貸借対照表は経営者の経営方針が顕著に現れる指標です。
貸借対照表は何を読み取る指標なのかを書きました。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。
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今回は『中小企業は貸借対照表の傾向で経営者の経営方針がわかります。』です。(編集前のメルマガは2015年4月8日(水)に配信されています)
この記事の目次
貸借対照表から読み取れる数字
まず、最初に貸借対照表はとても難しいので、簡単にわかるものではないということをお伝えしておきます。
大事なのは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、資金繰り表、株主資本等変動計算書などなど、たくさんある財務諸表がそれぞれ何を見るための表なのかというのを抑えるとともに、それぞれの表のつながりをなんとなくわかることが大事です。
その上で、貸借対照表はお金をどこから調達してきたのか、そして何に運用しているかを見る表だと思って頂ければ理解しやすいと思います。
前回の内容を読んで頂くと、調達と運用の意味がよくわかるかと思います。
http://kigyo-jyuku.asia/544/zaimu-merumaga48-basic-bs/
貸借対照表は資金繰りを見る表ではない
よく貸借対照表をみて、流動資産が流動負債の2倍あるから安心だと言うことがありますが、ある意味では大きな間違いですので、気をつけて頂ければと思います。
流動資産とは、現金預金と1年以内に現金預金になるものを言い、流動負債とは、1年以内に支払をする債務のことを言います。
つまり、流動資産とは現金預金と受取手形や売掛金などの債権、流動負債とは支払手形と買掛金などの負債のことを言います。
さて、ここに現金預金50万円、受取手形100万円、売掛金50万円、買掛金100万円の会社があったとしましょう。
流動資産は現金預金50万円+受取手形100万円+売掛金50万円で200万円です。一方流動負債は買掛金100万円です。
流動資産が流動負債の2倍あり安定した企業のように見えますが、支払が1ヶ月後、入金が3ヶ月後だったとすると、資金ショートしてしまいます。
何が言いたいかというと、貸借対照表は資金繰りを見る表ではないということです。
どんな貸借対照表を見るプロでも、貸借対照表だけで来月の資金繰りはわかりません。
貸借対照表でみるべきポイント
貸借対照表で見るべき点は、どういう方法で資金を調達していて、どういう資産に資金を運用しているのか、そしてそのバランスです。
例えば1,000万円の資金を調達していても、800万円が借入=負債で調達している会社と、200万円しか借りていない会社では意味は全然違うということになります。
また、その1,000万円を現金預金として500万円残し残りを運用に回会社と、100万円しか残さず900万円を運用に回す会社では全然違います。
更に言えば、その運用も、土地や建物、車などの資産価値のあるものに運用する人と、売掛金が回収できずに残ってしまっている会社では意味は全然違ってきます。
こんなところから社長の性格はわかります
ここにどんな業種の商売をしているかが加われば、社長の性格はほぼわかります。
例えば塾などで前金の商売をやっているのに売掛金が多い会社な社長は、売掛金の管理もできないような良い加減な性格でしょうし、車にお金をたくさん運用していれば見栄っ張りな性格だと考えて良いでしょう。
塾を運営するのに借金して自社ビルでやるか、借金せずに賃貸でやるか、このあたりにも社長の性格がでてきます。(どちらが良いとか悪いとかではなく)
これを自己資金で自社ビルを建てていたら、貯蓄家であるということですね笑
そういう目線で貸借対照表を見ていくと面白いと思いませんか?
中小企業では特に貸借対照表に経営者の傾向が現れます
中小企業では長い間同じ人が社長をやる傾向があります。
そして大企業でも中小企業でも一般社員にお金の調達方法や資金の運用先まで相談する経営陣はほとんどいません。
つまり、中小企業の場合はほとんど社長が考え決めているので、貸借対照表の数字に性格が出てくるわけです。(先代がいて引き継いで短いと先代の性格ですが…)
一度そういう目線で貸借対照表を眺めて頂けたらと思います。
とは言っても、いくら性格だからと言っても、貸借対照表は金融機関がお金を貸す時に審査する1つの指標にもなりますし、性格に任せていて良い貸借対照表にはなりません。
次回は、貸借対照表の目安になる数字や率についてお話させて頂きます。