経営者がみるべき数字

会計を毎月みている方ならご存知だと思いますが、損益計算書も貸借対照表も、そしてキャッシュフロー計算書もすべてが過去の数字を追いかけているだけです。

更には、増えたお客様の数や、事業を続けることで得た信頼など、客観的な数値化が難しいものは損益計算書にはもちろん、貸借対照表の資産にすら現れてきません。

こんな欠陥のある会計ですから、会計を経営に活かそうとも思うこともできず、税理士や経理任せにしている経営者の方が多いのではないでしょうか?

しかし、会計はそれだけで経営全般に活かすのは難しくても、会社経営の客観的な結果の1つであり、他の数字と組み合わせることで、とても経営に役立つ数字となってきます。

今回は、会計がそれだけでは十分な力を発揮できない理由と経営へ十二分へ活かすために必要な方法について書いてみました。

今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で配信している内容です。

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このメルマガはシリーズものになっていますので、

【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

からお読み頂くことをお勧めします。

今回は『経営者は会計の数字だけをみていれば良いのか?経営者がみるべき数字とは?』です。(編集前のメルマガは2016年6月15日(水)に配信されています)

経営者がみるべき数字

会計の情報はどこまで言っても過去である

タイトルのとおりですが、会計の数字はどこまでいっても過去であり、しかもかなり昔の話になってしまいます。

例えばこんな営業スタイルの会社があったとします。
「テレアポ→訪問→サンプル紹介→サンプル使用→販売」

会計に出てくる情報は販売結果のみです。

この情報だけで果たしてどこまで経営の役に立つのでしょうか?

未来会計だなんだと言っても結局は過去

最近の流行りとして未来会計という言葉があります。

主にMQ会計を利用して来月いくら稼げば良いのか、いくらの売上があったら黒字になるのかなどのシミュレーション会計をすることがメインとなりますが、では、いくらの売上があったら黒字になりますと言われてどの程度経営の役に立つのでしょうか?

一般的な話として、売上はP(単価)×Q(数量)と言われていて、分解して考えましょうなどもこのMQ会計の中では説明されています。

もちろんMQ会計は優れた会計手法ですし、分析することで経営改善の役に立ちます。
なので、このサイトでもメルマガでもこれまで紹介してきました。
どう役立つのかは以下の記事を参考にしていただけたらと思います。

【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう

【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!

【VOL81】戦略MQ会計の活用方法を事例で紹介

【VOL82】戦略MQ会計を応用して未来の利益計画を作ろう

上記のように戦略MQ会計ももちろん経営の役には立ちます。

しかし、それだけで十分なのでしょうか?

本当に必要な情報は会計数値だけではない!

上記の事例である、

「テレアポ→訪問→サンプル紹介→サンプル使用→販売」

を営業の中心とする会社であれば、以下のような数字管理が必要になることが容易に想像ができるはずです。(営業スタイルが古いとか、営業方法自体をWEB活用に変えたほうが良いなどという話は今回は割愛します)

・テレアポのコール数

・訪問件数

・サンプル使用件数

・販売=成約数

テレアポのコール数に対しての訪問件数の割合や、訪問件数に対するサンプル使用件数の割合、販売件数に対する成約数の割合などを求めることが必要です。

更には今のテレアポコール数に対しての人員数や人件費などの数値、訪問件数に対する営業マンの人員数や人件費なども算出する必要があります。

これを出すことによって更に戦略MQ会計(=未来会計)がいきてくることとなります。

戦略MQ会計×KPI数値=最強の法則

KPIとは「Key Performance Indicator(キーパフォーマンスインジゲーター)」の頭文字をとった略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されることが多いようです。

流行りのマーケティング用語のような横文字はわかりづらいのであまり使いたくなかったのですが、簡単に言えば目標を達成するためにポイントとなる数値と思っていただければ幸いです。

ちなみにこの目標をKGIといい「Key Goal Indicator(キーゴールインジゲーター)」といい、日本語では「重要目標達成指標」と言います。

KGI=目標を達成するための小目標のようなものが、KPIだと思っていただければ大雑把に間違いはありません。

なので、目標=KGIを売上◯万円とすれば、数量を何個売るとか、単価をいくらにするとか、そういうものがKPIになりますし、利益を出すことを目標=KGIにすれば、KPIには原価削減や固定費削減も含まれてきます。

つまりKGIとKPIをどう設定するかが大切ということです。

(KPIとKGIについて、わかりやすいように説明していますので、実際の意味とは多少違います。詳しく知りたい方はこちらのKPIとは?KGIとの違いは?目標設定に欠かせない2大項目について徹底解説をみていただけたらと思います。)

先ほどの事例に戻れば、仮に

訪問数/テレアポコール数(アポイントがとれる率)=10%
サンプル使用件数/訪問数=80%
成約数(販売数)/サンプル使用件数=50%

とします。(現実性があるか否かは今回は度外視でお願いします。)

つまり、1,000件コールすれば100件が訪問するお約束ができて、100件訪問すれば80件はサンプルを使用してくれて、80件サンプルを使用してくれれば、40件は販売できるという計算が成り立ちます。

コール数に対して4%の成約が見込めるということですね。

1件5万円の商品を売っていれば、40件×5万円=200万円の売上です。2倍にする必要があればコール数を2,000件にすれば達成できるという仮説が成り立ちます。
または、訪問数/アポイント数を10%から20%にアップするという方法も可能です。

