【VOL108】経営は限界利益を基準に考えるべきたった1つの理由

読了時間目安:約 16分17秒

会計には、原価という考え方と変動費という考え方があると前回の内容でお伝えしました。
売上から原価を引いたものが粗利益額(売上総利益)であり、売上から変動費を引いたものが限界利益でした。

この2つの違いは経費を原価と販売費及び一般管理費に分解するか、変動費と固定費に分解するかというアプローチの違いですが、中小企業はまず変動費と固定費に分解し限界利益で経営判断をしましょうと前回お伝えしました。

今回はその理由といくつかのパターンにおける判断基準についてご紹介します。

関連する記事はこちらです。

【VOL107】変動費と原価(製造原価)の違いを理解すると会計が経営に役立ちます!

【VOL96】売上総利益(粗利益)と限界利益の違いと経営への活かし方!

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『経営は限界利益を基準に考えるべきたった1つの理由』です。(編集前のメルマガは2016年5月25日(水)に配信されています)

限界利益が赤字の事業・商品からは早々に撤退する

前回のお話を覚えているでしょうか?

前回のお話は工場を持つ製造業を例題に、
工場の工員の労務費が500万/月、
工場の家賃が40万/月、
機械のリース代が200万/月、
かかる事業をしているというお話でした。
(実際にはありえませんが、その他の経費は材料費と材料を加工する加工賃以外はかからないという前提でした。)

そこにA商品
販売価格3,000円
材料費 1,000円
加工費 1,500円

B商品
販売価格1,000円
材料費  500円
加工費  700円

の商品があり、どちらの商品も20,000個ずつ作るとすると・・・

原価で考えてみる

A商品

売上高 6,000万円(3,000円×2万個)
材料費 2,000万円(1,000円×2万個)
加工費 3,000万円(1,500円×2万個)
労務費  250万円(500万円×1/2)
家賃    20万円(40万円×1/2)
リース代  100万円(200万円×1/2)
粗利益  630万円(@315円×2万個)

B商品

売上高 2,000万円(1,000円×2万個)
材料費 1,000万円( 500円×2万個)
加工費 1,400万円( 700円×2万個)
労務費  250万円(500万円×1/2)
家賃    20万円(40万円×1/2)
リース代  100万円(200万円×1/2)
粗利益 △770万円(@△385円×2万個)

限界利益で考えると?

A商品

売上高  6,000万円(3,000円×2万個)
材料費  2,000万円(1,000円×2万個)
加工費  3,000万円(1,500円×2万個)
限界利益 1,000万円(@500円×2万個)

B商品

売上高  2,000万円(1,000円×2万個)
材料費  1,000万円( 500円×2万個)
加工費  1,400万円( 700円×2万個)
限界利益 △400万円(@△200円×2万個)

撤退以外に選択肢はない

このケースは原価で考えても、限界利益で考えてもB商品は赤字ですので、B商品からは何がなんでも撤退しなければいけないケースとなります。
撤退するだけで、月に400万円(=B商品の限界利益の赤字分)は利益が増えることとなります。 

B商品の原価計算で赤字になった770万円ではないので注意してください。
B商品から撤退しても労務費や工場の家賃、機械のリース代などは変わりません。

原価で考えているとB商品から撤退したら770万円利益が増えるのではないかと考えたり、【VOL107】変動費と原価(製造原価)の違いを理解すると会計が経営に役立ちます!の事例のように原価計算上での粗利益はマイナスですが、限界利益がプラスなのに撤退を決めてしまい赤字が拡大してしまったりなど、原価計算では正しい経営判断ができないからです。

