【VOL113】中小企業の人材教育に人事評価制度が必要な理由

読了時間目安:約 17分45秒

経営者の大きな悩みの1つにヒトの問題があります。
「もっと頑張ってくれたら良いのに」と思っている方もいると思いますし、「社員は頑張ってくれているのだけど・・・」という人もいると思います。

人事評価制度は、社員が頑張れる仕組みであり、全社の価値観を一致させ、同じ方向に向かって働ける仕組みです。
評価制度というと堅苦しく感じがしますが、全くそんなことはありません。



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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『中小企業の人材教育に人事評価制度が必要な理由』です。(編集前のメルマガは2016年6月29日(水)に配信されています)

経営をする上で多い悩み

昔から言われる企業の経営資源は、ヒト・モノ・カネ(・情報)です。
そして、経営者の悩みで多いのは、売上の不足と人が育たないの2つが圧倒的です。
ついで資金繰りです。

資金繰りの悩み

売上・利益が上がらなくて資金繰りに困っているのは根本的に売上の不足の悩みですが、それ以外の資金繰り改善に関しては、今回は詳細は割愛しますが、テクニックでどうにかなることがほとんどです。

売上不足の悩み

決定的な問題点として多いのは、「売上の不足」と「人が育たない」で、起業してまず訪れるのが売上の不足です。
これは主に、マーケティングという概念が経営者に抜けているケースが多く、売上があがらないだけでなく、「商品の差別化ができていない、お客様層が絞れていない、集客の方法が決まっていない、良い商品を売っていれば自然に売れると思い込んでいる、お客様のフォローアップの仕組みがない」などの問題です。

この問題さえクリアし、マーケティングをキチンと設計し実行していけば、リアルであろうとネットであろうと売れるので、売上の問題は解決できるはずです。(マーケティングの事例が知りたい方はこちらの小さな会社のためのマーケティング入門を参考にすると良いと思います。)

また別の機会にもご説明します。

人材教育の悩み

売上がコンスタントに増えるようになってから新しく発生するのが人材教育の悩みです。

マーケティングに成功し、売上も増えてきたのに、それを任せる人がいない、育たないという問題です。

この問題にどう取り組むか、これが中小企業にとっては非常に大切な問題となります。
大手で人事部などがある会社であれば、この問題は人事部に任せておけば良いですが、中小企業の場合には、この部分も経営者または管理職がどうしていくか考えていかなければいけません。

その1つの解決策となるのが、人事評価制度です。

はじめにお伝えしておきますが、スタッフが10人未満の企業に人事評価制度は必要ありません。10人までは経営者が自らOJTで教育しましょう。
一般的に10人程度が1人で見ることのできる部下の人数と言われています。(目安なので5人でも良いですが・・・)

その人数すら教育できないのに、他人に教育してもらおうなんていうのは、考え方が少しズレています。

どう教育したら良いか悩んでいる方には、参考になる部分はありますが、ビジョンや理念を伝え技術教育を通して背中を見せるだけで、十分育ちます。

人事評価制度とは?

人事評価制度は簡単に言えば、会社の目標や求めている人材像と、社員の目標や求められている人材像を一致させていこう!そのために基準を作っていこうという取り組みです。

マズローの5段階欲求

有名な話ですのでご存知の方も多いと思いますが、

①生理的欲求
②安全の欲求
③社会的欲求
④承認の欲求
⑤自己実現の欲求

の5段階が存在します。

働く人は、もちろん生活のためだけに働いているという①生理的欲求の人や、より良い生活、安全で快適な生活という②安全の欲求だけのために働いている人もいなくはないと思いますが、会社や社会の一員であるという③社会的欲求(所属の欲求)を満たしたい人や、お客様に喜ばれたい、会社や上司に認められたいという④承認の欲求を満たしたいために働いている人が多くなっています。

前者の①生理的欲求、②安全の欲求のためだけに働いている人であれば、一定までは給料を高くしていけばいいだけですが、それも満たされてしまえば、③社会的欲求や④承認欲求が芽生えてきます。

大雑把にわければ、働く理由は以下の3つになります。

⑴給料
⑵人に喜ばれ認められる(お客様からの評価や出世を含む会社上司からの評価含む)
⑶自己成長

人材教育がうまくいかない理由

上記⑴給料、⑵承認、⑶成長が働くモチベーションになるとしたら、人材教育がうまくいかない理由は簡単です。

会社が求めていることと、社員が求められていると思っていることが違うからです。

社員は自己成長のために頑張る、会社は求めていることと違うから評価しない、結果として給料も増えない。
社員は頑張っても評価されないなら頑張らず、今の給料をいかに楽してもらえるかを考える。

