【VOL119】他社の経営を数字で見るなら総資本経常利益率に注目!業種別平均も公開!

読了時間目安:約 15分53秒

以前に何度かご説明した、総資本経常利益率ですが、事業の経営効率を見るために最も適した指標です。
もちろん自社の経営効率を見る指標としても役立ちますが、他社の分析をする際にも真っ先にみるべき数字といえます。
取引先として安心かどうかの信用調査にももちろん使えますし、ライバル企業の経営効率を見るためにも役立つ指標です。



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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『他社の経営を数字で見るなら総資本経常利益率に注目!業種別平均も公開!』です。(編集前のメルマガは2016年8月10日(水)に配信されています)

総資本経常利益率とは?

総資本経常利益率とは、経常利益÷総資本(=総資産)で計算することのできる比率のことです。

総資本経常利益率の前に貸借対照表について

総資本とは資産の部の合計、又は、負債+資本の合計のことをいいます。

余談ですが、貸借対照表は左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と資本があり、左側と右側、つまり借方と貸方が同額(=対照)になるので、貸借対照表と言われています。

そして、右側の負債と資本は、会社や事業に必要なお金をどこから調達してきたのかを表します。
例えば、借入であれば負債として調達、資本金であれば資本として調達、買掛金であれば仕入先に支払を待ってもらうことでお金を調達しているといえます。(預り金や仮受金も一時的とはいえ、お金を調達していることになります。)

一方で、資産はその負債や資本として調達したお金をどう運用しているかというのを表します。
例えば、土地や建物、機械や装置などの固定資産に運用したり、現金として手元に持って運用していたりするのを表しています。

個人に置き換えてみると

サラリーマンで言えば、給料が損益計算書の売上、生活にかかる費用が経費、残ったのが利益です。
その利益が利益剰余金として貸借対照表の資本の部にきて、資本としてお金を調達したことになります。

この残った利益を将来に備えて定期預金にすれば、貸借対照表では定期預金として資産として表示されますし、投資信託などの投資で運用しようとすれば投資有価証券などの科目で資産の部に表示されます。
住宅ローンを組めば負債として借入金として表示され、負債としてお金を調達し、土地建物として買った住宅は資産として資産の部に表示されることとなります。

なぜ総資本経常利益率なのか?

損益計算書と貸借対照表のなんとなくの仕組みはご理解いただけたのではないかと思います。

詳しく知りたい方はこちらを。

【VOL48】貸借対照表とは?BS経営のための貸借対照表の読み方の基礎

【VOL49】中小企業は貸借対照表の傾向で経営者の経営方針がわかります。

同じ年間500万円の経常利益が残る会社でも、資産が5,000万円ある会社と1億円ある会社では、どっちのほうが利益効率が良いかは一目瞭然です。

5,000万円で500万円の経常利益を稼いでいる会社は、総資本経常利益率は10%です。
一方、1億円で500万円の経常利益を稼いでいる会社は、総資本経常利益率は5%となります。

少ないお金を運用してたくさんの利益を出している会社のほうが経営効率が良いのは一目瞭然です。

中小企業庁の調べによると全業種の平均は、

平成24年 2.90%
平成25年 3.50%
平成26年 3.64%

となっています。

(参考資料:中小企業庁の平成27年業種別経営指標より)

当サイトでは総資本経常利益率の理想は10%とお伝えしています。
余談ですが、当サイトでは重要指標として、以下の4つを掲げていて、その理想の数字も目安として掲載しています。

総資本経常利益率・・・10%以上
損益分岐点比率・・・80%前後
債務償還年数・・・7年未満(10年未満)
自己資本比率・・・50%以上(30%以上)

詳しくは【VOL66】企業の経営状態がわかる4つの見るべき財務上の数字をご覧下さい。

総資本経常利益率を2つに分解する

総資本経常利益率とは2つの経営分析数字の組み合わせでできています。
分解することで見えてくることも違いますので、解説させていただきます。

総資本回転率

資産がどのくらい回転しているかを表す指標です。
回転というとわかりづらいですが、100万円の資産で100万円の売上があれば1回転、200万円の売上があれば2回転となります。

