罠

会計が難しい原因の1つに減価償却費への理解と借入金の返済が経費にならない点があります。
減価償却費と借入金が理解できないために、正しい経営ができない中小企業が少なくないのが現実です。
今回はもっともひっかりやすい減価償却費と借入金について説明していきます。

今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で配信している内容です。

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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『ひっかりやすい会計の罠!?減価償却期間と借入期間の関係性』です。(編集前のメルマガは2016年2月17日(水)に配信されています)

減価償却費が1年で経費にならない理由

建物や車などの資産を買った時に1年で経費にならない理由は、その建物や車などの資産を1年で使い切るわけではないからです。

建物や車などを何年にもわたって使って事業を行い利益を出すことが経営の目的なので、1年の経費とはなりません。

また、別の観点として、建物も車などの資産は買って1年使ったからといって価値がゼロになるわけではありません。
使っていると徐々に価値が低下していくという考え方をします。

車の下取り価格などがわかりやすいかと思いますが、乗って1年目と5年目では下取り価格が違います。

それを会計上は減価償却として価値の現象を経費にしていこうということになっています。

その価値の現象期間を経営者の任意に任せてしまうと、今年は利益が出ているから車は2年で償却、でも今年は利益が出ていないから10年で償却など利益を操作することができてしまうので、法定耐用年数というのが決まっています。

例えば、建物の木造建設だったら◯年、鉄筋だったら◯年という感じです。

※ただし10万円未満の資産(中小企業の特例では30万未満の資産)については重要性の原則から少額と見なされ、その年の経費とすることができます。詳しくは税理士さん、または、税務署の方に聞いてみてください。

以前、減価償却費について解説した記事はこちら
【VOL2】減価償却費に代表される会計の罠にひっかからないように気をつけましょう!(メルマガ版財務講座)

借入金の返済が経費にならない理由

借入金は金融機関から借りたときに収益になりません。

仮に5,000万円が運転資金として必要だから金融機関から借りたのに、仮に40%の税金がかかって、2,000万円が納税になったら意味がありませんよね?

また、企業が親族や経営者本人からお金を借りても収益にはなりませんし、誰かにお金を貸しても費用にはなりません。

お金の貸し借りについては、基本的には損益計算には関係ないということです。

例外は相手が倒産して貸したお金が返ってこないケースや、借りた相手が返さなくていいよと伝えてくるなどの債務免除などがあった場合のみです。

お金の収支と損益が一致しないのが会計の難しい1番の理由

減価償却費と借入の話はなんとなくご理解いただけたと思います。
しかし、納得がいくのと、会計資料が見にくいのは別問題です。

なぜ会計資料が見にくいかというと、会計の資料はお金の収支を表していないからです。

この問題は減価償却費と借入の問題だけではなく、売上が入金のタイミングではなく、基本的には商品の引き渡しやサービスを提供したタイミングで認識されることでもわかるかと思います。

理屈で考えれば、確かに7月に商品を100万円分引き渡し、更に8月に200万円分引き渡したのであれば、7月と8月に売上が計上されるのはわかると思います。
それがたまたま入金が10月にまとめてであっても全部10月の売上になってしまったら、7月と8月は経費だけで、10月は何もしていないのに利益が出ていることになってしまいます。

入金の日を変えるだけで利益調整もできてしまうため認められていません。

しかし、だからこそ損益計算書だけを見ても経営がわからなくなってしまうのも事実です。

損益計算書、貸借対照表、資金繰り表、キャッシュフロー計算書、それぞれが何を表す指標なのかを勉強し、きちんと読める力が経営者には必要となります。

過去のメルマガで解説していますので読んでみてください。
例えば、
【VOL65】キャッシュフロー計算書と資金繰り表を経営に活かす方法

減価償却費と借入の返済年数に注意しなければいけない理由

例えば、一般的な車両の耐用年数は6年です。
国税局のホームページより)
※車両の減価償却費は法人は定率法、個人は定額法が一般的ですが、話をわかりやすくするために今回は定額法で説明します。