ですので、経営指標には限界利益を活用するべきなのです。

限界利益の考え方の落とし穴

但し、限界利益の考え方にも1つだけ落とし穴があります。

商品別に考えれば無敵のこの考え方も合計で考えてしまうと判断を誤ります。

合計で考えると
売上高  8,000万円(8,000万円÷4万個=@2,000円)
材料費  3,000万円(3,000万円÷4万個=@750円)
加工費  4,400万円(4,400万円÷4万個=@1,100円)
限界利益  600万円(600万円÷4万個=@150円)
となり、限界利益では儲かっているように見えてしまうのです。

結果、

労務費  500万円
家賃    40万円
リース代  200万円
合計   740万円

の固定費を引くと、限界利益600万円ー固定費740万円=経常利益△140万円となるのですが、

合計で考えてしまうと、B商品から撤退すれば400万利益が出るという発想が即座にでてきません…。

商品別に考えてないのに、MQ会計で学んだように単価アップ(Pアップ)、数量アップ(Qアップ)、固定費削減(Fダウン)、変動費削減(Vダウン)かなどと考えても正しい経営判断はできません。

なぜなら、根本の問題がそこではないからです。



MQ会計についてはこちら。

【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう

【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!

http://kigyo-jyuku.asia/1293/zaimu-merumaga81-mq-example/



一生懸命740万円の固定費をどう削減するか、とか、販売数量をどう増やそうかを考えるより、商品別に考えてB商品からの撤退と結論づけることが正解です。(もちろんB商品の販売単価をあげる、原価を下げるなどして、B商品自体に限界利益がでるようになる方策があれば別ですが。)

このように会計や数字は切り口を間違えると正しい経営判断はできません。

どういう切り口が良いかはこちらも参考にしてみてください。

【VOL89】3種類の販売計画を使って事業を成長させましょう!

B商品から撤退した場合の限界利益

売上高  6,000万円(3,000円×2万個)
材料費  2,000万円(1,000円×2万個)
加工費  3,000万円(1,500円×2万個)
限界利益 1,000万円(@500円×2万個)
労務費   500万円
地代家賃   40万円
リース代   200万円
経常利益  260万円

労務費や地代家賃やリース代は固定費なので変わりませんが、利益はキチンとでます。

限界利益は黒字だが、原価は赤字のケース

B商品の販売価格を1,300円だとして上記の例題を考えて見ましょう。
A商品は上記と変わらないため割愛します。

原価計算をした場合

売上高 2,600万円(1,300円×2万個)
材料費 1,000万円( 500円×2万個)
加工費 1,400万円( 700円×2万個)
労務費  250万円(500万円×1/2)
家賃    20万円(40万円×1/2)
リース代  100万円(200万円×1/2)
粗利益 △170万円(@△85円×2万個)

赤字ですね。

限界利益で考えると

売上高  2,600万円(1,300円×2万個)
材料費  1,000万円( 500円×2万個)
加工費  1,400万円( 700円×2万個)
限界利益  200万円(200万円÷2万個=@100円)

限界利益はでています。

B商品から撤退すると・・・

勘のいい方ならもうご理解されていると思いますが、B商品の限界利益分である200万円赤字がふえます。
計算は割愛しますが、

原価計算を見ただけでは撤退すべきか否かの判断がつかないのがわかっていただけたでしょうか?

販売価格1,300円と1,000円の場合の原価計算を見て撤退か否かを判断できるか再度確認してみましょう。

B商品の販売価格1,000円の場合

売上高 2,000万円(1,000円×2万個)
材料費 1,000万円( 500円×2万個)
加工費 1,400万円( 700円×2万個)
労務費  250万円(500万円×1/2)
家賃    20万円(40万円×1/2)
リース代  100万円(200万円×1/2)
粗利益 △770万円(@△385円×2万個)

B商品の販売価格1,300円の場合

売上高 2,600万円(1,300円×2万個)
材料費 1,000万円( 500円×2万個)
加工費 1,400万円( 700円×2万個)
労務費  250万円(500万円×1/2)
家賃    20万円(40万円×1/2)
リース代  100万円(200万円×1/2)
粗利益 △170万円(@△85円×2万個)

