重要度の高い勘定科目ではありませんが、買掛金と同様に支払条件と未払金残高の整合性のチェックや、支払漏れがないかをチェックされます。
また、役員報酬の未払金に関して他の未払金とはちょっと違った考え方をしますので、覚えておいて損はないと思います。
取引条件とのチェック
受取手形や売掛金、支払手形、買掛金と同様に取引条件に対して異常な残高の未払金残高になっていないかを、推定有り高と実際有り高を使ってチェックされます。
例えば、給与の未払金であれば、末締めの10日払いであれば、月末に1ヶ月分の未払金が残っているはずですが、1ヶ月分以上残っていれば、資金難による支払の遅れがあるのではと疑われる可能性が高いですし、逆に給与の未払金が無い、又は1ヶ月未満であれば、粉飾が疑われる可能性があります。
また、未払金か未払費用かの勘定科目は別として、20日締めの翌10日払いであれば、前月21日〜当月20日までの1ヶ月分の未払金はもちろん、当月21日〜末日までの〆日以後の経費が未払金(又は未払費用)に計上されているかのチェックもされることとなります。
取引条件の話はこちらを参考に。
→金融機関の融資審査のポイント【取引条件と推定有り高編】
役員報酬と未払金
未払金の問題で1つ注意しておく必要があるのが、役員報酬と未払金の関係です。
役員報酬を下げて利益を出す場合
業績が悪くなってくると、役員報酬を下げることで利益を出そうとすることがあると思います。
これ自体は問題ないのですが、生活費が役員報酬だけでは、足りずに役員報酬以外に役員に対する貸付金(又は仮払金)としてお金を会社からもらっていると問題があります。(家賃などでもらうのは大丈夫です)
但し、注意すべきは、金融機関は「役員報酬+利益+減価償却費」の推移で企業の業績を追いかけていますので、役員報酬を下げて利益を出してもあまり効果は高くありません。
→【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字(メルマガ版財務講座)
役員報酬を下げないと赤字になってしまう場合に限っては、役員報酬を下げてでも黒字にすることの効果は非常にあります。
役員報酬を下げずに未払金として残す場合
業績悪化時に役員報酬の額は下げないのですが、資金繰りの関係上、役員の給料をしばらく未払にするケースがあります。
仕入れ先の代金を支払わなかったり、従業員のお給料を支払わなかったりするよりは金融機関の評価は高くなりますが、次の2つの点から、役員報酬を下げない合理的な理由を聞かれる可能性があります。
1つ目は、役員報酬は経費であるということ、2つ目は、未払金は負債であるということです。
業績が下がったのであれば、まず経営陣が責任をとって自分たちの報酬を下げることが筋と金融機関は考えます。
いつか業績が回復した時に未払計上しておいた給料を欲しいがためなのかはわかりませんが、役員報酬を下げず、企業の損益計算書上は経費を増やし、貸借対照表上は負債を増やすという企業にとって悪影響なことをし続けている経営者として見られてしまいます。
とはいえ、報酬も下げず、業績の良かった時と同額の報酬をもらいながら、資金繰りがキツイと金融機関に頼る経営者よりも、額面はともかく、実際にもらう金額を下げて資金繰りを優先にしている経営者のほうが評価されます。
編集後記
今までの経験上、融資審査において未払金で大きな問題になったことはありませんが、注意すべき点としては上記のようなものがあります。
とはいえ、役員報酬と未払金の関係も報酬が未払金として残っているかよりも、報酬を下げなくても黒字になるかどうかがポイントといえます。
また、報酬が未払金として残っている場合は、未払金のまま決算を終わらせるよりは、一年を超えて支払う見通しがつかないのであれば、必要な手続き(契約書等)をとり、役員借入金に科目を振替えてしまうことをお勧めします。
なぜなら、中小企業の場合、中小企業の特例として役員借入金を自己資本として見るケースがあるからです。
この辺の話についてはまた詳しくふれていきたいと思います。