?」という疑問をお持ちの人も多いと思いますので、その答えの1つでもある、「利益が増えると財務体質がよくなるのか?」というテーマを取り上げてみたいと思います。

【VOL83】資金会計理論を活用して事業の本当の財務体質をみましょう

【VOL84】資金会計理論を例題で紐解く

【VOL85】資金会計理論で未来の事業の財務体質をシミュレーションする!



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今回は『利益が増えれば財務体質は良くなるのか?』です。(編集前のメルマガは2015年12月23日(水)に配信されています)

売上が4倍になり利益が増えたら、財務体質は良くなるのか?

前回の例題を覚えていますか?

初期資金(資本金)300万円
商品を買う1個1万円×100個=100万円→支払い30日後
商品を売る1個1.5万円×100個=150万円→入金60日後

という事業がありました。

ここで、前回は売上が2倍でシミュレーションしましたが、4倍になるとどうなるのかをシミュレーションしましょう。

4ヶ月目に借入を2,000万円して、機械に2,000万円投資するとしましょう。
そうすると、機械によって合理化され、売上が4倍になるとします。
借入の返済期間を5年、機械の減価償却を5年(定額法)とした時、6ヶ月目と12ヶ月目の手元資金はどうなるでしょうか?

財務体質が良いとは何のことをいうのか?

その前に、財務体質が強いとか、良いとか、何をもっていうのでしょうか?

資金会計理論には、「損益資金の部」、「固定資金の部」、「売上仕入資金の部」、「流動資金の部」の4つがあったのを覚えているでしょうか?

財務体質が強いとか、良いとかいうのはもの凄く簡単で、
「損益資金の部」>「固定資金の部」>「売上仕入資金の部」>「流動資金の部」
となります。

つまり、同じ1,000万円が手元にある事業でも、損益資金の部で1,000万円あるほうが、流動資金の部で1,000万円ある事業よりも、財務体質は良いといえます。

売上が4倍になって利益が増えると…?

さて、今回の例題は、4ヶ月目に設備投資をして売上が4倍になっって利益が増えたときの6ヶ月目と12ヶ月目の資金会計はどうなるでしょうか?という問題です。

前回は4ヶ月目に設備投資をして、売上と利益が2倍になった例題を使いました。
【VOL85】資金会計理論で未来の事業の財務体質をシミュレーションする!

4倍になったときの6ヶ月目の各帳票

まずは4倍になったときの6ヶ月目の各帳票を作り、数字の推移を見てみましょう。

6ヶ月目の損益計算書

売上高   2,250万円
仕入高   1,500万円
減価償却費   99万円
利益額    651万円

※各項目計算式
◯売上高=150万円×3ヶ月+600万円×3ヶ月=2,250万円
◯仕入高=100万円×3ヶ月+400万円×3ヶ月=900万円
◯減価償却費=33万円×3ヶ月=99万円
33万円=機械2,000万円÷償却年数5年÷12

6ヶ月目の貸借対照表

現金預金   151万円
売掛金   1,200万円
機械    1,901万円
資産の部  3,252万円

買掛金    400万円
長期借入金 1,901万円
負債の部  2,301万円

資本金    300万円
利益剰余金  651万円
資本の部   951万円

6ヶ月目の資金会計理論

損益資金の部

売上高    2,250万円(+)
仕入高    1,500万円(ー)
減価償却費    99万円(ー)
損益資金の部 +651万円

固定資金の部

資本金     300万円(+)
機械     1,901万円(ー)
長期借入金  1,901万円(+)
固定資金の部 +300万円

売上仕入資金の部

売掛金 1,200万円(ー)
買掛金  400万円(+)
売上仕入資金の部 ▲800万円

流動資金の部

なし

トータル計

損益資金の部 +651万円(+351万円)
固定資金の部 +300万円(+300万円)
売上仕入資金  ▲800万円(▲400万円)
流動資金の部   0万円(0万円)
手元現金預金  151万円(+251万円)

※()内は2倍の時の数字

安定資金という考え方

流動資金を除いた、「損益資金の部」+「固定資金の部」+「売上仕入資金の部」を安定資金と呼びます。

意味としては流動資金は未払金や預り金または立替金など、一時的なものであるのに対して、一時的ではなく安定している資金があるということを表しています。

とはいえ、「とりあえず」安定している資金という考え方に近いです。

売上が「2倍になる()内の時」と「4倍になる()外の時」ではどちらが財務体質が良いといえるでしょうか?

