金融機関(銀行)が見る損益計算書のポイント

読了時間目安:約 10分22秒

金融機関(銀行)から借入をしようとする際に3期分または2期分の決算書の提出を求められるかと思います。

金融機関(銀行)がどこを見ているのか知らない人も多いのではないでしょうか?

金融機関(銀行)が決算書から何を知りたがっているのかを知ることで、金融機関(銀行)と上手に付き合う事も可能です。

まずは損益計算書のポイントについてです。

損益計算書とは何者なのか?

損益計算書とは、

企業のある一定期間における収益と費用の状態を表す財務諸表

と定義されています。

一定期間(通常は会計期間=1年)における収入と費用、そして差し引きした損益(利益又は損失)を表します。

つまり、企業における収益力を見るための指標です。

損益計算書にはたくさんの利益がある

売上総利益、粗利益、限界利益、営業利益、経常利益、税引き前利益、税引き後利益などたくさんの利益があります。(赤字の場合は◯◯損失となります。)

売上総利益、粗利益、限界利益とは?

言葉の定義は若干違いますが、経営をしていく観点から考えれば同じ物だと考えて構いません。

売上から売上獲得のためにかかった原価を引いたものを売上総利益、粗利益、限界利益などと言います。

例:1,000円のリンゴを10個購入し、1,500円で販売した。
売上 1,500円×10=15,000円
原価 1,000円×10=10,000円
利益        5,000円

この時の利益を売上総利益とか、粗利益とか、限界利益などと表現します。

営業利益とは?

上述で求めた売上総利益や粗利益、限界利益から販売費及び一般管理費を引いたものをいいます。

販売費及び一般管理費とは人件費や家賃、水道光熱費、広告宣伝費などのことをいいます。

先ほどの例題でいえば、りんごを売るための場所代や販売する人のお給料などのことで、モノが売れても売れなくてもかかる経費のことです。

営業利益は本業での企業の収益力を表します。

経常利益とは?

経常利益とは、営業利益つまり本業での企業の収益力から、金融機関への利息の支払など本業とは関係ない支出や空き地を利用してやっている自動販売機の収入や鉄くずの売却収入など、本業以外の収入を差し引きしたものをいいます。

経常とついているだけあり、継続的に常に発生する可能性があるが、本業とは関係ない収入と支出を差し引きした損益のことです。

経常利益は企業の経常的な収益力を表します。

税引き前利益とは?

税引き前利益とは、経常的な収益力を表す経常利益から、経常的ではない突発的な利益や損失を差し引きしたものを表します。

例えば不動産業以外の人が、自社の土地を売却した場合、経常的ではなく、突発的なものですので、それにかかる損や得は経常利益までの計算には入れません。

税引き後利益とは?

税引き後利益とは、税引き前利益から、法人税等(国税、都道府県民税、市町村民税)を差し引きしたものをいいます。

税金を含めたすべての支払をした上で、どれだけの利益が残っているか表します。

損益計算書の全体構造

  売上高
ー)原価(変動費)
=)売上総利益(粗利益、限界利益)
ー)販売費及び一般管理費(固定費)
=)営業利益(損失)
+)営業外収入(雑収入など)
ー)営業外費用(支払利息など)
=)経常利益
+)特別利益(固定資産売却益など)
ー)特別損失(固定資産売却損など)
=)税引き前利益(損失)
ー)法人税等
=)税引き後利益

となっております。構造を見ながら再度用語の意味を確認するとより理解は深まるのではないかと思います。

金融機関(銀行)が見る損益計算書のポイントは?