100万円のお金があって、100万円で仕入をして200万円で売るとしたら、1回転で100万円の利益、2回転で200万円の利益となります。
売上で考えると1回転で200万円の売上、2回転で400万円の売上となります。

実際の計算は、売上÷総資本で計算しますので、少し違いますが、概念は同じでたくさん回転しているほうが良いということになります。

もちろん業種によって回転しやすい業種、回転しにくい業種があるので一概には言えませんが、同業種で比べるのであれば参考になる指標となります。

中小企業庁の調べでいくと、全業種平均は

平成24年 1.12回転
平成25年 1.22回転
平成26年 1.16回転

となっています。
(参考資料:中小企業庁の平成27年業種別経営指標より)

業種別でみると平成16年と古い資料ではありますが、
建設業・・・1.6回転
製造業・・・1.2回転
情報通信業・・・1.7回転
運輸業・・・1.4回転
卸売業・・・1.6回転
小売業・・・1.7回転
不動産業・・・0.2回転
飲食・宿泊業・・・1.5回転
サービス業・・・1.4回転
となっています。
(参考資料:中小企業庁より)

古い資料ではありますが、業種によるビジネスモデルが変わらないので、現在でもほぼ変わっていないと推測できますので、今でも参考になる資料です。

経常利益率

経常利益率は売上に対して何%の経常利益が出ているかを見る指標です。
これも業種によって粗利益率が違うので一概にいえませんが、1,000万円の売上高で100万円の経常利益の事業と、200万円の事業では、200万円の経常利益の事業のほうが経営効率が良いのは一目瞭然です。

中小企業庁の調べで全業種を見てみると、
平成24年 2.58%
平成25年 2.87%
平成26年 3.15%
となります。
(参考資料:中小企業庁の平成27年業種別経営指標より)

が、あまり全業種でみても意味がありませんので、業種別で見てみましょう。(平均粗利益率が25%前後が中小企業の平均になっていますので、粗利益率が25%前後の事業にとっては参考になるかもしれません。)

総資本回転率の時と同様に平成16年の資料ですが、

建設業・・・1.0%
製造業・・・1.8%
情報通信業・・・1.7%
運輸業・・・1.4%
卸売業・・・0.8%
小売業・・・0.4%
不動産業・・・4.4%
飲食・宿泊業・・・0.5%
サービス業・・・1.6%
となっています。
(参考資料:中小企業庁より)

総資本回転率×経常利益率=総資本経常利益率

算数のような話になりますが、

総資本回転率=売上高÷総資本
経常利益率=経常利益÷売上高

つまり、

(売上高/総資本)×(経常利益/売上高)=経常利益/総資本

分子の売上高と分母の売上高はそれぞれ消えるので、上記のようになります。

では、参考までに例題で試してみましょう。
総資本1,000万円、経常利益100万円、売上高2,000万円の事業があるとします。

総資本経常利益率=経常利益100万円÷総資本1,000万円=10%
総資本回転率=売上高2,000万円÷総資本1,000万円=2回転
経常利益率=経常利益100万円÷売上高2,000万円=5%

となります。

総資本回転率2回転×経常利益率5%=総資本経常利益率10%です。

つまり業種別の平均も先ほどの資料を使えば簡単にわかります。

建設業・・・1.6回転×1.0%=1.6%
製造業・・・1.2回転×1.8%=2.16%
情報通信業・・・1.7回転×1.7%=2.89%
運輸業・・・1.4回転×1.4%=1.96%
卸売業・・・1.6回転×0.8%=1.28%
小売業・・・1.7回転×0.4%=0.68%
不動産業・・・0.2回転×4.4%=0.88%
飲食・宿泊業・・・1.5回転×0.5%=0.75%
サービス業・・・1.4回転×1.6%=2.24%

となります。

これを見るとどの業種のビジネスモデルが儲かりやすいかも見えてくると思います。

成長性を見るなら?

