役員報酬の内訳書では、役職名や役員の氏名、住所、代表者との関係、そして役員報酬の額と支給理由(定期同額給与、事前確定届出給与、使用人職務分など)が書かれています。
金融機関からはどういったところが見られているのでしょうか?
役員報酬は、節税や益出しの調整科目に使われやすい科目ですので、注意深く見られることが多いのでポイントを抑えておくことをお勧めします。
【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字(メルマガ版財務講座)でも解説しておりますが、役員報酬は企業の収益力をみるために重要な意味を持つ勘定科目となります。
役員の構成
中小企業の場合、親族が役員を占めるケースが多いですが、親族のみなのか、それとも他人が入っているのかを確認されます。
親族のみでも他人が入っていても、実態をともなっていて、会社に貢献している人であれば特段問題になりません。(社長の弟で専務取締役や、赤の他人でも常務取締役でバリバリ働いている人など)
但し、非常勤役員等になっていて、実態を伴わないのに給料を払っているケースは問題があります。
実態がほとんどない社長の配偶者の方に非常勤役員としてお給料を支払っており、その目的が所得税及び住民税、社会保険党の削減であれば問題になるケースは少ないです。(税法的な問題や社会保険法的に問題はあるケースが多いでしょうが、今回はあくまで融資の際ということで割愛)
あくまで社長がもらうべきお給料を分割しているだけで、同じ家計に入るからです。
つまり、親族でも同じ家計ではない人に名目でお給料を払っていたり、赤の他人に名義借り等でお給料を払っていたりしている場合には、その理由等を確認されることとなります。
役員報酬は適正か?
【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字(メルマガ版財務講座)でも解説しておりますが、企業の収益力が良くなっているか悪くなっているかを確認するために、「役員報酬+減価償却費+利益」の合計が前年と比較して良くなっているかどうかというのが見られます。
役員報酬を下げて利益が前年より増えていても評価されないということです。(赤字になるよりはマシですが。)
役員報酬が生活するための適正額より低い場合には、貸付金や仮払金等で会社からお金が出ていっていないかを確認されます。
貸付金や仮払金でお金を役員報酬とは別に社長や役員に支払っている場合は、融資審査においてはその分は赤字として見られますし、融資審査は不利になる可能性が高くなります。
→うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。
役員報酬が生活するには異常に低いにも関わらず、会社から貸付金等がでていない場合には、どうやって生活をしているのかも問題になります。
配偶者の方が別のところで稼いでいて、それで生活できることが、配偶者の方の所得証明で証明できたり、過去に蓄積した貯金で生活できることが通帳等で証明できたりすれば問題がありませんが、消費者金融はもちろん身内を含む他人からお金を借りて生活している場合には、融資審査は不利となります。
役員報酬は遅滞なく支払われているか?
遅滞なく支払われていれば問題ありませんが、未払の場合には注意が必要です。
資金繰りに困っていて支払ができず、未払金がずっと増えているようなケースは問題があります。
節税のために役員報酬を高くし、必要な分はもらい、節税分に関しては未払に残している場合には問題がありませんが、経営者の見栄(年収◯百万円)のために役員報酬を下げられずに未払金になっているケースは大きく問題があります。
役員報酬を下げなければ経営が成り立たない状態にも関わらず、自分の見栄のために余計に所得税や住民税、社会保険料を支払っているわけですから、経営者としての資質を疑われても致し方ありません。
融資審査には大きく不利となるでしょう。
また、節税のためであっても未払金で残しておくのではなく、一度支払をし、改めてまとまった金額を会社に貸し、役員借入金にしておいたほうが、金融機関からの評価(=信用格付け)は高くなります。
→金融機関(銀行)の融資審査の最大のポイント、信用格付けを徹底解剖
→信用格付け対策が重要!信用格付けの企業へのメリットとデメリット
役員報酬と個人資産の関係
役員報酬が多い場合には、浪費せずにキチンと個人資産として蓄えているかを金融機関は気にします。
企業経営には良いときも悪いときもあります。(というか中小企業は悪いときのほうが多いのが昨今の経済情勢ではないかと思います。)
経営には波があるからこそ、良いときの波のときにキチンと利益を残しているかを見るわけです。
法人税が減税の流れであるので、昔ほど役員報酬を増額して節税というのも少なくなってきていますが、それでもある一定額までは有効な方法です。
その場合、企業に利益が残っていないことも多々あるので、経営者個人として利益を現金預金でしっかり蓄えているかが問題となるわけです。
金融機関としては個人資産としてお金が蓄えてあっても、法人としてお金が蓄えてあっても構わないわけですが、個人資産は法人と違って決算書を見てもわからないですし、帳簿もつけていないケースも多いので、役員報酬が高い場合には神経質になるので注意が必要です。
キチンと個人資産として残っていることを証明できるように準備しておくことをお勧めします。
但し、金融機関によっては、お金を貸したいときには、「個人資産は企業の資産と同様と見ますので自己資本の一部と見ますよ」と調子の良いことを良いながら、貸したくないときには、「自己資本が少ないので貸せません」と平気でいったりするので注意が必要です。
節税との兼ね合いもあると思いますが、上述のようなリスクを把握した上で決算対策をしていきましょう。
編集後記
役員報酬をいくらにするかというのは、金融機関対策はもちろん、節税の観点からいっても、企業戦略において重要な点になります。
そのために税法でも定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動型給与以外の役員報酬は損金として認めないという厳しい態度をとっています。
→国税庁のホームページ:No.5209 役員に対する給与(平成19年4月1日以後に開始する事業年度分)
自己資金で会社を成長させていき、困ったときも金融機関を頼らない覚悟で経営していくのか、税金を払ってでも金融機関等からの他人資本を入れてレバレッジを聞かせて会社を成長していき、困ったときは金融機関から借りれるように借入実績及び返済実績を作っていくのか等、企業戦略によって役員報酬の決め方は変わってきます。
どちらかが正解で、どちらかが間違いということではありませんので、しっかり理解した上で、よく考えて決めていっていただきたいと思っております。