今回は受取手形について金融機関が着目するポイントについてまとめてみました。
企業が受取手形をどういう活用をしているかを見ると、概ねその会社の資金繰りがわかってしまうので注意が必要です。
この記事の目次
受取手形の3つの形
受取手形は受け取ったあとに3つの使い方があります。
①満期手形
期日まで持っていて、期日になったら金融機関から手形と引き換えに入金される手形のことです。
②裏書手形
受け取った手形を、支払先の支払に使うことです。別名「廻し手形」とも言われております。
③割引手形
もらった手形を期日まで待たずに金融機関に現金又は預金にかえてもらう方法です。
手形とは?入金までの流れ
手形の基本的なことを解説します。
手形とは?
手形とは約定手形のことであり、信用取り引きの一種です。
特定の期日を決め、その期日に代金を支払うことを約束したものになります。
口約束や書面での約束より効力が強い理由には、金融機関の存在があります。
約束した期日までに手形の金額を支払えない場合には、不渡りという扱いになり、6ヶ月以内に2回の不渡りを出すと銀行取引停止になります。
現在の企業活動を行う上で、金融機関との取引は避けて通れないものですので、銀行取引停止となった時点で実質倒産と見られます。
現実に6ヶ月に2回も支払の約束が守れないわけですから、資金繰りが相当キツイということです。
実質倒産と見られるリスクがあるため、多くの企業はまず手形の支払をなんとかしようとするのが普通です。
この手形の支払を別名「手形を落とす」と言います。
そんな手形の支払ができないということは相当資金繰りが厳しい企業ということになります。
そのため、手形を落とすために企業は様々なことをしますが、それは支払手形のことを書く際にまとめます。
手形の入金までの流れ
まず商品の販売及び引き渡しが行われます。
そうすると大概が〆日と入金日がありますが、この入金日に現金や振込の変わりに手形で支払われることになります。
この手形の期日が3ヶ月後だったり4ヶ月後だったり契約条件によってします。
つまり〆日後、翌末支払の4ヶ月手形だったりすると、実質商品を販売してから5ヶ月後の入金となるわけですね。商品を仕入れてからと考えると長い期間になることがわかるのではないでしょうか?
この入金までの期間の長さと銀行取引停止になるリスクがあるので支払がされない可能性が低いという信用感のため、別の取引先への支払(裏書手形)または金融機関での割引(割引手形)が行われることになります。
手形は約束の期日(満期日)に手形を持っている人に入金される仕組みとなっていますので、仮に仕入れ先が持っていたとしても、金融機関が持っていたとしても、持っている人にお金が入ってきます。
つまり、裏書きを何度もされた手形の場合、手形を発行した会社は全く知らない会社へ支払うことになるというケースも存在します。
また、お金は直接手形を持っている人に金融機関を経由して支払われるので、手形を裏書きした人に一度入金してなどということはありません。
手形の発行した会社が不渡り(支払不能)にならない限り一度手放した手形に関わることはありません。
手形の扱いによる金融機関の融資審査時の評価
いまさら説明する必要もなかったかもしれませんが、手形の大枠を大雑把にご説明致しました。
次は手形の扱い別によって金融機関の反応はどう違うかということについて書かせて頂きます。
下記に書いたものとは別に以前お伝えした推定有り高のチェックなどは別途されています。
→金融機関の融資審査のポイント【取引条件と推定有り高編】
満期手形
資金繰りが安心な企業と見られます。
手形はどうしても商品やサービスをしてから入金までの期間が長くなります。
それでも入金まで手形を持っていられるということは、資金繰りに不安が無い会社とみることができるわけです。(実際には手形だけではなく他の項目も含めた総合評価です。)
裏書手形
手形を裏書できる先があるということはプラスの評価になります。
もらった手形を満期まで待つのではなく、現金預金同等物として仕入れ代金又は外注代金として支払っているわけですので、資金がうまく循環している状態といえます。
但し、仕入先や外注先以外への裏書手形があると要注意です。資金繰りに困り現金預金で支払えず手形を押し付けたと見られることもあります。
また、いつもは現金預金で払っている先に対して、裏書手形を出している場合には資金繰りがその時キツかったのではないかと疑われ、その当時の取引等のチェックをされることがあります。
割引手形
資金繰りがキツイ会社と見られます。
割引手形は言葉の上では借入金という言葉がついていないだけで、実質は手形を担保に金融機関からお金を借りていることとなんら変わりありません。
割引手形はその手形の信用度(発行者及び割り引こうとした企業)によって、期日までの期間に相当する割引料を利息として引かれ、差額が現金預金となります。
利息を引かれても現金預金にしたいということは資金繰りに窮している会社と見られてしまいます。
その他2つの方法、満期手形、裏書手形であれば、額面満額の金額として入金又は支払になるにも関わらず、割引手形は額面満額の金額ではないからです。(裏書手形の場合、手形ではなく現金払いなら値引きされるケースもありますが割愛します)
もう一つ割引手形がある場合に金融機関がチャックするのは割引料の割引率です。
割引率が高ければ高いほど、高い利息を払ってでも現金預金が欲しい状況の会社の可能性が高いので警戒されてしまいます。
参考記事
→手形割引をする金融機関の選び方:3つのポイント
手形の取扱の改善方法
満期日まで持っていることが理想ですが、資金繰りの都合上なかなか満期日まで持つのが厳しいケースが多いのではないかと思います。
次の方法としては、裏書手形を増やすことは出来ないかということです。
特に自社振り出しの支払手形を発行している会社は手形支払でも良いという取引先がいるということなので、裏書手形を検討してみて下さい。
但し、自社の得意先(売上先)が仕入先にバレては困るという企業は裏書手形は絶対にしてはいけません。
また、受取手形の額面が100万円なのに、50万円の支払のために裏書きはできないので、50万2枚の受取手形をもらえるように得意先にお願いできるかは、得意先との付き合い方によってくるので、一概には言えません。
最後の手段としては、割引手形は資金に困ったら手形を担保に短期借入を繰り返す自転車操業的な企業がすることというイメージが金融機関にあるので、常に手形の割引をしている企業は思い切ってその金額を長期で借りてしまい、割引手形を一掃してしまうのも1つの手段です。
但し、借入依存度や償還年数などとのバランスもあり、下手をすると割引手形がある時以上に金融機関の評価が下がる可能性もあるので、専門家と相談することをお勧めします。
依存度や償還年数についてはこちら
→金融機関(銀行)の融資審査の最大のポイント、信用格付けを徹底解剖
→信用格付け対策が重要!信用格付けの企業へのメリットとデメリット
編集後記
金融機関は実に様々なところを見ているので驚かれた方も多いのではないでしょうか?
実際には個々の事例1つで融資がOKとかNGとなるケースはほとんどなく、全体のバランスが大事になってきますが、金融機関がどんな資料をみて、どんな風に考えるのかを知っていて損はないと思います。
中小企業にとって金融機関とどうつきあっていくかは大きな課題の1つだと思いますので、参考になれば幸いです。