ランチェスター戦略では強者の戦略(第二法則)と弱者の戦略(第一法則)があります。
この弱者の戦略こそ、中小企業が参考にすべき企業戦略の一つであり、利益の出ている中小企業が多かれ少なかれ取り入れている考え方です。
しかし、このランチェスター戦略における強者と弱者の定義を間違えると大変なことになります。
今回はランチェスター戦略における強者と弱者の定義についてご説明させて頂きます。
前回の内容はこちら
→ランチェスター戦略に学ぶ中小企業の営業戦略:基礎編
この記事の目次
ランチェスター戦略における強者と弱者の決め方
ランチェスター戦略においては市場占有率が1位の企業のみを強者と呼びます。
ですので、企業の従業員数がどんなに多くても、資本金がどれだけ多くても、それだけでは強者とはなりません。
つまり、トヨタも日産もマツダもホンダも自動車業界では大企業と呼べますが、ランチェスター戦略においては、市場占有率が1位の企業のトヨタのみが強者と呼ばれます。
※市場占有率とは・・・その業界で自社の商品がどれだけ売れているかの率をあらわすものです。例えば自動車を1億人の人が買うと仮定したとき、3,000万人が自社の商品を勝ってくれて入れば、市場占有率30%となります。
ランチェスター戦略における市場占有率の目安
ランチェスター戦略では、単に市場占有率が1位であればそれだけで安心して良いとされているわけではありません。
また、市場占有率が低い企業に向けて市場の占有率の目標も掲げています。
ランチェスター戦略では、市場占有率1位の会社と2位以下の会社では、従業員1人あたりの年間経常利益が3倍〜6倍違うとしています。
その具体例として、各業界の1人あたりの年間経常利益を具体例として示しています。
2005年と少し古い資料ですが、例えば
1位:セブンイレブン・・・3,657万円
2位:ローソン・・・・・・1,365万円
約2.7倍
1位:花王・・・・・1,867万円
2位:ライオン・・・・215万円
約8.7倍
1位:アサヒビール・・・2,396万円
2位:キリンビール・・・1,228万円
約2倍
としています。(2005年7月の日経会社情報より抜粋)
上限目標値・・・市場占有率73.9%
圧倒的独占状態で、1社の追随も許さない、圧倒的な強者の状態です。
ただし、競争がない状態ですので、必ずしも安全とはいえないという落とし穴があります。
安定目標値・・・市場占有率41.7%
一般的な市場では首位独走状態といえる占有率といえます。
強者としての安定した地位を築くために目指す市場占有率の目安となります。
下限目標値・・・市場占有率26.1%
一般的な市場で、市場占有率1位をひとまず安定して保てる最低の率です。
これを下回るといつ1位の座を奪われるかわからない不安定な状態といえます。
これ以下は仮に市場占有率1位だとしてもランチェスター戦略上の「強者」とはよべません。
上位目標値・・・市場占有率19.3%
例え市場占有率1位だとしても、どんぐりの背比べ状態といえる状態です。
弱者の中の強者といえます。
影響目標値・・・市場占有率10.9%
市場全体に影響与えることができる最低の市場占有率です。
市場で頭角を表すことができ、本格的にシェア争いに参加したといえる規模です。
存在目標値・・・市場占有率6.8%
市場でその存在が知られるであろう最低の市場占有率です。
存在は知られるものの市場への影響力はほぼ無いに等しい存在といえます。
場合によっては、撤退判断の基準として使われることもある数値です。
拠点目標値・・・市場占有率2.8%
市場全体にその存在は知られてはいないに等しいが、進出の足がかりとなりうる数字です。
市場参入の際の最初の目標値として使うことができます。
逆転不可能な圧倒的1位
ランチェスター戦略において、市場占有率2位の企業の3倍の市場占有率を1位の企業が持っている場合を圧倒的な1位と呼びます。
「ランチェスター3:1の法則」とも呼ばれ、弱者の戦略で戦っても逆転不可能な数字と定義しています。
ちなみに強者の戦略の場合には、実際の実力に2乗した差がつくとされていますので、2位が弱者の戦略をとらず、強者の戦略を取ってきた場合には、3倍まで差をつける必要はなく、3の√は約1.7ですので、1.7倍の差がつけば逆転の可能性はなくなります。
ただし、弱者の戦略を取られたことも考えると強者は3倍の差をつけることを目標に、弱者は3倍の差がついている市場でなければ逆転可能と思ってビジネスをすることができるということです。
ランチェスターNO1戦略
上記で見ていただいたとおり、ランチェスター戦略においてのNO1とは、2位と3倍以上の市場占有率の差をつけた状態の圧倒的な1位のことをいいます。
このNO1になることがランチェスター戦略の最終目標の1つです。
難しいように思えますが、全てでNO1になる必要はなく、地域NO1、製品NO1、サービスNO1となんでも良いのでNO1になれば良いのです。
特に弱者はとにかくカテゴリーを細分化し、1位になれる分野を探してください。
「東京都新宿区の天然酵母で作ったパンをうっているパン屋ではNO1」
「東京都足立区西新井駅前のカレー屋が作るカレーパンではNO1」
などなど、なんでも良いので、まずは1位のものを見つけること、又は、作ることが大切です。
もちろん細分化すればするほど市場は小さいですが、その市場でNO1になり、その後拡大していくことが重要です。
編集後記
ランチェスター戦略ではどうやってNO1になるかいくつかの戦略が書かれています。
今回は大雑把に細分化と伝えましたが、実際には様々な戦略戦術がありますので、次回以降にご説明していきます。
中小企業の場合、このランチェスター戦略に基づいて事業展開している企業ほど利益が出ている傾向がありますので、ぜひ参考にしてみてください。