よくショッピングなどに行くと、10%引きとか、3,000円引きなどの値引きと、3つ買ったら1つ無料などのおまけなどの札をみかけることがあると思います。
例えば、3,000円引きと、3,000円の商品おまけでは、どっちが会計的に特なのかを今回は考えてみましょう。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で配信している内容です。
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今回は『会計で考える「値引き」と「おまけ」』です。(編集前のメルマガは2016年8月3日(水)に配信されています)
この記事の目次
3,000円の値引きと3,000円分のおまけはどちらが得か?
紳士服の○○などでは、3,000円〜5,000円の商品が3点買ったら1点無料などのセールをやっています。
また、それとは別に会員のステージによって5,000円〜10,000円程度の割引券や、10%〜15%程度の割引券が送られてきます。
世の中には様々な値引きや割引が存在しますが、一体どれが一番得なのでしょうか?
お客様の視点
実際お客様にとっての損得は経済的な観点では基本的にはありません。
気分的なものは人それぞれですが、3,000円値引きしてもらっても3,000円の価値ですし、3,000円の商品をつけてもらっても、経済的に得するのは3,000円です。
余談になりますが、3,000円値引きしてもらったほうが好きな商品を3,000円分買えて得な気分になるかもしれませんが、3,000円分の好きな商品をおまけにつける、3,000円を超える場合には3,000円分値引きし超えた分を払ってもらえば、お客様は3,000円分の好きな商品をもらえるので、お客様の経済的な損得は同じとなります。
例えば、「A:3,000円の商品を3つ買ったら3,000円引き」、「B:3つ買ったら3,000円分の商品をおまけ」という2つのパターンが合った場合に、
A:3,000円×3つ-3,000円=6,000円
6,000円÷3つ=1個あたり2,000円
B:3,000円×3つ+0円×1つ=9,000円
9,000円÷4つ=1個あたり2,250円
なので、Aのほうが得のように見せるケースもありますが、Aのケースでも4つ目を3,000円で買えば1個あたり2,250円になるので、ただの言葉のマジックだということがわかります。
本当に1個2,000円で売っていれば、4つ買って8,000円ですからお得ですが。。。
結局3つしかいらなければ、いらないものを1つ押しつけられるBより、Aのほうが得ですが、4つ欲しいのであればAでもBでも変わりません。
いくつ欲しいのかという状況や、損得の感じ方にもよりますが、会計的価値はお客様にとって変わらないというのが結論となります。
お店側の視点
上記と同じ例題、「A:3,000円の商品を3つ買ったら3,000円引き」、「B:3つ買ったら3,000円分の商品をおまけ」で比較してみましょう。
ここで大切なのは「原価」という考え方です。
仮に原価が50%の1,500円だとしましょう。
つまり、1個売れれば3,000円-1,500円=1,500円の利益となります。
A:(3,000円-1,500円)×3つ-3,000円=1,500円
B:(3,000円-1,500円)×3つ-1,500円=3,000円
となり、Bのほうが利益がでることとなります。
現金で値引きをすると3,000円がそのまま利益から引かれることとなりますが、商品をおまけにつける場合には、原価分の損失で済むというところが会計のポイントとなります。
もちろんAのケースでも4つ目を買ってもらえば、トータル3,000円の利益にはなりますが、そこには買ってもらえないかもしれない機会損失があるわけですから、お店としてはBのほうが断然お得ということになります。
MQ会計を学んで数字に強くなろう
この考え方を簡単にシミュレーションする方法がMQ会計を利用した利益感度分析です。
過去の記事に書いてあるので、今回は説明を割愛しますが、過去記事を参考にしてみてください。
この考え方をマスターできれば、会計的な損得がすぐにわかります。
→【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう
→【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!
