【VOL105】将来への投資という名の浪費をしていませんか?

読了時間目安:約 16分7秒

利益が出ていない会社ほど、今は将来の投資の時期だからという発言をすることがあります。
利益が出ている会社の経営者は、「投資というのは、利益を出しながらしなければいけない」ということをしっかりとわかっています。
赤字の会社の経営者となると、浪費を投資だと自分に無理矢理言い聞かせいることすらあります。

今回は投資して良い金額の目安を交えながら、投資と浪費の話を書いていきます。



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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

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今回は『将来への投資という名の浪費をしていませんか?』です。(編集前のメルマガは2016年5月4日(水)に配信されています)

投資と浪費と消費

家計の話でも聞く話なので聞いたことがある方も多いかもしれません。

バランスや節約を主とする家計と、粗利益額の拡大を目指す事業では違う部分は違いますが、事業の経費にもこの3つ、投資、浪費、消費に分類することができます。

代表的な、「投資」に分類される経費

まずは広告宣伝費や研究開発費などで、お客様数を増やすために先行してつかう経費や、商品やサービスの改善や向上に使う経費があげられます。

次に、新卒の採用をはじめとした人の教育費用などがあげられます。

代表的な、「消費」に分類される経費

会計用語では管理費に分類されているものになります。

例えば地代家賃、水道光熱費、税理士への顧問料など、無いと事業が成り立たない経費をいいます。

また、経理や総務に代表される間接部門の人件費なども、ここに入ります。

代表的な、「浪費」に分類される経費

代表的なものは「交際費」です。
交際費といっても経営者の飲み代やゴルフなどを指し、営業先への手土産などはカウントしません。

これは冗費などと呼ばれ、冗談のような経費だから冗費という名前がついたという嘘のような本当の話もあるくらいです。

実は投資・消費・浪費に分類するのは難しい

交際費だって立派な投資だ!と思っている経営者も多いのではないでしょうか?
コミュニケーションの回数を増やし、本音も出やすい飲み会に参加することで、将来仕事をもらえることもあるんだと。

その通りですよね。
私も人と会うことが仕事だと思っていますので、交際費は投資として捉えています。

また、業種によっては、立派な本社を持つことでイメージが高まり仕事が増えるのだから、地代家賃は消費ではなく、高い分は投資だと思う方もいらっしゃるでしょう。

そうなんです、実は厳格に分類するのは非常に難しいのです。

その理由の1つに会計で無理矢理決められた勘定科目毎に分類しようとしているという理由があげられます。

交際費でも誰と飲んだのかによって、投資か消費か浪費かは違います。

新しい取引になりそうな飲み会であれば「投資」ですし、断ると険悪になりそうなケースの飲み会であれば「消費」ですし、飲みに行っても行かなくても仕事に支障がでないような飲み会であれば「浪費」です。

家賃にも同様のことが言えます。
イメージを良くするために高くなってしまった家賃部分は「投資」であり、通常でもかかるであろう部分は消費になります。

浪費を投資と言い張るケース

少し実例を交えながら、浪費と投資について書いていきます。

ケース1:スポーツジムの経費が投資だと言い張るケース

バカバカしい、経営者のみしかジムに入ってなければ個人の支出だから投資か浪費かの前に、事業の経費にはならないだろう・・・と思った方、正解です。

このケースは社員全員で入っていたので、福利厚生費になっていたのですが、社長を除いて、社員は1人もジムに行くことはありませんでした。

しかし、ジムの会費だけは毎月毎月支払われていきます。

なぜジムの会費を払っていたのか、実はジムの経営者と知り合い新規の取引が始まるタイミングでジムに入会したのです。

ですので、その時点ではジムの会費は新規取引を引き出すための投資と捉えても問題なかったと思います。
また、社員満足を高めるためにジムという福利厚生をつけることを目的にしていたなら投資でも良かったと思います。

しかし、取引は1度きりで終わり、社員もジムにいっていないのですから、投資は失敗に終わったといっても過言ではない状況でした。

それでもいつか仕事がくるから投資として必要な経費なのだと頑なに主張し、週に1回か2回はジムへ行き、ジムの後の飲み会の経費まで経費にしていました。

最終的には1年継続した段階で投資の回収の見込みが具体的にどうあるのかを聞き、具体的なストーリーがなかったので、それ以降に関しては、そこまで自信があるのであれば、自腹で払い、本当にその会社から仕事をもらえるたら、その段階で自腹分を返金する形にしましょうと言う話になり、会社の経費で出さなくなった段階で、自然と経営者はジムはもちろん、その仲間たちとの飲み会もなくなりました。

