【VOL112】バランススコアカードとは、財務以外の数字も業績評価に取り入れる方法

読了時間目安:約 14分32秒

前回少しだけご紹介しましたが、バランススコアカード(=BSC)という考え方について今回はご紹介します。
財務数字だけではなぜ経営の役に立たないのか?については前回説明しましたが、スピードの欠如と収支という結果しか表さないことに触れました。
もちろん財務が要らないということではなく、財務を活かすためにも、他の数字と組み合わせることが重要です。
その考え方の1つとして有名なのがこのバランススコアカードという考え方で、

「①財務の視点、②お客様の視点、③業務プロセス・効率の視点、④人材の視点」

という4つの視点をすべて数値化しようというものです。

今回はその概要をお伝え致します。

前回の内容を読んでいただいたほうが、より理解が深まると思いますので、まずはこちらを参照ください。
【VOL111】経営者は会計の数字だけをみていれば良いのか?経営者がみるべき数字とは?



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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『バランススコアカードとは、財務以外の数字も業績評価に取り入れる方法』です。(編集前のメルマガは2016年6月22日(水)に配信されています)

バランススコアカードとは?

バランススコアカードを提唱した、キャプラン&ノートンによれば、

「戦略を記述できなければ、戦略の実行などできるはずがない。
バランス・スコアカードは、一環した洞察に富む方法で戦略を記述し伝達するためのフレームワークを提供する」

と表現されています。



また、横浜国立大学の横川武男教授によれば

「バランス・スコアカードは、ビジョンと戦略を従業員の日々の業務まで落とし込んだ戦略経営志向のナビゲーション経営である」

と表現されています。


若干難しい表現ではありますが、「企業や事業の(財務以外も含めて)目標作成と管理をわかりやすいフレームワーク(枠組み)を使って作り、運用するツール」と思っていただければ、ほぼ間違いはありません。

目標作成が財務だけの会社が多い

詳しくは後述しますが、

企業や事業の目標は、
ミッション→ビジョン→戦略→戦術があり、その先にそれに沿った行動計画があり、行動→チェック→改善という、一般的に言うPDCAサイクルが存在します。

参考:目標を作らなければいけない理由はこちら
【VOL110】経営計画や事業計画は中小企業経営に必要なのか?

しかし現実には、ビジョン、ミッションなどは絵に描いた餅状態、戦略や戦術は経営者の自己満、ひどいところでは売上、利益という数値目標すら立てただけでチェックできておらず、期末や年末になって、「あーこんな目標立てたっけなー」で終わりになっています。

目標が絵に描いた餅で終わってしまう理由

これには根本的な理由が3つあります。

経営者の執念が足りない

精神論的になってしまうので今回の本題とは外れますが、経営者が目標達成に執念を持っていれば毎月、下手をすれば毎週、毎日の単位で目標に対する実績が気になるはずです。

気になり始めれば、どこに問題があるのかを現場に出て確認しようと思うことになりますので、会社の問題点がわかり改善計画を立てることができます。

少なくとも目標と実績のチェックは必ずするようになると思います。

財務指標が経営指標になっていない

これは、前回の【VOL111】経営者は会計の数字だけをみていれば良いのか?経営者がみるべき数字とは?でも書きましたが、前回の事例であれば、サンプル商品を試すのに3ヶ月の使用期間があるので、売上が数字になって現れるのは早くて4ヶ月後、そこから改善をしたとしても、成果が出るのにその月からサンプル試供した商品の売上ですから、実際に数字になるには更に3ヶ月かかってしまいます。

つまり財務の数字をみて経営判断をしていては遅いのです。

これは、建設業や製造業で注文されてから長い工期や製造期間を経て売上があがる会社でも同じです。
決して財務指標には注文数や問い合わせ数が出てきませんので、財務指標以外の経営指標が必要となってしまうので、財務指標が重要視されなくなってしまうのです。

フレームワークが確立されていない

ここがバランススコアカードが補っている部分ですが、目標を立てるのにフレームワーク(枠組み)がなく、白紙の紙を渡し自由に考えて下さいという状況になっています。

これはなかなか難しい取り組みです。

そのため、ミッション、ビジョン、戦略、戦術、行動計画に一貫性がなく、戦術や行動計画の先にミッションやビジョンが達成されるイメージが沸かないのです。(実際に達成されないような戦術や行動計画の場合も多々あります。)

財務の仕事をメインにしている私が言うのもおかしな話ですが、売上や利益を含む財務の数字はミッションやビジョンを達成するための手段であり、本質的な目的ではありません。

その目的を達成するための目標が財務を含む数値しかないので現実と乖離し、目標が絵に描いた餅状態になってしまうのです。

バランススコアカードの目標作成方法

まずバランススコアカードは財務のように過去だけでなく、過去、現在、未来すべての時間軸で目標を作ります。

その視点は、「①財務の視点、②お客様の視点、③業務プロセス・効率の視点、④人材の視点」となりますが、まずはバランススコアシートでのミッション、ビジョン、戦略(ストラテジー)について簡単に書いておきます。

ミッション

何のために存在するのか?
事業を通して達成したいことは何か?

ビジョン

それを達成するための未来像

戦略(ストラテジー)

将来像を実現するために何をするべきか?

バランススコアカードにおける4つの視点とは?