コール数を増やすためには人を増やす必要があるのか?
それともマニュアルを変えれば効率的になるのか?
訪問件数が2倍になるということは営業マンの数も2倍必要なのか?
それともルート効率をあげれば現状の人数で大丈夫なのか?
それなら近い地域の訪問を同じ日の同じ時間帯に固めるように電話する人たちのマニュアルに組み込まなくては…

などなど考察する箇所はたくさんありますが、会計数値と営業数値を見える化することで経営改善がしやすくなります。

WEBの場合でも同じです。
アクセス数→問い合わせ数→打ち合わせ数→成約
というフローがあった場合、各数値を把握することで、経営は可視化できます。

どこがボトルネックになっているのかさえわかれば、そこに対策をして、対策前と対策後の数値変化を検証していけば良いのです。
(とは言ってもそれが難しいのですが・・・)

会計数字を見て経営判断では遅すぎる理由

例えば最初の事例でサンプル商品を使ってもらう期間が3ヶ月あったとします。

会計の数字がでてくるのは、4ヶ月後です。(1月にサンプル使用した人が3ヶ月使って4月に購入したとして、4月の試算表が毎月試算表を作っていたとしても最速で5月上旬になるため)

しかし、4ヶ月後になって売上が減っていると対策を練っても効果が現れるのは最速で更に4ヶ月〜5ヶ月かかります。

あっという間に1年が経ってしまいます。

一方で、コール数や訪問数、またそれに関する数字を検証していれば、その変化した数字に対して翌月には原因検証と対策ができるわけです。

建設業などの工事期間が長くなるものや、製造業で受注生産をしていて製造期間が長い業種などでは、会計数値を見てから対策を考えていては即命取りになります。

費用対効果の検証も会計×KPIで効果的

試算表を見て、広告費や人件費に対してどれだけの効果がでているのかを検証するのはかなり手間がかかることは、やったことがある人なら誰もが知っていると思います。

例えば上記の事例で、訪問数が増えたから営業マンを1人雇い、コール数を増やすためにマニュアルの改善をし、結果的に売上が2倍になったとします。

会計で見ると、人件費が1人分増え、売上が2倍になったことしかわかりません。
しかも売上が2倍になるのは最短でも3ヶ月後。

試算表だけみて、この人件費1人分が増えたことによる効果がわかるかというと簡単にはわかりません。

しかし、コール数や訪問数、サンプル使用件数を把握していれば、

コール数の増加はマニュアル改善の効果ですし、訪問数の増加は人件費増加による効果です。(訪問方法の変更などをしていても1人あたりの訪問数を比較すれば、人件費の効果と訪問方法の変更による効果とをわけることができます。)

なんとなく売上が増えているとか、なんとなく売上が下がっているとか、そういう状態から脱却できます。

会計は重要!

改めて強調しておくと会計は重要です。

事業経営には利益とお金が絶対に必須だからです。

営業効率(訪問件数や成約率など)がどんなによくなろうとも、赤字で資金ショートをしてしまっては事業は継続できません。
そして金融機関も会計を基準に融資判断をします。

財務や会計に重要指数(KPI)を設定することで、より経営効率をあげることはできますが、財務や会計が不要な訳では決してありません。

むしろとても重要な指標です。

KPIを正しく設定し、正しく検証し、改善できるか?

これが最も大切です。
的外れな指数目標を持ってもムダな労力がかかるだけですし、ただ設定するだけで検証をしなければ無意味です。
また、検証をしても現状を把握するだけで、次の一手を考えられなければ、これまた無意味です。

そして、この設定、検証、改善のサイクルを回すこと、いわゆるPDCAサイクルの実施と継続が一番難しい問題です。

弊社でも導入したいお客様へのサポートをしていますが、一社一社ボトルネックになっている問題は違いますので、テンプレート式での対応はできません。

しかし、正しく設定しサイクルを回せれば、ほぼ間違いなく業績は向上します。(中小企業に限りますが・・・)

弊社でこのサポートをさせていただいているお客様は100%成長しています。

と、どうでも良い弊社の話はここまでにして、KPI設定のための考え方の参考の1つとしてBSC(バランススコアカード)という考え方をご紹介します。

BSCとは、経営目標を財務の視点だけでなく、お客様の視点、業務プロセス・効率の視点、人材の視点の4つから数値化しアプローチするという方法です。

今回は詳細な説明は割愛し、また別の機会にご紹介しますが考え方としては参考になります。

編集後記

数字、数字というと堅苦しい気がしますし、全てが数字で表せるわけではないという声も聞こえてきそうですが、改めて経営において数字が大切ということを強調します。

もちろん数字が全てではありませんし、数値で表せないものもあります。

しかし、数値以外に客観的な指標はありません。

バランススコアカードの考え方の中には、お客様満足度すら数値化してしまう考え方もあります。

また、よく参考としてご紹介しますが、星野リゾートでは顧客満足度をアンケートを活用して把握し、利益と並ぶ重要視数として活用しています。
星野リゾート流 :「顧客満足」と「利益」を同時獲得する方法

顧客満足度は数値化できますし、顧客満足と利益は両立できることがこの記事からわかります。

弊社でも財務のみならず経営指標を数値化し経営の役に立てるサポートをしています。
重要な指標が事業や会社によって違うので、完全にオーダーメイド型で対応しているため、対応できるお客様の数は限られてしまいますが、成果は今のところ全社で出ています。

また、機会がある毎に情報発信をしていきますので、参考にしていただけたら幸いです。

最後に

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