→【VOL82】戦略MQ会計を応用して未来の利益計画を作ろう
値引きをするくらいならおまけをつけましょう
値引きをすることがいかに損かご理解いただけたと思います。
値引きをするくらいであれば、サービスで何かをつけることを中小企業にはお勧めします。
特に、手間ひまがかかるだけですむことはお客様のためにもやりましょう。
【VOL4】財務に強い経営者の習慣の1つである費用の色分けの仕方(メルマガ版財務講座)に詳しく書かれていますが、経費には変動費と固定費があります。
変動費がかかるものは利益もその分減ってしまうので検討の必要がありますが、固定費の中でできるものに関しては、手間ひまを惜しんではいけません。
中小企業は高付加価値商品を高単価で
大手と比べて資本力に劣るのが中小企業です。
価格で勝負をしていては生き残れません。
独自性で勝負をするしかありません。
この独自性とは、手間ひまかける、小回りがきく、パッケージ商品ではないといった部分になります。
スーツも既製品を大量生産大量販売で勝負したら大手には勝てません。
価格は高いけど、ファッション的なアドバイスもしてくれて、オーダーメイドで・・・などといった付加価値の高いお店を作り高単価で売って行く以外に中小企業が生き残る道はありません。(中小企業でも業界シェアが高ければ別ですが・・・)
この辺りの話はランチェスター戦略の強者の戦略、弱者の戦略に詳しく書かれています。
→ランチェスター戦略に基づく企業の資源配分の原則はお客様獲得に8割の資源を配分すること
→中小企業のためのランチェスター戦略:弱者の戦略の5つの基本と3つの重点項目
フリーランスは安売り戦略もあり??
中小企業は高付加価値で高単価商品でないと生き残れないという話をしましたが、1人でやっているフリーランスは安売りでも生き残れる可能性があります。
それは、前提として固定費がかからない事業形態であれば、自分の生活費だけ稼げればとりあえず良いので安売りも可能となります。
例えばホームページ制作、業者に頼むと中小企業でも安くて数十万はします。
しかし、フリーランスであれば小回りもきく上に低価格で受注することも可能となります。
もちろん自分自身のリソースがどの程度あるかという話もありますし、将来を見据えたときにいつまでも1人でやっていくのかという問題もありますが、初期段階のフリーランスであれば低単価でやり、実績を増やしていくことのほうが重要になります。
中小企業でも一人でやっている会社は同様で、まずは実績作りが大事になります。
会計に強くなければ経営は行き詰まる
何種類もある原価計算をマスターする必要はありませんが、変動費と固定費の違いや、借入金の返済は経費にならないなど最低限の会計を理解することと、それを実際のビジネスに使いいくら利益がでるかをキチンと把握できるようにならなければ、経営は行き詰まります。
今回紹介した、値引きとおまけによって利益額が変わるというのは会計の中では最低限経営者に理解しておいてほしいことです。
→【VOL9】その値引きちょっと待ってください。これだけは覚えておきたい、値引きのルール(メルマガ版財務講座)
何より安売りをすると消耗戦になるのは中小企業に限らず大手企業でも同様です。
過去のマクドナルドの事例や、牛丼屋3社の値引き合戦などを見ていればわかると思いますが、大手ですら消耗戦になっていました。
そこに資本力の劣る中小企業が参入して勝ち残れるわけがありません。
であれば、価格以外の価値を見つけ、他社よりも高い値段でも買ってもらえるようにすることです。
安売り合戦、値引き合戦では大手に勝てない以上、中小企業は値段以外の価値を見つける以外に生き残っていく道はありませんので、マーケティングを学び付加価値の高い事業を展開してもらえたらと思います。
編集後記
値引きとおまけの話から始まって、付加価値、マーケティングの話にたどり着いてしまいました。
ビジネスにとってもっとも大切なのは、ビジネスモデルで、次にマーケティングです。
ビジネスモデルが間違っていると、他がうまくいっても常に苦しい経営をしなければいけないこととなります。
財務や会計を理解することはもちろん大切ですが、経営は売上がなければ成り立ちません。
財務や会計が必要なのは、売上があるのに利益が出ていない、利益が出ているのにお金が残らないという段階になってからです。
まずはビジネスモデルとマーケティングが重要になりますので、当メルマガでもビジネスモデルの考え方やマーケティングについても紹介していきたいと思います。