ケース2:全く集客できない広告宣伝費を投資だと主張する経営者

代表的なインターネット広告であるリスティング広告に何百万もお金を使っていた会社の話です。

結果は酷いもので、リスティング広告経由でその会社へ商品の注文や問い合わせは、1件もきませんでした。(Google Analytics調べ)
リスティング経由以外での注文や問い合わせが合ったことが話をややこしくしたのですが、「直接の問い合わせ出て来ていないが、認知に役立っている」と主張する経営者。

普通であれば効果のない広告宣伝費は辞めるべきですが、認知効果がありそれがブランディングになっている、だから投資なんだと主張されてしまっては効果がないとは言えません。

しかしGoogle Analyticsは広告のクリック数も見ることができます。
広告からのクリック数も全体の1%未満。

それでも、検索した時にトップに出てくることでクリックはされなくても名前を見るはずだから認知されている、そして、その後うちの名前で検索して商品を注文してくるはずだから、広告を辞めたら売上は激減すると主張する経営者。

確かに広告を見てすぐに反応はしなくても、「はじめてのア◯ム」という消費者金融のCMじゃありませんが、潜在意識に残るのは確かです。

しかし、その会社の規模で大手企業と同様のイメージ戦略や露出を増やすことでのブランディングは資金的に無理。

現実的に、1,000万円の売上があったとしたら▲200万円の損失、そしてその広告宣伝での経費が400万円かかっているという感じでした。(イメージなので実際の数値とは違います)

広告を辞めなければ200万円の赤字を出し続け近いうちに資金ショートが見えてきていました。
一方、広告を辞めれば売上がどのくらい下がるかはわかりませんが、現状維持であれば200万円の利益がでます。

そこで提案したのは、いったん広告宣伝を辞めてみましょうという提案でした。
で、売上が下がったら借入をしてでも広告宣伝をしましょうと。

見事に売上は下がらず広告宣伝費分だけ利益がでるようになりました。(全く下がらずというのは予想外でしたが、1件も注文がないような広告を切っても大きく変化はないだろうという読みが見事にあたった感じです)

むしろ、その出た利益のうち、1/4を実際に注文や問い合わせにつながっている集客方法に投資するようにしたら売上は伸びるようになったくらいです。

何にお金を使う=投資するのか、そのための分析も含めてとても大事ですね。

ケース3:赤字を垂れ流し状態の経営を投資だと主張する経営者

おおよそ年商の1割が毎年赤字になる企業がありました。
1億の年商だとすると約1,000万円の赤字です。
5年ほど赤字が続いたのですが、何とか借入をすることで資金ショートせずにすんでいました。

半オーダーメイドの機械を作る会社だったのですが、とにかく営業が下手でした。
自信がないのか高値で売れない、製造工程の見込みを甘く見積もって予算オーバー、お客様からの修正が頻繁に入るという営業内容で、やればやるほど赤字が拡大するのではないかという状況でした。

根本的にオーダーメイドなのに、高価格で販売できない、製造工程の見積りができない、修正が入らないように事前の打ち合わせができないとなってしまうと利益がでるわけがありません。

パッケージ販売、テンプレート販売、既製品販売に切り替えることを提案しましたが、せっかくここまで頑張ってきたのに今更変えたくないとのことです。

確かに赤字だが、その時間とお金を投資してきたから、お客様ができて営業ノウハウもできてきた、これからが回収する時期だというのが社長の主張でした。

私からしたら、もう5年もやっているのに黒字化の見込みも立たず、具体的な戦略や戦術もない中で、頑張ればどうなると思って今まで通り経費を使い続けるというのは、投資ではなくて浪費なのではと思いました(最初のうちは投資だったと思いますが)

結局、赤字を垂れ流し同業他社に援助してもらう形でほぼ吸収され、事業形態の変更を余儀なくされました。

投資と浪費の違いは?

