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「経営者保証に関するガイドライン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
中小企業の場合、金融機関から借入をしようとすると、多くの場合経営者個人の連帯保証をもとめられるます。
しかし、2013年12月に「経営者保証に関するガイドライン」が発表され、翌2014年2月から適用されました。
一定の条件を満たせば経営者個人の連帯保証が不要など、経営者に係る負担が軽減されるガイドラインができました。
今回は「経営者保証に関するガイドライン」についてです。

金融機関に関する記事はこちらを参考にしてみてください。
「金融機関・銀行・資金調達」 に関する記事一覧

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今回は『経営者保証に関するガイドラインの目的と要件』です。(編集前のメルマガは2017年2月20日(月)に配信されています)

借入時の法人と個人事業主の違い

経営者個人の連帯保証を求められるのは法人のみで個人事業主は求められるとすれば事業主以外の連帯保証です。

個人事業主は無限責任

事業の形態には、無限責任の形態と有限責任の形態が存在します。
個人事業主は無限責任です。
法人は株式会社、合同会社、有限会社、合資会社、合名会社などの法人形態によって有限責任、無限責任にわかれるので法人=有限責任ではありませんが、後述します。

無限責任とは

厳密にはもう少し広義の意味ですが、簡単に表現すると負債に対して無限の責任を求められるのが無限責任です。
法人の場合には、原則、法人を解散すれば資本金以上の責任を求められませんが、無限責任の場合、事業の負債は事業を辞めた後も、その事業主だった個人が弁済義務を持ち、個人の資産を売却してでも負債の弁済をする必要があります。
つまり、連帯保証を個人に求めなくとも、貸した時点で個人が借入金の返済義務を負うこととなります。

法人は有限責任(一部を除く)

一方で法人は有限責任です。
前述したように会社の形態によりますので、具体例を書くと、

株式会社、有限会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人など、ほとんどの法人形態が有限責任です。

合名会社、合資会社、税理士法人、社労士法人、などが法人であっても無限責任になります。
※厳密には「合資会社」は直接無限責任社員と直接有限責任社員とが存在する会社です。

有限責任とは

負債に対して限りのある責任しか求められないことをいいます。
金融機関や債権者の持つ債権(=自社の負債)に対して、出資した資本金は諦めなければいけませんが、個人が資産を売却したり、会社解散後何年にも渡って負債を払い続けなければいけなかったりということはありません。

経営者保証に関するガイドラインは有限責任に摘要

経営者保証に関するガイドラインは有限責任事業に適用されます。
無限責任事業の場合には経営者個人の連帯保証は求められず(というより経営者自身の負債のため)、経営者保証に該当しないためです。

経営者保証はなぜ求められるのか?

中小企業の場合、会社と経営者は分離されておらず、株主=経営者=会社のような構図になっているケースが多々あるからです。
大企業の場合には、会社と経営者は分離されているので個人での連帯保証は求められないケースが多くあります。

中小企業の場合には、経営者が変わると業績が大きく変わったり、後継者がいなくて廃業したりと経営者個人に業績の多くがかかっていますので、金融機関としては会社に貸しているけど経営者本人の保証ももらって、少なくとも返済が終わるまでは責任を持って事業をするという覚悟をしてほしいと思っています。

また、一部の中小企業では、経営者の個人的な飲食代などが経費になっていたり、自宅や車が法人所有の社宅だったり、節税のために役員報酬が他の役員や社員より多かったりと、経営者自身が会社と個人を分離せず一体と捉えてるケースも多いのが現実です。

そのため、会社のみの有限責任では金融機関は不安で貸せないと判断し、経営者個人の連帯保証を求めるという結果になっています。

経営者保証のデメリット

会社をたたんでも経営者が借入金の保証をしなければいけないというだけでデメリットにしか感じないですが、具体的な問題点をいくつかご紹介します。

再チャレンジの困難さ

事業に失敗した際に日本では再チャレンジをしにくいといわれています。
経営者保証だけの問題ではありませんが、1度失敗して借入金の返済のみ残ってしまうと、再チャレンジをする際の足かせになります。

