戦略

財務以外の数字を経営に活かすためのバランススコアカード(BSC)の導入・運用のためにも、社員・スタッフ教育のための人事評価制度の導入のためにも事業の明確な方針が必要となります。

バランススコアカード(BSC)の考え方では、ミッション・ビジョン・ストラテジー(戦略)となりますし、言葉の定義は曖昧ですが、ミッション・ビジョン・理念・戦略・戦術などとも言われます。

それを明確に文章化したものを経営計画書や経営方針書などと呼びます。

今回はバランススコアカードや人事評価制度を導入する前に絶対に明確にしておくべき、ミッション・ビジョン・理念、そして戦略・戦術についてお話させていただきます。

バランススコアカード(BSC)についてはこちら

【VOL112】バランススコアカードとは、財務以外の数字も業績評価に取り入れる方法

人事評価制度についてはこちら

【VOL113】中小企業の人材教育に人事評価制度が必要な理由

【VOL114】中小企業向け人事評価制度の具体的な作り方

経営計画書(経営理念書)についてはこちら
【VOL110】経営計画や事業計画は中小企業経営に必要なのか?

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『BSCや人事評価制度の導入前に絶対に必要な経営計画書(経営方針書)』です。(編集前のメルマガは2016年7月13日(水)に配信されています)

ミッション・ビジョン・理念の違い

ミッション・ビジョン・理念などの言葉があり、それぞれが同じような意味で使われたり、別の意味で使われたりややこしいのが現実です。

そして、ある会社の企業理念と同義の意味がミッションだったり、ある会社ではビジョンで掲げていることが、ある会社ではミッションだったりします。

ですので、これが正解ということではありませんが、当サイトでは言葉の定義をはっきりさせたいと思います。

ミッション=使命

事業や会社の存在理由であったり使命であったりを表します。
当サイトであれば、ミッションは「中小企業経営者にとって経営のナビゲーターになれるサイトになること」にあります。
※仮の話です。

「社員を幸せにする」でも良いですし、「IT革命」でも構いません。

ビジョン=未来像

ミッションを達成するために未来の事業や会社のあるべき姿を表現します。
当サイトであれば、「中小企業経営者が悩んだ時に真っ先にみるサイトになる」です。
※仮の話です。

「日本一のIT企業になる」でも良いですし、「全国に支店を展開する」でも構いません。

経営理念=あるべき姿

事業や会社の働く価値観や意味を示すものです。
当サイトであれば、「①無償または安価で情報発信をする、②無料でも読んでもらう方に価値のある情報を発信する」です。
※仮の話です。

「法令遵守」「仕事を通じて社会に貢献する」などでも構いません。

有名企業での事例

有名企業ではこんな感じです。
()内が当サイトで定義するミッション・ビジョン・理念であり、()外はその会社特有の言い回しです。
3つすべてが無い会社も当然あります。

ソフトバンク

【経営理念(ミッション)】
情報革命で人々を幸せに

【ビジョン(ビジョン)】
世界の人々から最も必要とされる企業グループ

【バリュー(経営理念)】
「努力って、楽しい。」 「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」

参照:ソフトバンクHP

楽天

【経営理念(ミッション)】
インターネット・サービスを通じて、人々と社会を“エンパワーメント”する

【行動指針(経営理念)】
楽天主義

参照:楽天HP

京セラ

【経営理念(ミッション)】
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。

【社是(経営理念)】
「敬天愛人」、常に公明正大、謙虚な心で仕事にあたり、天を敬い、人を愛し、仕事を愛し、会社を愛し、国を愛する心

参照:京セラHP

ニトリ

【ロマン(ミッション)】
住まいの豊かさを世界の人々に提供する

【ビジョン(ビジョン)】
第2期30年計画(2003年〜2032年) 以下HPには数字が並んでいます。

参照:ニトリHP

(追記:2016年11月4日現在、記事作成時に貼ったリンクとはページが変更になっています。)

戦略と戦術の違いとは?

バランススコアカードでいうストラテジーとは戦略のことです。
経営戦略の意味で、ミッションやビジョンを達成するための戦略のことを言いますが、多くのケースで戦略と戦術の区別が曖昧なケースがあります。

戦略の失敗は戦術では補えないと良い、戦略は戦術は戦争から言葉がきているため、局地的に戦術で戦争に勝てても、戦略的に負けていれば覆すことはできないのと同様に経営でも戦略が間違っていたら、戦術がどれだけ優れていても競争には勝てません。

経営をするためにはまず何が戦略で、何が戦術なのかを把握しておくことが重要です。
出来ていない人が多いからこそ、区別できるようになれば大きなメリットになります。

ランチェスター戦略では?