ミッション、ビジョン、戦略を達成するためのフレームワーク(枠組み)として以下の4つの視点を導入しているのがバランススコアカードの大きなポイントであり、「過去・現在・未来」の時間軸すべてで目標を持てる理由でもあります。

財務の視点

一番わかりやすいと思いますが、売上目標、利益目標などになります。
そのためにコスト削減目標やお客様数増加目標、お客様単価アップの目標などのKPIを設定し、そのための行動計画を立てます。

これを考えやすいのが、以前紹介した戦略MQ会計です。

【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!

【VOL81】戦略MQ会計の活用方法を事例で紹介

【VOL82】戦略MQ会計を応用して未来の利益計画を作ろう

業務プロセスの視点

これは業種によって違いはありますが、一般的に効率、能率と言われる部分です。
但し、スタッフの能率だけではなく、アウトソーシングするという選択肢も含めての話になります。

例えば全社共通しているということだけで例をあげますが、経理であれば、経費精算を都度ではなく月1に変えるとか、金融機関に行かずにネットバンキング化を進めるとか、会計の入力作業をアウトソーシングするなどがあげられます。

他には飲食店などであれば、注文からお客様へお出しする時間を短縮するために料理の工程を変えるとか、オペレーションを変えるなどがあります。

主に仕組みやプロセスの改善になります。

人材の視点

これは人材の成長、教育という部分になります。

またわかりやすい事例ということで、経理を例にすれば、全社員簿記検定2級を取得とか、入社1年目で経費精算業務をできるようになるとかの目標を立て、それに向かって社内研修やOJTの行動計画を立て、実行しチェックして行くことになります。

社内で理念教育や技術研修をしているのであれば、単純に参加回数を目標にすることも可能です。

顧客の視点

お客様満足度の指標です。
前回もご紹介しましたが、星野リゾートでは顧客満足度をアンケートを活用して把握し、利益と並ぶ重要視数として活用しています。
星野リゾート流 :「顧客満足」と「利益」を同時獲得する方法

よくある例としては、お客様からのお礼状やお礼メールの数、アンケート結果などです。

お客様からの評価を数値化するということはなかなか難しく、精神的にも抵抗のあることかと思いますが、お客様からの評価こそが事業の存続のカギとなります。

売上や利益はお客様あってこそですし、社員スタッフが給料をもらえるのもお客様です。
業務効率や社員教育ではありません。

根幹としてお客様からの評価というのは非常に事業にとって大事なのにも関わらず、財務指標の中ではおざなりにされています。

4つの視点はつながっている

ここまで読んでいただき、4つのどこに分類したら良いかわからないようなものもあったのではないでしょうか?
あくまでフレームワーク(枠組み)としての考え方です。

当然ですが、事業はすべてがつながっています。

人が成長するから、業務プロセスが向上し、結果としてお客様評価がよくなります。そして最終的に財務がよくなります。
そしてその良くなったお金(財務)で人の教育や業務プロセス改善をし、結果お客様評価が・・・と循環していきます。

人事評価制度にも応用できる

事業全体の数字を4つの視点で数値化するお話をしましたが、実はこれを部署単位、個人単位に落としてこそバランススコアカードの本来の効果があります。

例えばお客様視点で、お礼状を月に◯通もらうという目標を会社でもっていたら、これを各人に落とし込み、各人の給与や賞与の評価に反映させていけば、組織としても個人としても同じ目標を追いかけることができます。
相乗効果が生まれ、より効果的です。

人事評価制度がなぜ必要かについては別の記事にて、後日またご紹介させていただきます。

フォローアップの仕組み

毎月目標の確認をする習慣をつけることをお勧めします。
当然、試算表を中心とした財務数値はもちろんですが、4つの視点に基づいて作られた数値目標も一緒にチェックしていきましょう。

目標も計画もチェックして、その差を経営に活かしていかなければ意味がありません。

このフォローアップの仕組みまで作ってバランススコアカードが完成となります。

バランス

編集後記

駆け足でバランススコアカードをご説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

個人的にはバランススコアカードには決定的に欠けている部分が2つあると思っています。



1つ目は、集客に関する視点

お客様満足が高ければ紹介が生まれるのでお客様視点があれば一部はクリアしていますが、紹介以外の新規がなければ成り立たない事業、成長しない事業がほとんどだと思います。

前回の事例のようにテレアポをしている企業は少ないかもしれませんが、問い合わせフォームからのメール送信による集客やウェブでの集客、社長のトップ営業で交流会などに参加して名刺交換をして集客している事業者もいらっしゃるでしょう。

この場合、メール送信数、ウェブのアクセス数、名刺交換数などが集客の指標になります。
こういった部分を考えるのに4つの視点では足りないため、後回しになりがちです。



2つ目は、何がキーなのか発見しづらいということです。

上記の内容を読んでいただき、うちの事業はここを数値化して毎月チェックしていけば業績が改善していくのでは?と思われた方は少ないのではないかと思います。

やはり、このキーになる数値(KPI)をどこに設定するかが非常に大事ですので、そこをどうしたら良いか悩まれることでしょう。

その手法としてSWOT分析や3Cや4Pなどの手法が紹介されている本もありますが、果たしてそれで解決できるのでしょうか?



やはり他業種を含めたくさんの事業や企業をみてきたプロの目が必要となってくるのは必然です。



次回は弊社(Belink)で財務以外の数値をKPIに設定して業績改善をした企業の事例を、どういうKPIを設定したかを中心に紹介していきたいと思います。
バランススコアカードと考え方が若干違う部分はありますが、参考にしている部分もあるので、今回バランススコアカードという考え方をご紹介致しました。

参考になれば幸いです。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字
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◯内容に関しては万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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