金融機関が融資の際に企業を評価する重要なポイントの1つに貸借対照表と損益計算書があります。
先日の損益計算書に引き続き今回は貸借対照表になります。
→金融機関の融資審査のポイント【損益計算書編】
貸借対照表を正確に読み取るのは難しいですが、金融機関が見ているポイントはそれほど多くも難しくもありません。
ぜひこの機会に覚えてしまいましょう。
この記事の目次
貸借対照表とは?
資産と負債と資本という3つで構成される表です。
「資産のある借方の合計金額」と「負債と資本の合計金額」ある貸し方がどんな状況でも一致するので、貸借対照表と呼ばれます。
学問的にはいろいろな解釈がありますが、「企業のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を示す表」と一般的には言われています。
つまり、決算日(例えば3月31日)における、現金(資産)、預金(資産)、売掛金(資産)、建物(資産)、買掛金(負債)、資本金(資本)などの金額を示す表となります。
損益計算書は一定期間(4月1日〜3月31日など)の累計金額を表すのに対し、貸借対照表はある一定の日の状態を示すこととなります。
詳しく知りたい方は、以前の記事を参考にしてみて下さい。
→【VOL48】貸借対照表とは?BS経営のための貸借対照表の読み方の基礎
経営における貸借対照表の見方
金融機関の融資のポイントという趣旨からは外れてしまいますが、経営における貸借対照表の見方としては、
資産=資金の運用状況
負債=他人からの返済が必要な資金の調達
資本=自分で稼いだ利益や出資金などの返済不要の資金の調達
となります。
つまり、どんな形で資金を調達し、どんな形で資金を運用しているかが一目でわかる表が貸借対照表ということです。
→【VOL49】中小企業は貸借対照表の傾向で経営者の経営方針がわかります。
金融機関の融資の際の貸借対照表のポイント
ここからはいよいよ貸借対照表の融資のポイントを見ていきます。
債務超過かどうか
債務超過とは、負債(返済が必要な資金調達)の金額が、資産(資金の運用)の金額をオーバーしている状態の事をいいます。(厳密にはオーバーした金額が資本金の額を超え、資本の部がマイナスの状態)
これがどういうことかというと、運用している資金(=資産)より、他人から借りたお金(=負債)のほうが多い状態ということですから、過去の赤字による資金不足を借金で補っている状態ということです。
過去に何か特別なことがあり大きく赤字を計上したのか、それとも毎年赤字を積み重ねた結果の債務超過なのかなどの理由によっても審査は変わってきますが、債務超過かどうかは金融機関が真っ先にチェックをするところであり、債務超過だと融資は難しくなる傾向があります。
役員借入金の有無
役員(中小企業の場合には主に経営者)が会社に貸しているお金のことです。
通常の負債とは違い返済をすぐしなくてはいけないというものではない可能性が高いので、資本と同等とみなす金融機関が多い傾向があります。
つまり、仮に債務超過(資本の部がマイナス)でも役員借入金の金額を足してプラスになれば、実質債務超過ではないと見なされます。
可能であれば、貸借対照表上の科目も「役員借入金」などの科目を使い、かつ、翌年(決算日より1年以内)に返済の予定がなければ「固定負債の部」に計上することをお勧めします。
短期借入金や長期借入金に金融機関からの借入と一緒に貸借対照表に載せていると金融機関によっては、詳細な確認をせず役員からの借入金だということを見逃す傾向があるからです。
また、1年以内に返済予定がなければ「固定負債」です。これを流動負債に表示すると「流動比率」や「固定長期適合率」などの格付けの数字が良くなくなってしまうので注意が必要です。
金融機関が中身までしっかりと審査してくれるとは限らないので、アピールしたいことは自ら決算書の中でアピールする必要があります。(偽ってはいけませんが・・・)
長期借入金の運転資金への使用率
金融機関からの借入金の金額と固定資産の金額のバランスをチェックします。
「固定資産>長期借入金」または「固定資産=長期借入金」であれば問題ありませんが、
「固定資産<長期借入金」ということは長期で借りたお金を運転資金に使用してしまっている状態=自転車創業と捉えられてしまう可能性があるので、額にもよりますが融資審査ではマイナスとなります。
但し、一般的に長期借入金の金額が月商の4ヶ月を超えていなければ問題になることはありません。
債務償還年数
損益計算書にも関係してきていしまいますが、長期借入金÷(減価償却費+減価償却費)が10年以下かどうかを見ます。
10年以上の数字になるということは、今の長期借入金だけでも10年かかっても返せないということになりますので、新規の融資はよほどの理由がなければでません。
貸借対照表からは企業の歴史を読み取っている
貸借対照表は、損益計算書と違って一定期間(通常1年)が終われば、翌期はゼロからスタートということではないので、毎期毎期の積み重ねがそこに表示されます。
損益計算書はあくまでも1期分しかわかりませんので、もの凄くその期や直近3期が儲かっていたとしても、実は過去の赤字で借金だらけという場合もあるわけです。
過去から現在までの会社の状況を一表に表したのが貸借対照表です、なので金融機関も必ず確認する重要な書類になるわけですね。
→【VOL51】貸借対照表は会社の歴史であり未来像である:BS経営の入り口
編集後記
前回の金融機関の融資審査のポイント【損益計算書編】と合わせて、貸借対照表と損益計算書の重要性なポイントはご理解頂けたかと思います。
金融機関の担当者も万能ではありませんので、重要なポイントは貸借対照表や損益計算書上で自らアピールしなくてはいけません。
本当は長期借入金の中に役員借入金があって債務超過ではないのに…と思っても審査後では後の祭りです。
適切な決算書作りというのは非常に重要ですが、税理士さんは税の専門家でも借入の専門家ではないので、任せっきりに出来ないので注意が必要です。
自ら勉強するか、そっち方面の専門家にお願いするかのどちらかになるでしょう。