金融機関が念入りにチェックする科目の1つである貸付金についてご説明します。
様々な理由があって貸付金が必要となるケースがあると思いますが、原則として金融機関に融資を申し込む前に資金が必要なのであれば、貸付金を返済してもらえば良いのではと考えられがちです。
この記事の目次
金融機関の貸付金に対する基本的な考え方
金融機関に限らず一般的な話として、企業は利益を追求するために存在すると考えられています。
そのため、貸金業でない企業に貸付金があるとすれば、利益を出すためになぜ必要だったのかが原則的には求められます。
特に、金融機関では、人に貸すお金があるのであれば金融機関が融資をする必要がないのではないかと考える傾向があります。
もしくは、貸したお金を返してもらい、それでも足りなければ金融機関から借りたら良いのではと考えます。
うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。でも5番目にご説明しましたが、貸付金は敬遠されがちです。
理由別の貸付金による金融機関の反応
一言で貸付金といっても様々な理由があると思います。
理由別に金融機関の反応をまとめてみました。
不明金の処理
うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。でも書きましたが、意外と多いのが、不明金の処理です。
現金管理がしっかりしておらず、通帳から引き出した形跡はあるのに、何に使ったかはっきりしない場合に、経営者が個人的に使ったものとして、経営者に対する貸付金(又は仮払金)として処理されることがあります。
意外と知らぬ間にそうなっている場合もあるので、気になる場合は確認してみて下さい。
この場合は、最悪です。
現金管理が出来ていない管理がずさんな会社と見られるだけでなく、経営者に対する貸付金の増加分は損益計算書の利益からマイナスされます。
お金がなくなっているのだから経費に含めるという考え方です。
また、経営者に対する貸付金額の残高を自己資本からも引きますので、格付けを含めた金融機関からの評価は大きく落ちることとなります。
信用格付けについてはこちら。
→金融機関(銀行)の融資審査の最大のポイント、信用格付けを徹底解剖
→信用格付け対策が重要!信用格付けの企業へのメリットとデメリット
経営者個人又はその家族、関連会社、その他関係者への貸付金
こちらも警戒されるパターンの1つです。
理由にもよりますが、多くの場合、そのお金を返してもらってから金融機関から借りて欲しいと思われます。
また、金融機関がお金を貸しても、そのお金は経営者個人やその家族、関連会社への貸付として使われてしまうのではないかと疑われる可能性もあります。
例外的に、特別な理由があって、毎月返済が確実にされていて、用途によって一般的に普通を思われる年数で貸しいれば大丈夫なケースもあります。
仕入先や外注先への貸付
これも貸付理由によりますが、仕入先外注先の役員の住宅購入資金を含む個人的な貸付等になると、金融機関からの審査は厳しいものになります。
運転資金等であったとしても、自社が金融機関から借りなければいけないのに、仕入先や外注先に貸すというのは経営者としてどうなのかと疑われる可能性が高いと言えます。
例外的に、自社の仕事を頼むのに必要な設備等を購入してあげて、毎月の仕入代金又は購入代金から天引きして回収するなどのケースは認められる場合があります。
とはいっても金額と必要性がどの程度あるのかによって総合的に判断されます。
従業員への貸付
福利厚生の一環として住宅購入資金等を貸し付けるケースです。
これに関しては、転職防止や従業員のモチベーション向上など、経営に必要な要素があると認められますので、概ね問題になりません。
但し、毎月返済されていないとか、貸付期間が通常の住宅ローンより異常に長いなど、回収に疑問がある場合には問題視されます。
退職金一括返済なども問題になる可能性があります。(従業員が返済に見込まれる退職金額まで勤めないこともありえるため)
貸付利息に対する考え方
基本的には貸付利息は必要です。
従業員への福利厚生目的の貸付金を除き、通常の目的別の借入相当の利息に比べて著しく低い場合には、利益を追求するという企業の目的から外れているとみなされ、問題になります。
従業員への福利厚生目的の貸付員に関しても無利息だと問題になるケースが多いので注意が必要です。
低金利で構わないので、利息は必要です。
金融機関は、前期と比較して考える
これは貸付金に限りませんが、基本的に金融機関は前期と比較して数字の変化をみます。
貸付金が増えていれば、その分損益計算書には出てきていない出費があるということになりますので、念入りにチェックされています。
逆に減っていれば、損益計算書には載っていないが、返済が進んでいてキャッシュフロー的にはその分お金が増えていると見られます。
理由が明確かつ妥当な貸付金が増えた場合を除き、貸付金額が増加している又は前年と同額である場合には、問題のある企業とみなされます。
編集後記
今回の貸付金と、次回予定している仮払金については、よく問題になる勘定科目の1つです。
実際には、金融機関がこの会社には貸したいと思っていれば問題にならないケースが多いですが、貸すのは難しいと思った際には、都合のいい断る理由として使われるケースもあります。
もちろん、不明金や役員の使い込みを隠すための貸付金、個人的な用途への貸付などの場合には、それ自体が大きな問題となります。
意外と知らない間に貸付金で処理されているケースも多いので、一度自社の決算書を確認してみることをお勧めします。