今回は前回のかっぱ寿司の財務分析に引き続き、スシローの財務分析を【VOL66】企業の経営状態がわかる4つの見るべき財務上の数字に基づいてしていきます。
行き当たりばったりな企画の第2回目ですが、3回にわたって回転寿司で有名な「かっぱ寿司、スシロー、くら寿司」の財務分析をします。(最後に比較とか出来たら良いなと思っていますが…)
本来は3年分程度比較し、会計基準の違いも読み込んで分析しなければいけないので、事実とは異なる部分もありますが、あくまで今までお伝えしてきた数字の読み方の実践編ということで、ご了承いただけたら幸いです。
今回はスシローという名称で親しまれている「株式会社あきんどスシロー」についてです。
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今回は『上場企業の財務分析:スシロー』です。(編集前のメルマガは2015年8月19日(水)に配信されています)
この記事の目次
スシローのIR情報
平成24年9月期の数字を使って分析していきましょう。
上場企業の財務の数字はIR情報として企業のホームページ等に出ていますので、「企業名 IR」等でGoogleで調べるとすぐに出てきます。
※スシローのIR情報は25年3月期のものしか見つからず、この期は7月31日〜3月31日までの約8ヶ月の決算書でしたので、1年前の平成23年10月31日〜平成24年3月31日のものを使用します。
この辺の詳細を知りたい方はWikipediaをご覧下さい。
平成21年に上場廃止しています。
以下、平成24年9月期の株式会社の商人スシローの有価証券報告書より。
スシローの重要指標
平成24年9月期(連結決算の数値)
売上高・・・・・約1,113億
粗利益額・・・・約559億
営業利益・・・・約64億
経常利益・・・・約66億
当期純利益・・・約0億
減価償却費・・・約?億(販売費及び一般管理費の明細が公開されていないため不明)
総資産・・・・・約245億
純資産・・・・・約110億
有利子負債・・・約177億(他に関係会社短期借入金150億有り)
スシローの総資本経常利益率は?
経常利益(約66億)÷総資産(約245億)=約26.9%
理想は10%ですから、倍以上稼げていますので、非常に優秀といえます。
かっぱ寿司の約2.2%と比較しても非常に効率の良い経営をしていることがわかりますね。
ただし、かっぱ寿司は連結決算(関連会社を全部含む)とスシローは単独決算(関連会社を含まない)ものですので、単純比較はできないのでご注意ください。
スシローの償還年数は?
本来は税引き後利益で計算したいのですが、スシローの税引き後利益はゼロな上に、減価償却費が不明なため簡易的に経常利益のみで計算したいと思います。
有利子負債は、短期借入金、長期借入金、1年以内返済長期借入金、リース債務をいれていますが、スシローの場合にはリース債務しかありませんでした。(関連会社からの借入150億は除いております)
有利子負債(約177億)÷経常利益(約66億)=約2.6年
ちょっと簡易的すぎてなんともいえませんね…
関連会社からの借入は金融機関から関連会社が借りてきたお金を借りているのか、関連会社が儲けた利益から借りているのかも単独決算書からではわかりません(連結決算書ならわかります)し、減価償却費もわかりませんので…
ただ、関連会社からの借入を入れても約5年の償還年数です。
当然、建物を中心に有形固定資産が178億ありますので、減価償却費が当然あるはずです。
ですので、実際にはもっと償還年数は短くなるはずです。
10年未満が目安であることを考えれば借入金の返済に不安はないと見て良いと思います。
スシロー寿司の自己資本比率
純資産(約110億)÷総資産(約245億)=44.9%
50%は超えていませんが、50%まで後少しという数字です。
土地を持っていないこと(関連会社が持っているのか、借りているのかは調べていません)により総資産が少ないこと、資本金及び資本準備金等が85億と分厚いことが、自己資本比率が高い要因といえます。
利益の蓄積が約25億しかないことには留意が必要ですが、非常に優秀な自己資本比率といえます。
(実際には吸収合併等があった結果です。)
スシローの損益分岐点比率
100%ー(経常利益(約66億)÷粗利益額(約559億))=88.2%
理想は80%ですので、あと少しといったところです。
但し中小企業と違い、投資家や債権者保護の観点から、将来の負債、例えば退職給付引当金等もすべて会計基準に合わせて計上していますので、同じ視点では考えられませんが…
ちなみに粗利益率は粗利益額(約559億)÷売上高(約1,113億)=約50.2%です。
かっぱ寿司の56.1%から考えると約6%低い数字となっています。
スシローは原価率を高め(粗利益率を低くし)良い素材を安く提供しているとスシローが顧客満足度No1になった50の秘密 (扶桑社ムック)の中でも行っていますが、その数字がこの差なのでしょうか?
くら寿司約54.2%、スシロー約50.7%、元気寿司約59.1%などと比較してみても同様の回転寿司業界の中では低い数字であると言えます。
企業としてのこだわりなのかもしれませんが、かっぱ寿司と同様の粗利益率を目指して、粗利益率を6%高めることができれば67億利益が増えることとなります。(売上高1,113億×6%)
たらればの話ですが、そうなれば損益分岐点比率は約78.8%となり理想の水準となります。
(経常利益66億+67億=133億、粗利益額559億+67億=626億、133億÷626億×100%=21.2%、100%-21.2%=78.8%)
編集後記
平成24年9月期と古い題材でしたが、単純比較ではかっぱ寿司よりスシローのほうが収益力及び安全性ともに高いことがわかっていただけたのではないでしょうか?
債務償還年数は減価償却費が不明だったためわかりませんでしたが、自己資本比率及び損益分岐点比率の高さが企業の安全性と収益力を示しています。
また総資本経常利益率も高く効率の良い経営ができていることもわかるかと思います。
あくまで単独年度の財務分析で、本来であれば3年くらいの財務分析をしないと、表面だけとしても企業の正しい財務分析にはなりませんが…
経常利益の金額が財務分析の判定の大きな要素であることがわかっていただけたと思います。
ですので、その年に利益が出たか出ていないかで大きな違いが出てしまいます。
しかし、金融機関も3年程度の平均でほぼ同様でもっと詳細かつ多種多様な財務分析をしています。
いわゆる信用格付けというものですね。
自社の決算書もぜひそういう目線で見て日頃から準備していくことが大切です。
参考:金融機関(銀行)の融資審査の最大のポイント、信用格付けを徹底解剖