キャッシュフロー計算書は、損益計算書の利益と現金預金の増減の違いを表すための表です。
詳しくはこちら
→【VOL58】キャッシュフロー計算書でわかる、絶対に知っておきたい儲かっているのに資金がなくなる3つの理由!
そのキャッシュフロー計算書では、営業活動・投資活動・財務活動と3つの領域にわけて、損益計算書の利益と現金預金の増減の違いを、その原因別に把握することができます。
詳しくはこちら
→【VOL61】お金に色をつけるのがキャッシュフロー計算書の役割?!
今回はその中でも本業のキャッシュフローを表すといわれている、営業活動によるキャッシュフローについて解説致します。
退屈な部分かもしれませんが、経営者に最低限抑えておいてほしい基礎になりますので、お付き合い頂けたらと思います。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。
メルマガの登録はこちらからお願いします。→http://mail.os7.biz/m/KhOi
このメルマガはシリーズものになっていますので、
からお読み頂くことをお勧めします。
今回は『経営者ならこれだけは知っておきたい!営業活動によるキャッシュフローの基礎』です。(編集前のメルマガは2015年7月8日(水)に配信されています)
この記事の目次
営業活動によるキャッシュフローとは?
投資活動によるキャッシュフロー、つまり資産の売買によるお金の増減や、財務活動によるキャッシュフロー、つまりお金の貸し借りによるキャッシュフローの増減を除いた純粋な営業活動によるお金の増減を表します。
キャッシュフロー計算書上の営業損益ともいうことができ、本業のみでのお金がいくら増えたのか、又は減ったのかがわかります。
営業活動によるキャッシュフローにはどんな項目があるのか?
ここから多少退屈かもしれませんが、営業活動によるキャッシュフローの各項目のご紹介と説明を1つずつしていきます。
税引後当期純利益
損益計算書の利益と実際の現金預金の増減の違う原因を表すのがキャッシュフロー計算書ですから、計算のスタートは当然最終利益からスタートします。
そして、もちろんのゴールは現金預金の増減額となります。
税引後当期純利益に、「営業活動によるキャッシュフローの増減(税引後利益を除く)」「投資活動によるキャッシュフローの増減」「財務活動によるキャッシュフローの増減」を足したり引いたりすると、現金預金の増減と同じ数字となります(ならなければ計算自体が間違っています…)
減価償却費
損益上は経費になっていますが、実際にはお金が出ていかないので、キャッシュフロー計算書の計算では加算項目(現金預金のプラス)となります。
減価償却費がお金が出ていかない経費という話はこちらから。
→【VOL2】減価償却費に代表される会計の罠にひっかからないように気をつけましょう!
貸倒引当金の増減額
上記の減価償却費と同様に、損益計算書上は経費になっていますが、将来の貸し倒れのリスクに備えているだけで、お金が実際に出ていっているわけではないので、キャッシュフロー計算書では加算(現金預金のプラス)となります。
売上債権の増減額
売上債権(受取手形や売掛金)になるということは売上が計上されているため、損益計算書上は利益になりますが、売上債権で残っているということは、キャッシュフロー上はまだ入金していないということになります。
つまり、売上債権が増えるということは利益に計上しているのに、現金預金では回収できていないものが増えるということですので、キャッシュフロー計算書上は損益とのズレになりますので、減算項目(マイナス項目)となります。
逆に売上債権が減るということは、入金したということですので加算項目(プラス項目)となります。
棚卸資産の増減額
在庫が増えるということは、資産が増えることですので、損益計算書上は期末棚卸資産として利益(経費のマイナス)になります。
しかし、在庫を買っているわけですから、お金自体は減りますので、利益とのズレとなりキャッシュフロー計算書では減算項目となります。
一方、在庫が減るということは売れたということですので、お金が増えますので、加算項目となります。
仕入債務の増減額
売上債権とは逆に仕入債務(支払手形、買掛金、裏書手形など)があるということは仕入や外注費があるということになりますので、損益計算書上はマイナスになります。
しかし、仕入債務が増えるということは、仕入れたのに払っていないお金が増えるということですので、お金は損益計算書ではマイナスになっても減りませんので、加算項目(プラス)となります。
逆に仕入債務が減るということは、支払が行われたということで、お金が減りますので、減算項目となります。
前受金の増減
前受金が増える時はお金は増えますが、損益計算書では収益にも経費にもなりません。