ここにたどり着くまでに、もう少し気持ちの変化はあるでしょうが、簡単に書くとこういうことになります。

うちの会社は、求めている人物像も明確にしているし、会社のビジョンも明確にしていると思う経営者の方も多いと思いますが、この制度のポイントは、文書化と面談です。

人事評価制度で3つのサイクルを高速回転させる

まず会社が求めていることを文書化します。(具体的な方法については次回以降に解説します)

この時のポイントは具体的かつ、グルーブ(グレード)を明確にすることです。
何ができたら何グループになるのか?何が出来たら評価されるのかということです。

例えば、入社1年目と10年目でできることは違うでしょうから、求めることも違ってくるので、グループ(グレード)を作ります。

評価ポイントには、①売上(粗利)などの業績的な結果が数字で見られるもの、②技能的なもの、③マインド的なもの、④行動すれば達成可能なものを入れることです。

簡単に説明すると、

業績

説明不要ですが、毎月の売上高などです。
会社の業績に直接関係してくる部分、かつ、数字で明確にでるものです。

技能

例えば、私たちの仕事であれば、グループ3にあがるためには、「人事評価制度の導入を一人でできる」「決算書を見てお客様の問題点を指摘することができる」であったり、グループ4であれば、「人事評価制度の導入だけでなく、運用をし社員教育で結果を出せる」「決算書を見てお客様の問題点を指摘し、改善することができる」などです。

曖昧になりがちですので、「できる」というポイントをどこにおくかということと、後述する面談で実際の社員の取り組みを取り上げ「できる」までに何をしたら良いかをすり合わせます。

マインド

「利他の心を持って仕事をし、一緒に働く仲間を助けている」とか、「明るく元気に仕事に取り組んでいる」とかです。
技能と同様に曖昧になりがちですので、同じく面談で基準の擦り合わせをするとともに、自己評価をつけてもらい、上司評価との差を明確にしていきます。

行動

自由参加の技術研修への参加回数や、遅刻早退欠勤の回数、改善提案の回数などです。
業績と同様に明確に数字にでるものを入れますが、売上と違い努力すればすぐに結果がでるもので、かつ、会社の方針や理念を共有するために必要なことを入れていきます。



そして毎月必ず面談をします。
社員本人は出来ると思っていても会社が求めるレベルは違うこともあります。
その差を埋めるために面談をすることが、この制度の重要なところとなります。

なぜ評価されるのか、なぜ評価されないのか、それを明確にし、フィードバックすることで、社員の承認の欲求は満たされ、どう頑張れば良いかがわかるので、自己成長の意欲もわきます。

面談で指摘されたことが、翌月に評価されれば、その効果は更に増すことになります。

そして、その結果、半年に1回の賞与や年に1回の昇給などにつながれば、給料、承認、成長という循環が高速サイクルで回ることになります。

経営者、上司の気分で評価というのが大幅になくなる

一番不幸なのは、社員が頑張っているのに、経営者や上司が見てなくて、評価されないということです。
次が、社員が頑張っているのにポイントがズレているから、頑張っているように見えず評価されないということです。

この制度を導入すると、評価する側の姿勢も変わります。

評価項目が明確になりますから、今月は「ごめん、見てなかった」というわけにはいきませんし、先月と今月で評価が違う場合には理解できる説明が必要となります。

気分や好き嫌いで評価ということが完全になくなりましませんが、大幅に減らすことができます。

人による評価差をなくす

人数の多い組織の場合には、人によって評価が異なることがあります。
気分や好き嫌いではなく、評価の基準の違いという意味です。

これを防ぐためには、評価の基準を明確にするために半年に一度程度のスパンで評価者のみの調整会議を開く必要があります。

その半年の評価を調整することと、その調整を通して評価の基準を再度明確にするための会議です。

評価差が出るのは、技術とマインドの部分ですが、

この会議を通し、AさんよりBさんのほうが、明るく元気に頑張っているのに、Bさんのほうが評価が高いというのがなくなります。
また、現実起こっているのであれば、調整をこの会議ですることとなります。

事業規模によっては、2人による上司評価をつけることも解決策の1つです。
もちろん、相談しては意味がないので、別々に評価をつけることが大切です。

現実との差や不具合をなくす

制度を作って運用を始めると、これは評価されるのに、これは評価されないとか、評価の比重が現実とは違うとか、不具合が発生します。

これに関しては、評価基準改正を半年に1度やることとなります。
調整会議とは違い、評価基準に従って努力をしてきた人が損をしないように、改正前の評価には調整を入れません。