その車が300万円するとしましょう。

前回のメルマガで借入金は利益の前倒しとお伝えしました。
【VOL93】借入をすると事業の成長は加速する??借入を上手に利用して効率的な経営を。

年に100万円の税引後利益が出ている会社であれば、3年で購入できると考えるのが普通かと思います。

つまり、3年で300万円借りれば返済できるはずです。

車の耐用年数は6年ですから、年の減価償却費は50万円です。(300万円÷6年)
一方、借入は3年返済ですから、年の返済額は100万円です。(300万円÷3年)

一方、税率をわかりやすく仮に40%とすると、100万円の税引き後利益がでるということは約166万円の税引き前利益がでていることとなります。

つまり、

166万円-減価償却費50万円=116万円

116万円×40%=約46万円

116万円−46万円+50万円(減価償却費)=120万円

120万円-100万円(返済)=20万円

そうです、借入をせずにお金を貯めようとしたら、3年たって車を買ったら3年分の貯蓄(100万円×3年)はなくなってしまいますが、借入をしたら車購入資金を返済しても3年で60万貯められることとなります(20万円×3年)

ここまでは前回の【VOL93】借入をすると事業の成長は加速する??借入を上手に利用して効率的な経営を。の復讐に近いかもしれません。

でも、3年後に手元に60万円あるのであれば、事業に再投資することができ、更なる事業の成長にお金を使えるのは紛れも無い事実です。

投資による利益で返済をしようとするときの注意点

しかし、多くの経営者は、車を300万円で買ったら、車を使って300万円以上の利益を出そうとするのが普通だと思います。
仮に3年で300万円の借入をするのであれば、年100万は稼がなければいけません。
というよりは、年100万円を稼げる算段があるからこそ、借入をして投資をするわけです。

借入期間3年の場合の必要利益

利益はいくら必要でしょか?

減価償却費+税引き後利益=返済原資ですから、借入期間3年であれば300万円÷3年で年100万円の返済となります。

車の減価償却期間は6年で300万円÷3年=年50万円です。(簡便的に定額法を使っています)

返済100万円ー減価償却費50万円=税引き後利益50万円

税引き後利益50万円÷(100%-法人税率40%)=約83万円

つまり税引き前利益で83万円必要となります。

借入期間5年の場合の必要利益

同じ計算をしてみましょう。

借入の返済額=300万円÷5年=60万円

返済60万円ー減価償却費50万円=税引き後利益10万円

税引後利益10万円÷60%(100%-40%)=約16万円

つまり税引き前利益で16万円が必要となります。

借入期間7年の場合の必要利益

また同様に計算します。

借入の返済額=300万円÷7年=約42万円

返済42万円ー減価償却費50万円=税引き後利益▲8万円。

つまり赤字の8万円でも返済ができるということになります。

ここが会計の落し穴

上記の例を聞いて、

3年なら83万円
5年なら16万円
7年なら▲8万円

100万円稼げると思って借りているんだから思ったより少なくて安心したなーと思った方は会計の罠に大きくハマっている可能性が高いです。

車両を買って、減価償却費を計算した上で100万円儲かると考えたでしょうか?

減価償却費も加味して利益が100万円でると考えた方は何も心配ありません。
この先を読む必要がありません。

しかし、減価償却費を加味せずに考えた方は…

この先を読み進めてください。

減価償却費を加味した利益が上記のようにならなければいけないので、減価償却費を抜きにするなら

3年:83万円+50万円=113万円
5年:16万円+50万円=66万円
7年:▲8万円+50万円=42万円

となります。つまり3年で借りた人は資金ショートする可能性が高くなります。

100万円ー減価償却費50万円=税引き前利益50万円

税引き前利益50万円×税率40%=税金20万円

税引き前利益50万円ー税金20万円=税引き後利益30万円

税引き後利益30万円+減価償却費50万円ー返済100万円=▲20万円

つまり、毎年20万円ずつ不足していくこととなりますね。

編集後記

少し難しい部分もあったかもしれませんが、お金を投資して利益を出すという事業をする経営者であれば最低限わかっていただきたい内容になります。
これがわかっていないがために、借金だらけになって事業がニッチもサッチもいかなくなってしまう経営者が多数います。

事業は本来、お客様に喜ばれるためにやるはずにも関わらず、金融機関の返済のために事業をしなければいけない状況になってしまいます。

そういう状況にならないためにも、最低限必要な財務や会計のことは知っておいてほしいと思っています。

事業計画作成ツール

参考までに


最後に

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