生活の安全がない

事業に失敗して自宅を失ったなどという話を聞くこともあるかと思いますが、この理由も経営者保証の問題です。
会社所有であれば、売却されても致し方ありませんが、自己所有であれば本来事業とは関係のないものなので売却してまで返済ということはおこりません。(担保にしていなければですが…)
連帯保証はもちろん、自宅を担保に借入ということが中小企業では多々あります。
いざ事業に失敗したら、その後の最低限の生活すら保証をされていないリスクがあるということになります。

後継者が見つからない

経営者の子どもであっても何千万、何億という借入金の保証人になることには抵抗があります。
これが、同族以外の第三者であればなおさらで、なぜ先代の社長の借入金まで背負わなければいけないのか、だったら後継者になんてなりたくないという人が増えてしまいます。

もちろん経営者保証だけの問題ではなく、赤字経営の結果の借金だから後継者になって保証したくないという問題もありますが、経営者が連帯保証をするということで、二の足を踏み後継者になることを尻込みするという現実があります。

経営者保証に関するガイドラインの目的

中小企業庁のホームページでは以下のように経営者保証に関するガイドラインの概要を発表しています。

(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと
(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること

(出典:中小企業庁より)

また、一般社団法人全国銀行教会では経営者保証ガイドラインについて以下のように説明しています。

中小企業の経営者による個人保証には、資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっている等、中小企業の活力を阻害する面もあり、個人保証の契約時および保証債務の整理時等において様々な課題が存在しております。
この「経営者保証に関するガイドライン」は、それらの課題に対する解決策の方向性を取りまとめたものです。

(出典:一般社団法人全国銀行教会のホームページより)

経営者保証に関するガイドラインは、中小企業の資金調達の円滑化、廃業時の経営者の最低資産を守ること、再チャレンジを促進することなどを目的に、どういう場合に経営者保証が不要かを明確にしたガイドラインといえます。

経営者保証に関するガイドラインの大枠

ではどういう場合に経営者保証を求めないのかというと、

(1)会社と経営者の関係が明確に区分・分離されていること
(2)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えていないこと
(3)適時適切に財務情報が提供されていること
(4)財務要件を満たしていること

などになります。

具体的にどういう項目があるかは次回以降に説明しますが、法人と個人が分離さていて、(1)と(2)の要件、会社の状況がわかるようになっていて、(3)の要件、そして返済能力が会社にある、(4)の要件を満たしていることが前提となります。

経営者保証を外せるということは、経営者にとってはリスク回避の意味もありますが、積極的な資金調達による事業への投資など良い効果が期待できます。
しかし、公私混同しているような法人や返済能力のないような法人には、経営者にも借りた責任をとってもらわなければいけない、経営者保証をつけようというのが、金融機関の一般的な考え方です。

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編集後記

借りたお金は当然責任を持って返す、株主でもあり、経営責任もある中小企業の経営者に連帯保証人になってもらうのは当たり前だという意見も当然ですがあります。
賛否はともかく、その主張にも一理あります。

保証もせずに借りたいのであれば、信用に値する会社でなければいけないとして規定されているのが、前述の4項目です。

本来、金融機関は担保はできる限りとりたいので、経営者保証は極力つけたいと考えていますが、国からの指針で作られたのが経営者保証に関するガイドラインです。

担保とは?

借入基礎知識:担保編 ①金融機関はなぜ担保を求めるのか 

借入基礎知識:担保編 ②人的担保と物的担保 特徴と違い 

借入基礎知識:担保編 ③不動産の評価方法と担保になりにくい不動産

信用保証協会もこの流れに従って、経営者保証が必要ない融資についての資格要件チェックシートなどを作っています。

信用保証協会とは?

信用保証協会の責任共有制度とは?信用保証協会の基礎。

経営者保証を外すのは、経営に置ける財務面での1つのゴールになりますので、目指していくことをお勧めします。

最後に

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