たくさん見る箇所はありますが、今回は大筋を書かせて頂きます。

売上より利益重視

もちろん売上高が増えているか等もみますが、売上高が増えていても利益が減っていれば、金融機関(銀行)の評価は低くなります。

これは金融機関(銀行)が、貸したお金をちゃんと返済できるだけの能力がこの企業にはあるのかどうかという部分を重視しているためです。

増収増益(売上増利益増)よりも減収増益(売上減利益増)のほうを評価するという俗説もあるくらいです。

※返済計画や利益計画を作成する場合には、増収増益計画よりも減収増益計画のほうが喜ばれます。なぜなら売上はコントロールできませんが、経費はコントロールできるので、売上が下がっても経費削減して利益を出す計画のほうが現実味があるからです。

よって、増収減益(売上増利益減)より、減収増益(売上減利益増)のほうが金融機関(銀行)の評価が高くなります。

金融機関(銀行)が特に注目して見る3つの数字

中小企業の場合、重要な数字は、税引き後利益、減価償却費、役員報酬です。

税引き後利益は最終利益ですので、改めて説明する必要はないと思います。

では役員報酬や減価償却費はなぜ重視して見るかといいますと、

減価償却費はお金の出ていかない経費だからです。
(減価償却費がよくわからに方はこちら→【VOL2】減価償却費に代表される会計の罠にひっかからないように気をつけましょう!

また、中小企業の場合はオーナー会社で社長とその家族の一存で、役員報酬を決められる傾向があるために、節税のために役員報酬を増額したり、数字を良く見せるために役員報酬を下げたりと役員報酬が実態とかけ離れる傾向があるからです。

例えば、年間1,000万円の売上高があり、社長のお給料を除いた経費が500万円の会社が、

1年目は税金を払いたくないので、節税のために社長のお給料を500万円にした場合、利益はゼロですが、

2年目はお金を借りたいので、社長のお給料を300万円にしたら、利益は200万円になります。

社長のお給料が変わっただけで、何も変わっていないのですが、利益だけみていると2年目のほうが業績が良く見えてしまいますね。

本当に経費削減出来ているのなら良いのですが、中小企業の社長のお給料は恣意的に調整されている場合があるので、利益+役員報酬を比べて企業の収益力の推移を見ている傾向があります。



この辺りの話は、過去のメルマガでもご説明しているので参考にしてみて下さい。

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

特別な損益は考えません

土地の売却益や売却損など、1年だけの特別な事項については考えない傾向があります。

なぜなら、金融機関がお金を貸すのは長期にわたるので、売却益で儲かっているだけで翌年から赤字になりそうな企業には貸したくないからです。

但し、特別な損益でも2年連続で赤字になると金融機関(銀行)からお金を借りられなくなる可能性が高くなります。
うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。を参考にしてみて下さい。

お金の出て行かない経費は利益に加算します

例えば前述の減価償却費であったりとか、最近は減ってきていますが、将来の退職金に備えて退職給付引当金を毎年経費にしている企業の場合はその経費だったりとか、実際にはお金が出ていっていない経費については利益に足して考える傾向があります。

なぜなら、金融機関(銀行)は企業の返済能力が最大の関心ごとですので、お金が出て行かない経費については返済できるものとして見るということです。

一般的に金融機関が考える返済可能金額とは?

「経常利益(損失)+減価償却費ー法人税等」です。

ここに前述した、減価償却費以外のお金の出ていかない経費や役員報酬などを加味する場合もあります。

つまり、上記の「経常利益(損失)+減価償却費ー法人税等」の金額をいかに多くするかがポイントです。

追加の借入金額の限度額についても、

(経常利益(損失)+減価償却費ー法人税等)×10ー現在の借入残高

という数字(3年程度の平均)を1つの審査基準にしている金融機関が多くあります。(最終的にはそれ以外の要素と総合的に決まります。)

ポイントを調べる

編集後記

もちろん金融機関(銀行)によって方針が違ったり、細かい審査基準が違ったりします。

また、担当者の力量により損益計算書をどこまで読みとれる力があるかによって違う部分があります。

しかし、損益計算書は企業の収益力を見る表であるということに変わりはありませんし、金融機関が企業の返済能力を見るために損益計算書を確認しているということも変わりはありません。

金融機関が損益計算書のどの数字を見て企業の収益力を判断しているのかを把握しておくだけでも、経営の役に立つのではないでしょうか?

参考にしてみて下さい。

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字
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◯内容に関しては万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。
これらに起因して発生するいかなる損失についても補償しかねますので、自己責任での運用をお願い致します。

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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