【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう

読了時間目安:約 13分10秒

利益感度分析という言葉は聞いたことあるでしょうか?
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、この利益感度分析を使うと、どこを改善すると利益がどのくらい改善するかが一目瞭然でわかります。

同じ10%削減の努力をしても利益に与える影響は、その事業の構造によって変わってきます。
自身の事業にとって何が経営改善の最善の一手なのかを利益感度分析で分析してみましょう。


今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。

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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう』です。(編集前のメルマガは2015年11月4日(水)に配信されています)

経営改善を例題で考えてみましょう

例えば、こんな会社があるとしましょう。

200円の商品を仕入れて、1,000円で売ります。
そのために働いてもらう人のお給料やお店の家賃、その他水道光熱費や消耗品などの固定費が全部で100万かかるとします。

仮にこの会社が月に1,000個商品を売れたとしたら、損益はどうなるでしょうか?

例題を基に損益計算すると

売上高=1,000円(売上単価)×1,000個(数量)=100万円
仕入高=200円(仕入単価)×1,000個(数量)=20万円
粗利益額=100万円(売上高)ー20万円(仕入高)=80万円
固定費=90万円
経常損益=80万円(粗利益額)ー90万円(固定費)=▲10万円
(注:営業損益と経常損益は便宜上同じとします)

事業を改善する5つの方法

さて、この事業を黒字にしようとしたら、どういう方法があるでしょうか?

前回の復習ですが、前回と前々回で、
①お客様単価をあげる
②お客様数を増やす
③原価を下げる
④固定費を減らす
⑤返済額を減らす
の5つが事業改善の方法だとお伝えしました。

具体的な方法についてはこちら。
【VOL78】事業の明るい未来を作るための財務数値の5つを使った経営改善方法

今回は損益の話ですので、「⑤の返済額を減らす」は割愛します。

10%ずつ改善したらどの方法が一番利益が改善するのか?

すべての方法をそれぞれ10%改善したらどうなるのかをシミュレーションしてみましょう。

お客様単価を10%あげる

1,000円がお客様単価ですから、1,100円になるということですね。

売上高=1,100円(お客様単価)×1,000個(数量)=110万円
仕入高=200円(仕入単価)×1,000個(数量)=20万円
粗利益額=110万円(売上高)ー20万円(仕入高)=90万円
固定費=90万円
経常損益=90万円(粗利益額)ー90万円(固定費)=+ー0万円

結果、▲10万円から+10万円の改善で損益0ととなりました。

お客様数を10%増やす

1,000人が数量(=お客様数)ですから、1,100人に増やすということになりますね。

売上高=1,000円(お客様単価)×1,100個(数量)=110万円
仕入高=200円(仕入単価)×1,100個(数量)=22万円
粗利益額=110万(売上高)ー22万円(仕入高)=88万円
固定費=90万円
経常損益=88万円(粗利益額)ー90万円(固定費)=▲2万円

結果、▲10万円から+8万円の改善で、損益▲2万円となりました。

※単価アップと数量アップでどっちが儲かるかの理屈はこちらを参考に。
【VOL7】どっちが儲かる?販売単価アップと販売数量アップ?(メルマガ版財務講座)

原価を10%下げる

仕入単価が200円ですので、10%下げると180円となります。

売上高=1,000円(お客様単価)×1,000個(数量)=100万円
仕入高=180円(仕入高)×1,000個(数量)=18万円
粗利益額=100万円(売上高)ー18万円(仕入高)=82万円
経常損益=82万円(粗利益額)ー90万円(固定費)=▲8万円

結果、▲10万円から+2万円の改善で、損益▲8万円となりました。

固定費を10%下げる

固定費は90万円ですので、10%下げると81万円となります。

売上高=1,000円(お客様単価)×1,000個(数量)=100万円
仕入高=200円(仕入高)×1,000個(数量)=20万円
粗利益額=100万円(売上高)ー20万円(仕入高)=80万円
経常損益=80万円(粗利益額)ー81万円(固定費)=▲1万円

結果、▲10万円から+9万円の改善で、損益▲1万円となりました。

利益構造によって利益感度は違う

いかがだったでしょうか?
同じ10%の努力でも、損益に与える影響はこんなにも違うのです。

上記の会社であれば、①お客様単価の改善(+10万円)、②固定費削減(+9万円)、③お客様数(数量)アップ(+8万円)、④原価の削減(+2万円)という順で利益に与える影響が変わってきます。

しかし、原価率の高い会社で、950円で買ってきて、1,000円で売っているとしたら、原価を10%削減すれば9万5千円の改善になります。

つまり、2番目に有効な改善策となるのです。

また、固定費の大きい会社、例えば固定費が110万円かかっているような会社であれば、固定費を10%削減すれば、利益は11万改善することになるので、有効な改善策1位になります。

もっとも、利益に与える影響力という話であり、実際の改善ではやり易い改善からしていくのが鉄則とはなりますが…

しかし、この利益感度を知っておけば、改善はもちろん、経営成績がどうしたら悪化しやすいかがわかるので、安易な値引きなどはしなくなるのではないかと思います。

【VOL9】その値引きちょっと待ってください。これだけは覚えておきたい、値引きのルール(メルマガ版財務講座)

利益感度分析とは?