先ほどの説明に基づけば、損益資金が多いので4倍の時のほうが良いということになりますが、安定している損益資金とその次に安定している固定資金で売上仕入資金のマイナス分(サイト負け)を151万円(安定資金)しか補えていないこととなります。

一方、2倍のほうでは、損益資金と固定資金で売上仕入資金のマイナス分を251万円(安定資金)補えているので、この時点(6ヶ月)では2倍の時のほうが財務体質が良い会社といえます。



ちなみにですが、4ヶ月目に設備投資をせず、売上がそのままだったら6ヶ月目はどうなっていたかというと…

損益資金の部 +300万円
固定資金の部 +300万円
売上仕入資金  ▲200万円
流動資金の部   0万円
手元現金預金  400万円

となります。

財務体質としては、固定資金に頼らずに売上仕入資金のマイナス分を補えるようになるので、この時点では安定しているといえます。

12ヶ月後の各帳票

では4倍になったときの12ヶ月後の各帳票を作って行きましょう。

12ヶ月目の損益計算書

売上高   5,850万円
仕入高   3,900万円
減価償却費  297万円
利益額   1,653万円

※各項目計算式
◯売上高=150万円×3ヶ月+600万円×9ヶ月=5,850万円
◯仕入高=100万円×3ヶ月+400万円×9ヶ月=3,900万円
◯減価償却費=33万円×9ヶ月=297万円
33万円=機械2,000万円÷償却年数5年÷12

12ヶ月目の貸借対照表

現金預金  1,153万円
売掛金   1,200万円
機械    1,703万円
資産の部  4,056万円

買掛金    400万円
長期借入金 1,703万円
負債の部  2,103万円

資本金    300万円
利益剰余金 1,653万円
資本の部  1,953万円

※各項目計算式
◯機械=機械2,000万円ー減価償却費297万円
◯長期借入金=長期借入金2,000万円ー返済33万円×9ヶ月
33万円=2,000万円÷5年返済÷12ヶ月

6ヶ月目の資金会計理論

損益資金の部

売上高     5,850万円(+)
仕入高     3,900万円(ー)
減価償却費    297万円(ー)
損益資金の部 +1,653万円

固定資金の部

資本金     300万円(+)
機械     1,703万円(ー)
長期借入金  1,703万円(+)
固定資金の部 +300万円

売上仕入資金の部

売掛金 1,200万円(ー)
買掛金  400万円(+)
売上仕入資金の部 ▲800万円

流動資金の部

なし

トータル計

損益資金の部 +1,653万円(+651万円)
固定資金の部  +300万円(+300万円)
売上仕入資金   ▲800万円(▲800万円)
流動資金の部    0万円(0万円)
手元現金預金  1,153万円(+151万円)

※()内は4倍の時の6ヶ月目

6ヶ月目と12ヶ月目ではどっちが財務体質が良いのか?

見ていただいてわかるように、6ヶ月目と12ヶ月目の違いは、損益資金の部が増えた分だけ、手元現金預金も増えております。
この例題では、流動資金はありませんので、手元現金預金=安定資金ですから、安定資金も増えていることとなります。

安定資金が増えているということは、財務体質はよくなっているということになります。

しかも増えている箇所が、一番上の損益資金ですから、一番良い形でお金が増えていることになり、財務体質は他の箇所である固定資金の部や、売上仕入資金の部でお金が増えるより、理想的な形といえます。

財務体質の善し悪しはどこを見ればわかるのか?

その時点の財務体質の善し悪しを見るためには、安定資金をまず見ます。

安定資金がいくらあれば良いかの考え方は以前お伝えした手元資金(運転資金)の考え方とほぼ同様です。
【VOL39】事業に必要な運転資金を「月商何ヶ月分」という危険な考え方をしていませんか?

そしてその後にその資金は、損益資金の部で増えているのか、固定資金の部で増えているのか、売上仕入資金の部で増えているのか、をみていくことになります。

同じ安定資金でも、損益資金の部>固定資金の部>売上仕入資金の部の順に財務体質はよいことになります。

利益が増えれば財務体質はよくなる!

6ヶ月目のように一時的には悪くなりますが、利益が増えれば損益資金の部が増え財務体質は良くなります。

但し、今回のケースのように投資をして利益が増える場合には過剰投資をし過ぎて財務体質が良くなる前に資金ショートを起こしてしまうこともありますので、注意が必要です。

自分の事業が過剰投資していないか、どうしたらより良い財務体質を作ることができるのか、それを知ることができる帳票が資金会計理論です。

財務体質を良くする方法

6ヶ月目と12ヶ月目で固定資金の部と売上仕入資金の金額が同じだったことに気づいていただけたでしょうか?

ここら辺の仕組みがわかると財務体質を良くする方法も見えてきます。

次回はこのあたりに着目し、財務体質を良くするための方法をいくつか紹介します。

税込みと税抜き

編集後記

資金会計理論を文章だけで説明しようとするとかなり難しいですね…。
しかし、その時点の財務体質の善し悪しはもちろん、将来財務体質を良くするためにどうしたら良いかまでシミュレーションすることのできる優れた帳票ですので、ぜひマスターしていただきたいと思います。

わからないところがあれば、ぜひご質問ください。
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最後に

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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