経営戦略を「戦略とは見えざるもの」と定義しています。
経営戦略とは、「経営目標を効果的に達成する全社的なやり方」、または「その知恵」になります。

一方で戦術を「戦術とは見えるもの」と解説しています。

どのエリアでどの競争相手と戦うかを決めるのは戦略、どうやって戦うかを決めるのは戦術というイメージです。

ランチェスター戦略を詳しく知りたい方は「ランチェスター経営」がわかる本―儲けのしくみ、教えます!という本がお勧めです。

また、こちらも参考にしてみてください。

ランチェスター戦略に学ぶ中小企業の営業戦略:基礎編

中小企業が参考にすべきランチェスター戦略における強者と弱者の違いとは?

ランチェスター戦略に基づく企業の資源配分の原則はお客様獲得に8割の資源を配分すること

ランチェスター戦略:強者の戦略5つの基本とは?

中小企業のためのランチェスター戦略:弱者の戦略の5つの基本と3つの重点項目

ランチェスター戦略は中小企業の経営にはバイブル的存在ですので、一度は学んでおくことをお勧めします。

経営に置き換えると?

何に重点をおくかが戦略となります。
例えば「今期はA商品を売る!」や「◯◯エリアを重点的に販売活動をする!」、「◯億円の売上をあげる」、「今年は人材の教育の年!」などなど、限られたヒト・モノ・カネ・情報という資源をどこに配分するし、何を優先するかを決めるのが経営者であり戦略になります。

ただ、この場合、戦略と戦術の境目は難しく、A商品を売るというのは戦略でも、どうやって売るかを考えるという戦術の中にエリアをどこにするかが含まれてくるケースもありますし、A商品の商品知識、セールストークを覚えるために人材の教育が必要だとなるケースもあります。

ですので、概念としての戦略と戦術を理解するのは難しくありませんが、1つ1つの事柄をこれは戦略か戦術かと区別していくのは難しいのが経営です。

簡単に戦略と戦術をわけると

上記でご説明したように、厳密に1つの事柄を戦略と戦術にわけるのは難しいのですが、簡単にするために便宜上以下のように定義します。

戦略とは、「ミッションとビジョンを達成するために、誰に何を提供するか?」

つまり、商品・サービスとお客様層のみを戦略として定義し、それを達成するためにどうするか?の部分はすべて戦術とします。

どうやって売るのか?どうやって商品を開発するのか?
このあたりはすべて戦術です。

「誰に何を提供するのか?」がとても大事なことは、無料プレゼントの「起業7step」の中でもご説明してきました。

余談ですが

当サイトは、「中小企業経営者に役立つ情報」を「中小企業経営者」に提供するというのが戦略です。
「中小企業経営者に役立つ情報」をという部分が商品・サービスです。
現在、財務や会計、金融機関系の情報が先行してたくさんあるのは、提供できる人間がいるかいないかという問題だけで、特に戦略的意味はありません。

戦略の説明で省きましたが、これを有料で提供するか、無料で提供するか、無料の先に有料商品を用意するかなど、このあたりも戦略の一部ですし、当サイトは運営会社がコンサル業務で収益があがっているので、無料で情報提供ができています。(一部広告掲載などで収益がありますが、情報自体は無料です)

このあたりも戦略としてはとても大事で、例えば飲食店で、良い商品・サービスを提供していても、別の事業で利益の出ている企業が利益がでなくても赤字にならなければいいやといって出店して来た場合、価格では勝てなくなってしまうからです。
同じ商品・サービスを同じお客様層に提供するという同じ戦略なのに勝敗が価格によって決まってしまうということです。

この辺りは大きな枠組みにおけるビジネスモデルをいかに戦略的に作れるかという話にもなってきますが、あくまでも同じ商品・サービスを同じお客様層に提供するという、ここで定義した「戦略」が同じだった場合であり、戦略が違えば大手と互角に勝負している事例はたくさんあります。

例えば、会計ソフト業界でTKCや弥生会計、勘定奉行などの大手が主力だったのに対して、現在はfreeeやマネーフォワードなどが有名になってきたのは、「オンライン会計」を「初心者」に提供したからです。

今までの会計ソフトは「ソフト」を「税理士を中心とした玄人」に提供するという戦略でしたが、「オンライン会計で、領収書の写真を撮る、オンラインバンクから自動で読み込んで仕訳ができるという素人でも経理ができるという商品」を「経理(簿記)がよくわかっていない人(経営者・経理)」に向けて提供した結果が、シェアの拡大につながり、前述した大手に並ぶ知名度になったわけです。

なので、「誰に何を提供するか」はもの凄く大事ということです。(もちろん提供するかの「どうやって」の部分も大切です)

なぜミッション・ビジョン・理念が大事か?