とはいえ、自分の事業に与える影響がどこがどのくらい大きいのか把握するのは大変です。

そこで編み出されたのが、利益感度分析です。

ここから、少し難しくなりますので、もし混乱しそうな方は、ここまでにして逆にここまでのことをしっかり理解して下さい。

上記例題で、経常損益を5万にするためにはどうしたら良いか考えてみましょう。

お客様単価をあげる場合

5万円(目標経常利益)+90万円(固定費)=95万円(必要粗利益額)
仕入単価(200円)と仕入数量(1,000個)は変わりませんから、20万円です。
95万円(必要粗利益額)+20万円(仕入高)=115万円(必要売上高)
数量(=お客様数)は変わらず1,000個ですから、
115万円(必要売上高)÷1,000個(数量)=1,150円(必要お客様単価)

つまり、1,150円で商品を販売すれば良いという道筋がわかります。(実現可能かは置いておいて)

1,150円÷1,000円=115%となります。(15%単価をアップさせる必要があるということですね)

つまり利益感度は15%です。

数量を増やす場合

5万円(目標経常利益)+90万円(固定費)=95万円(必要粗利益額)
販売数量が増えれば、仕入数量も増えるので注意が必要です。

200円で仕入れて1,000円で売っているということは、粗利益率80%です

95万円(必要粗利益額)÷80%=1,187,500円(必要売上高)
1,187,500円(必要売上高)÷1,000円(お客様単価)=1,187.5個(販売数量)
となります。

ここから検算、
結果仕入高は、
200円(仕入単価)×1,187.5個(販売数量=仕入数量)=237,500円(仕入高)

1,187,500円(必要売上高)ー237,500円(仕入高)=95万円

検算結果が必要粗利益額と一致したので、数量が1,187.5個売れれば良いということがわかりました。

1,187.5個÷1,000個=118.75%となります。(18.75%数量を増やす必要があるということです)

つまり利益感度は18.75%です。

仕入単価を下げる場合

5万円(目標経常利益)+90万円(固定費)=95万円(必要粗利益額)
今度は逆に、お客様単価(1,000円)と数量(1,000個)は変わりませんから、100万円です。
100万円(売上高)ー95万円(必要粗利益額)=5万円(仕入高)

数量(=お客様数)は変わらず1,000個ですから、
5万円(仕入高)÷1,000個(数量)=50円(必要お客様単価)

つまり、50円で商品を仕入れれば良いという道筋がわかります。(同じく実現可能かは置いておいて)

50円÷200円=25%となります。(75%原価を削減する必要があるということです。)

つまり、利益感度は75%です。(100%ー25%)

固定費を下げる場合

売上高は、お客様単価(1,000円)と数量(1,000個)は変わりませんから、100万円です。
そして仕入高も、仕入単価(200円)と数量(1,000個)は変わりませんので、20万円です。

つまり粗利益額も変わらず、100万円(売上高)ー20万円(仕入高)=80万円(粗利益額)

その上で経常利益は5万円にしたいので、

80万円(粗利益額)ー5万円(必要経常利益)=75万円(目標固定費)

ですので、固定費を75万円に抑える必要があるということです。

75万円÷90万円=83.3%(16.7%固定費を削減する必要があるということです。)

つまり、利益感度は16.7%です。(100%ー83.3%)

利益を測る目盛り

編集後記

利益感度分析についてはわかったでしょうか?

%が小さいほど、自分の事業の利益に与える影響が大きいということになります。

業種業態によって違うので、まずは自分の会社を分析してみて下さい。(厳密には利益構造によって違います)

今回のお話がわかりずらかったかたは、利益が見える戦略MQ会計という本をぜひ読んでみて下さい。
図もありますし、他の基本的な部分からの説明もあるので、理解しやすいと思います。

現実の経営では、単価をあげれば数量が下がる、数量を売るためには単価を下げなければ、固定費を下げると販売数量が落ちるなどの相関関係があるため、簡単にはいかないと思います。

また、どれか1つだけをやることもないと思います。

具体例をを見ながら考え実行しながら改善していきましょう。

ただ、利益感度分析のやり方を応用すれば、実際に単価アップや数量、固定費の削減などの目標が数字で見えるようになります。

経営において数字はやはり大切です。

漠然と単価をあげてみたり、固定費を下げてみたり、行き当たりばったりの計画ではいけません。

計画通りにはもちろんいきませんが、計画を数字で立てることは重要です。

次回はMQ会計をご説明し、その後にMQ会計を使った利益計画の作り方をご説明します。


最後に

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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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