成長性を見るのであれば、総資本回転率の推移を特に注目してみてください。

経常利益率は、経費削減などを行えば短期的に改善ができます。
しかし、経費削減がイコール会社や事業にとって良いことかは怪しい部分もあります。

将来の成長のために投資しなければいけない経費まで削減して経常利益率を高めている事業や会社もあるので要注意です。

一方で、総資本回転率は売上が伸びなければ改善しない指標ですので、成長性を表す指標の1つといえます。
もちろん、資産を減らすことで改善できますが、少ない資産運用で売上を確保できればそれは良いことです。
工場などが、機械を1台売れば、資産は減りますが、生産量が減れば売上も減るので、回転数は上がりませんし、逆に売上を維持できればそれは素晴らしいことです。

現実に他社の数字分析は難しい

タイトルの通りですが、上場している企業以外であれば、財務の数字が公開されていないので分析することは非常に難しいのが現実です。

そこでお勧めするのは、同業他社の平均数字を覚えておくこと、そして同業や気になる業種の上場企業をなんとなく分析してみることです。

そうすることで、特に他業種が、どういう収益構造になっているのかを掴むことができます。



参考記事

【VOL67】上場企業の財務分析:かっぱ寿司の業績

【VOL68】上場企業の財務分析:スシローの業績

【VOL69】上場企業の財務分析:くら寿司の業績

【VOL70】上場企業の財務分析:幸楽苑の業績

【VOL71】上場企業の財務分析:日高屋の業績

数字に強くなれば・・・

取引先の社長さんなどと話していて、数字をしっかりみて経営しているかいないかなどわかるようになります。
また、話のつじつまが合わない箇所などもわかるようになってきますので、経営上有利になれる可能性が高くあります。

例えば、飲食店や美容室などの現金商売であれば、運転資金に困ることは構造上赤字以外にありません。
にも関わらず、資金に困っているようであれば経営状況がよくないことがすぐにわかります。

逆に建設業や製造業であれば、先にお金が出ていく業種ですので、一時的な運転資金に困ることもあります。

どういう業種がどういうお金の動きをするかを自ら学ぶことも大切ですが、たくさんの業種を見ている税理士やコンサルタントの話を聞いてみることも1つの方法です。

他業種の話は数字だけでなく、自分の業種では目をつけていなかったヒントが溢れていることが多々あります。

自分の業種で他のライバルも身につけていないけど、他の業種で成功事例があることを自社に持ち込むことは、いくつかある経営がうまくいくための方法の中でも成功率の高い方法の1つです。(但し社内や業界の反対勢力と戦うのに苦労する可能性も高いですが・・・)

話が脱線してしまいましたが、自社の総資本経常利益率、総資本回転率、経常利益率を3年分くらい計算してみて、総資本経常利益率を良くするために何をしていくかを考えてみると良いのではないかと思います。

資料

編集後記

メルマガもそうですが、当サイトも8月8日を持って丸2年となりました。
最初は実践起業塾という名前で起業する人のお役に立てるサイトを目指してというスタートでしたが、いつの間にか内容が中小企業経営者全般に向けたものになり、起業ではなくなっていましたので、先月の7月7日に経営ナビという名前に変更しました。

サイト名変更による検索順位の変更等もほとんどなく、逆に1ヶ月も経たないうちに経営ナビという名前で検索すると1ページ目に出てくるようになりました。

これもたくさんの方が当サイトを見に来てくださっているお陰だと思います。

これからも財務に限らず、中小企業経営に役立つ情報を発信していきます。

【VOL117】中小企業の経営に必要な4つの役割を徹底解剖でも紹介させていただきましたが、この4つの役割を軸にこれからも記事を更新していきますので、引き続きよろしくお願いします。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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「メルマガ版財務講」に関する記事一覧はこちら→http://kigyo-jyuku.asia/category/merumaga-zaimu/

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字
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※免責事項

◯わかりやすくするために厳密な法律用語とは若干違うところがあります。

◯内容に関しては万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。
これらに起因して発生するいかなる損失についても補償しかねますので、自己責任での運用をお願い致します。

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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