そのため、前受金が増えた時は、損益計算書では収益(プラス)にならないのにお金は増えるので、加算項目となります。
一方で前受金が減るときは、売上が計上されるときですから、損益計算書上は収益になるのに、お金は既にもらっているためにプラスにならないときですので、減算項目となります。
前払金の増減
前受金と逆で、前払金が増えるときは、キャッシュフロー計算書上は減算項目となり、減るときはキャッシュフロー計算書上は、加算項目となります。
未収入金の増減
売上債権と同様に、未収入金が増えるときは、雑収入などの損益計算書上では収益となりますが、実際にお金は増えないので、キャッシュフロー計算書上は減算項目となります。
減少したときは、その逆で加算項目となります。
未払金・未払費用の増減
仕入債務と同様で、未払金・未払費用が増えた場合には、損益計算書は経費となりますが、実際のお金は減らないので、キャッシュフロー計算書上では加算項目となります。
減少したときは、支払が行われお金が減るときですから、減算項目となります。
未払法人税等の増減
未払金・未払費用と同様で、減少したときが支払ったときで、お金が減るときですから、キャッシュフロー計算書上は減算項目となります。
逆に、増えた時にはキャッシュフロー計算書上は加算項目となります。
わけて表示せずに未払金・未払費用と一緒に表示しても良いのですが、わけることで法人税等を支払ったからお金がなくなっているということがよくわかるようになります。
未払消費税の増減
未払金・未払費用・未払法人税等と同様で、キャッシュフロー計算書上は増えたときが加算項目、減ったときが減算項目となります。
未払法人税等の増減と同様に、他の未払勘定と一緒に表示しても良いのですが、消費税等の支払でどの程度お金がなくなっているのか、原因を把握するためにわけて表示したほうが効果的です。
仮受消費税等-仮払消費税等
決算ごとに1年のキャッシュフロー計算書を出す場合には、仮受消費税等も仮払消費税等もゼロになっているはずですので、使うことはありませんが、毎月のキャッシュフロー計算書を出している場合には使います。
仮受消費税等が多ければ、お金を預かっており、キャッシュフロー計算書上は加算となり、逆に仮払消費税等が多ければ、お金を仮払していることになり、キャッシュフロー計算書上は減算となります。
その他に、毎月キャッシュフロー計算書を出し、この項目を確認するだけで、仮受消費税等が多ければ、現在の消費税等の納付額がいくらなのかがわかりますし、逆に仮払消費税等が多ければ、現在の還付額がわかるということになります。(なので消費税等の中間納付はキャッシュフロー計算書上は仮払消費税等に入れておくとわかりやすくなります。)
その他資産の増減
仮払金や前払費用などその他の資産です。
資産項目は増えていれば、キャッシュフロー上は減産項目となり、減っていれば、加算項目となります。
その他負債の増減
預り金や仮受金などその他の負債です。
負債項目は増えていれば、キャッシュフローも増え、加算項目となり、減っていれば減算項目となります。
その他の調整項目の増減
土地の売却損益や投資有価証券の売却損益など、営業活動ではなく、投資活動や財務活動によるキャッシュフローの増減にも関わらず、損益計算書で収入または費用に計上されているものを加算減算し、営業活動(本業)でのお金の増減を正確に出すための調整項目をいいます。
収入に計上していれば減算し、費用に計上していれば加算します。
つまり土地の売却益でプラスになったものは、営業活動ではないので、同額マイナスするということです。
(売却益+1,000万円を、土地の売却益の減算1,000万円として取り消すようなイメージになります)
営業活動によるキャッシュフロー
税引き後利益から上記のような項目を加算減算して調整して出た、営業活動(本業)によるお金の増減をいます。
利益が出ているのに、営業活動(本業)でお金が残っていなかったり、営業活動(本業)でお金が残っているのに、実際にはお金がなかったり、様々なパターンがあります。(このあたりは機会があるときにご説明します)
営業活動(本業)でお金が増えていないとしたら、どこかに問題がある可能性がありますので、キャッシュフロー計算書をよく分析して対策をする必要があります。
次回は投資活動によるキャッシュフローをご説明致します。
編集後記
経営者の方が1つ1つの項目を覚える必要はありませんが、どういう勘定科目があって、なぜ加算したり減算したりしているのか、営業活動によるキャッシュフローとは何なのかを理解して頂ければ十分だと思います。
理解した上で、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を見て、自社の経営と財務状況のどこに問題があるのか分析でき、かつ、対策ができるようになりましょう。
このあたりの話はまた改めて機会を作って解説したいと思っております。