おおがかりな組織で運営している訳ではありませんが、例えば当サイトに編集長が別にいて、編集部という部署があったとします。

バランススコアカードを導入しようにも、サイトの方向性(ミッション・ビジョン・理念)が決まっていなければ導入のしようがありません。

話を簡単にするために単純化しますが、
サイトを評価する指標はたくさんあります。

記事数が評価されるのか?それともPV数なのか?直帰率の低さなのか?滞在時間なのか?問い合わせ数なのか?
それともその複合的な要素なのか?

などなど

サイトの存在意義(ミッション)によって変わってきます。

注文が欲しいようなHPであれば、最大に評価されるべきは問い合わせ数か、問い合わせ数/PV数の比率か、広告費/問い合わせ数になります。

しかし、当サイトは情報提供に焦点をおいてますので、全体の認知度をはかる「全体のPV数」、1ユーザーあたりの滞在時間、記事の更新数を指標とおくことができます。

このように、サイトの存在意義(ミッション)と情報提供サイトにしたいのか、コンサルを増やしたいサイトなのか(ビジョンや将来像)が明確でないと、その達成度をはかることが難しいのです。

そして、これは人事評価制度にもいえて、人事評価制度ではスタッフや社員に目標を設定してもらいます。
売上や利益、新規開拓などはもちろん、覚えたい技能やスキルなどもです。

にも関わらず、会社のミッションやビジョン・理念、そして戦略が明確でなければ、スタッフ・社員も何を目標に働いたら良いかわからなくなってしまうので、まず最初にミッション・ビジョン・理念を作り、戦略・戦術を明確に文章に、つまり経営計画書(経営方針書)にしなければいけないのです。

なぜ経営計画書(経営方針書)にしなければいけないのか?

何度かお伝えはしてきていると思いますが、口頭で説明しただけでは人は覚えられないからです。
経営者自身も文章で紙に書かないと、いつも言っていることが少しずつ違くなってしまいますし、社員・スタッフもどれが本当に大事で、どれが思いつきなのかわからなくなってしまうからです。

もちろん朝令暮改がダメという話ではなく、時代の流れの変化や、経営者自身の間違いに気づいたらどんどん変えていっていいものです。
但し、その際には口頭ではなく、文章自体を直すようにしなければいけません。

また、金融機関などの関係者にも文章化してあることは効果があります。詳しくは【VOL110】経営計画や事業計画は中小企業経営に必要なのか?を参考にしてみてください。

社員・スタッフが1人以上いる会社であれば、経営計画書(経営方針書)は必ず必要です。
A4用紙1枚からでも良いので作成しましょう。

戦略

編集後記

前職時代も含め、経営計画書(経営方針書)がない会社が非常に多く感じます。
もちろん絶対必要なものではないかもしれませんが、あることによるメリットのほうが多いのが経営計画書(経営方針書)です。

無い会社に限って、社員が思ったように動いてくれない、評価制度が必要だとか、良い教育方法はないかとか、良い人材の獲得方法はないかという経営者が少なからずいらっしゃいました。

まず最初に、中小企業の場合、会社が黒字か赤字かの99%近くは経営者の戦略と戦術次第です。
10人、20人の会社で社員の能力は関係ありません。

その次に、経営計画書を作成し、繰り返し内容を伝え、バランススコアカードや評価制度に落とし込んで社員やスタッフに会社の目標や方向性を伝えてもいないのに社員のせいにするのは辞めましょう。

経営者と社員という関係じゃなかったとしても、他人である以上100%わかり合えることはありませんので、何でこんなこともできないんだと思う機会は常にあるものだと思います。

しかし、その価値観や認識の差を埋めるのが評価制度の存在意義であり、広義な意味では経営計画書を作成する1つの理由です。

繰り返しになりますが、まずはA4用紙1枚からで良いので作ってみましょう。

作成方法にお困りの方がいらっしゃいましたらご相談に乗らせていただきます。

最後に

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