しかし、現実との違いや不具合は早く改善したほうが良いので、定期的に改善を行い、全社員に告知し、次月以降に反映させていきます。

概ねサイクルはこんな感じになります。

評価制度のサイクル

評価制度作成の注意点

評価する側が評価のブレをなくすことや、評価する側が決めたことを一番しっかりしなければいけないことの他に注意点が必要です。

戦略ミスは経営者の責任

評価基準を作り、昇給や賞与の制度を作り、達成できた場合に、業績が上がらなかった場合、それは経営者の責任です。

評価基準に定められたことを努力しないのは社員の責任の部分もありますが、それを目一杯やった場合に業績が改善しないというのは経営者、管理職の戦略ミスです。

経営者は利益責任を持ち、社員は実行責任を持つというのが根本の考え方です。
ですので、業績が上がらなかったからといって昇給や賞与を評価制度どおりの基準から変えてしまっては、社員からの信用はなくなってしまいますので、せっかく作った制度も全くの無意味となります。

評価制度の評価項目には注意

何を評価するか、会社として社員に何を求めるかは明確にしなければいけません。
たまに思いつきのように、ありとあらゆることを入れようとする人がいますが、社員も人間ですから意識してできることの量には限度があります。
欠点や短所がある人間には働いてほしくないという信念を持っている人以外は、社員の人間的成長と会社の業績に直結するような項目を選んでいきましょう。

業績に直結するというのは、会社のミッション、ビジョン、理念に沿った戦略があり、その戦略に沿った戦術が合ってはじめて明確になります。

前回の【VOL112】バランススコアカードとは、財務以外の数字も業績評価に取り入れる方法でも少し説明しましたが、バランススコアカードの考え方と評価制度を組み合わせると効果が倍増するとお伝えしたのは、そのためです。

会社の使命(ミッション)、そのために必要な事業規模や社風などの未来像(=ビジョン)が明確になっていて、そのためにどの商品・サービスをどのお客様の層に売るか(=戦略)があり、それをどうやって売るか(=戦術)がなければ、どんなに社員が頑張っても会社は良くなりません。

余談ですが、戦略、戦術の部分はマーケティングを学ぶことでもどうしたら良いかのヒントになります。

経営方針×BSC×評価制度

この3つをぜひ取り入れていって欲しいと思います。

BSC(=バランススコアカード)の考え方にも、人事評価制度の考え方にも経営方針(ミッション、ビジョン、理念、戦略、戦術)という考え方が存在しますが、ここではあえて別ものとして扱います。

なぜなら、それだけ大切だからです。

考え方や導入事例であれば、たくさんの書籍も出ていますし、導入コンサルタントもたくさんいるはずです。

ぜひそういったものを利用して自社に取り入れていってほしいと思います。

当サイトでも引き続き説明して行きます。

もちろん弊社でも導入支援しています笑
弊社の人材教育サポートのページ

編集後記

どうでも良い話ですが・・・
最後に弊社のホームページのリンクを貼る際に自社サイトを見て、ページが・・・手抜きに見えることに気づいてしまいました・・・
自社サイトの改良も今後のやることリストに入れておかなければいけません・・・汗

今回BSCの考え方を使った事例の紹介をしようと思っていたのですが、それより先に人事評価制度について解説したほうが良いと思い急遽順番を変えて人事評価制度の話をさせていただきました。

次回は、人事評価制度の作り方や構成についてにするか、BSCの事例にするかまだ悩んでいますが、両方とも順番は違えど書いていくつもりです。

両方、またはどちらかでも導入しているお客様は業績が改善しています。(弊社事例では今のところ100%業績向上中)
ぜひ取り入れることを検討して欲しいと思います。

弊社に頼んでくださいとはもちろん言いません。
検索すればたくさんの導入サポートをしている会社が出てくると思います。
こういうのは経営者と導入サポートをする担当者の相性が重要ですので、よく選んでください。

また、本を一冊下記に紹介していますが、我流で導入するというのも1つの方法です。
スピードは落ちますが、結局は自社の制度です。
自ら試行錯誤して作り上げた仕組みこそ、他社への参入障壁となり、代え難い資産になるということもあります。

私たちの考え方は評価制度という名前が堅苦しいので変えたいと思っていますが、この仕組み自体は社員が会社の求めている方向性に頑張ることができ、会社は業績が向上し、社員は評価されお給料も上がり、自己成長へのモチベーションが高まる仕組みだと思っています。

もっとも効果があるのは、評価するがわの管理職、中間管理職です。
評価する以上、自分たちもしっかりやらなければいけないのは明白です。
そこに治外法権はありません。

全社員が価値観を一致させ、同じ方向に向かって進めれば必ず会社は良い方向に向かいます。

次回以降もBSCや評価制度の記事を書いていきますので参考にしていただけたら幸いです。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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