限界利益で経営判断するたった1つの理由

上記の2つの原価計算を見て、販売価格が1,000円のときは撤退すべき、1,300円のときは撤退しないべきと判断できるのであれば限界利益は必要ありませんが、撤退か否かの判断できません。

その判断ができるのは商品別に考えた限界利益だけです。
ですので、経営判断には限界利益を使用するべきなのです。

限界利益は撤退だけでなく、新規参入すべきか否かもわかる

新しい商品、サービス、もしくは事業に参入すべきか否かも限界利益が出るか出ないかの試算が役に立つことがわかっていただけると思います。

試算の段階で限界利益がでないのであれば絶対に参入すべきではありません。

限界利益がでている場合の経営判断

前回の内容で、今回書きますと宣言したお話です。
限界利益は出ているが、固定費を引くと赤字の場合には、数字をどう使って経営判断をすれば良いのかというと、これも変動費、固定費で考えるとすぐにわかります。

例題で確認

A商品を2,700円、B商品を1,300円で販売したとしましょう。

A商品

売上高  5,400万円(2,700円×2万個)
材料費  2,000万円(1,000円×2万個)
加工費  3,000万円(1,500円×2万個)
限界利益  400万円(@200円×2万個)

B商品

売上高  2,600万円(1,300円×2万個)
材料費  1,000万円( 500円×2万個)
加工費  1,400万円( 700円×2万個)
限界利益  200万円(200万円÷2万個=@100円)

合計

限界利益  600万円(400万円+200万円)
労務費   500万円
地代家賃   40万円
リース代   200万円
経常利益 △140万円

商品別にMQ会計で考える

商品別といっても、固定費(F)に関しては、合計で構いません。

A商品
販売単価P @2,700円
原価単価V @2,500円
販売数量Q 20,000個

1個当たりの限界利益 @200円

B商品
販売単価P @1,300円
原価単価V @1,200円
販売数量Q 20,000個

1個当たりの限界利益 @100円

固定費合計F 740万円

現状の赤字は140万円ですから、140万円プラスで儲けるためにどうするかを考えるわけです。

例えば、B商品2万個をA商品を全部にして4万個売れれば、

A商品の1個当たりの限界利益@200円×40,000個=800万円
になりますので、
固定費740万円を引いてもプラスとなります。

または販売個数を増やしA商品を2.5万個、B商品を2.5万個の組み合わせはどうでしょうか?

@200円×25,000個=500万円
@100円×25,000個=250万円

結果、10万円のプラスになります。

または固定費Fを140万円削減するという方法もありますし、販売単価Pをあげる、原価単価Qを下げるという方法もあります。

事業が置かれている状況によって違いますが、何をいくら増やしたら減らしたら利益がどうなるかをMQ会計で考えることができますので、どうしたら儲かるかの正しい地図を手に入れることができます。



MQ会計についてはこちら。

【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう

【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!

http://kigyo-jyuku.asia/1293/zaimu-merumaga81-mq-example/

道筋

編集後記

前回に引き続き原価と変動費の違いについてご説明させていただきました。
経費を原価と販売費及び一般管理費にわけるか、変動費と固定費にわけるかで数字から見えてくる分析が全然違ってくることがわかっていただけたのではないかと思います。

とても大事なことでしたので、なんども繰り返しご説明させていただきました。

中小企業は税務申告の基準に合わせて会計をするので、原価と販売費及び一般管理費にわけているのが通常です。

ですので、会計を経営に活かそうとしたら、変動費と固定費にわけるという一工夫が必要です。

更に細かいことをいえば、売上や変動費を合計でみるのではなく、商品、サービス別など細分化してみることが必要となります。

会計が経営に活かせるように自社の数字を設計してみてください。
これを管理会計といいます。
管理会計には厳密なルールがありませんので、経営者やスタッフが見たい数字がみれるような管理会計を導入していきましょう。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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