上記の事例を見ていただいても、投資なのか浪費なのかよくわからないものがたくさんあったかと思います。
明確な線引きは難しいと思います。

しかし、以下のように定義することが良いのではないかと思います。

投資の定義

「いくらの経費を使うことで、いくらのリターンがいつまでにあるだろうということを明確に他人に話すことができる」
納得してもらう必要は必ずしもありません。
自信を持って自分が話せるかが大切です。

また、投資に失敗はつきものです。
うまくいかなかったときには感情的にならず実績の数字をキチンと分析してみてください。

間違ってもケース2のように、注文や問い合わせをもらうことを目的に広告宣伝をし始めたのに、認知やブランディングに役立っているなどという抽象的なリターンに変えて自分を納得させてはいけません。

やってみた結果、認知やブランディングに役立っていると思うのであれば、いくらの投資をしてどの程度認知やブランディングに役立つ計算なのか数値などを使って明確に説明できなければ、投資とはいえません。

消費の定義

「払わなくて良いのであれば払いたくないが、払わなければいけない経費」
少し表現は悪いですが、地代家賃や水道光熱費などをイメージしていただければわかりやすいかと思います。

出来れば払いたくないが、必要で使っているのだから払います。という経費です。

使わせていただいているのだから喜んで払いましょう!というのが正しいのかもしれませんが、話をわかりやすくするためにご容赦ください。

浪費の定義

投資と消費以外のものです。
リターンが明確に説明できるわけではないし、払わなければいけないものでもないという経費です。

交際費でも飲み会やゴルフのうち、自分が正しいから何とか正当化するために円滑な人間関係を築くためになどといっているものです。

飲み会にいかなければ仕事がなくなってしまうのであれば消費ですが、行っても行かなくてもどっちでも良いもので将来のリターンが明確でないものが浪費です。

浪費は必ずしも悪ではない

事業は水ものです。
何も期待せずに行った飲み会で大きな仕事につながることもあるでしょう。
付き合いで出した広告が大当たりすることもあります。

なので、これは浪費だから絶対に使わないというのが必ずしも正しいわけではありません。
浪費ということを理解して、月にいくらまでなどという予算や計画をもってすれば良いのです。

大事なのは全体バランスです。
赤字なのに浪費の予算が高いなんていうのは論外です・・・

いくらまで投資・浪費をして良いのか?

一般的には粗利益額の15%までと言われています。
1つの目安として覚えておいてください。

ただ、業種業態はもちろん企業の財務体質や利益構造によって変わってきます。

目安は、損益分岐点比率が80%〜90%程度になるくらいまでの投資です。
90%を超えるほど投資をしてはいけません。

もう1つは手元現金預金が安心手元資金を超えているのであれば、超えた分は思い切って投資できます。

安心手元資金とは?
【VOL21】最低必要手元資金とは?長期事業計画の立て方:数値編-資金(メルマガ版財務講座)

いざという時のためにとってあるお金も必要以上に持つ必要はありません。

一番怖いのは、商品開発やサービス向上、時代の変化への対応、人材教育、その他の投資を怠ることで、会社や事業が徐々に衰退することです。

今の時代は現状維持は衰退です。
【VOL101】事業(企業)はなぜ成長し続けなければいけないのか?

継続する企業、変化に対応できる企業を目指すことこそこそ企業の使命です。

その結果、お客様はもちろん、働く社員やスタッフが安心して自社の商品やサービスを購入してくれるのです。

経理の女性

編集後記

今までとは少し趣きを変えて自分の経験談や意見を入れて書いてみました。
今後メルマガはこういう形式のものも増やしていこうと思っております。

読んでいただいて、投資、消費、浪費の違いはなんとなくわかったけど、どうやって区別して管理したら良いのか?とか、投資と浪費の限度額は損益分岐点90%までが限度って書いてあるけど、そもそもそれを超えてしまっている会社は投資や浪費はするなってことなのか?などの疑問があるのではないかと思います。

気になる方はぜひご質問ください。
コメント欄でも構いませんし、直接メールや問い合わせフォームからのご連絡でも大丈夫です。

機会があればこのメルマガでもご紹介致します。


最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
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※免責事項

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◯内容に関しては万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。
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この記事を書いた人

吉田 和矢 Kazuya Yoshida
経営ナビの運営者であり、合同会社Belinkの代表社員。 また、株式会社VARIEの取締役&CFOとYOGAsalonひよこの共同経営者を兼任。 なんだかんだで前職時代を含めると、財務を中心に中小企業のコンサルを丸9年行っており、今年が10年目です。 詳しいプロフィールはこちら→経営ナビの運営者

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