売上総利益、粗利益、限界利益の違いについて前回ご説明させていただきました。
売上総利益=粗利益ですが、売上総利益(粗利益)と限界利益は厳密には意味が違います。
細かいことは覚える必要がありませんが、それぞれの利益の意味と経営への活かし方を今回の内容で参考にしていただけたらと思います。
前回の内容
→【VOL95】事業の成果を知るための財務分析に必要な代表的な財務指標と用語の意味
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今回は『売上総利益(粗利益)と限界利益の違いと経営への活かし方!』です。(編集前のメルマガは2016年3月2日(水)に配信されています)
この記事の目次
売上総利益(粗利益)と限界利益の違い
前回も説明していますが、売上総利益は売上から原価を差し引いたもので、限界利益は売上から変動費を差し引いたものです。
原価には、
①材料費や外注費といった売上に比例して変動する経費
②工場の従業員などの賃金給料
③工場の地代家賃、水道光熱費、その他の製造経費
が含まれますが、
変動費には、
①材料費や外注費といった売上に比例して変動する経費
しか含まれません。
→【VOL95】事業の成果を知るための財務分析に必要な代表的な財務指標と用語の意味
→【VOL4】財務に強い経営者の習慣の1つである費用の色分けの仕方(メルマガ版財務講座)
原価のメリットとデメリット
製品1個作るのにいくらお金がかかっているかを表すのが原価ですから、1個あたりのコストがわかります。
製品やサービスを作るのに、材料などの変動費だけでは無理で、従業員の努力はもちろん、工場や研究所の家賃や水道光熱費などのコストがかかります。
これらのコストを全く無視した変動費は製品やサービスを1つ作るためにいくらのコストがかかったかを表しているとは言えません。
そのため、正確なコストを知りたければ原価計算という作業が必要になりますし、1つあたりの製品サービスコストを知ることはとても重要です。
しかし、原価計算の矛盾点は、販売個数が増えれば増えるほど、1個あたりのコストが少なくなり、販売個数が減れば減るほど1個あたりのコストが高くなってしまい、経営判断がしづらいという点にあります。
原価と変動費をくらべてみる
原価と変動費でこれだけ違うので例題で見ていきましょう。
1個1万円で材料を仕入れて、工場で加工し、2万円で販売する商品があるとします。
工場には工員が1人いて、月のお給料は20万円です。
工場を維持するのに家賃やら水道光熱費やらが月に10万円かかります。
例題を簡単にするためにその他のものは経費としてかからないとしましょう。(社会保険や税金など)
さて、いくら何個商品を販売したら赤字にならないでしょうか?
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
きっとこう考えたのではないでしょうか?
①固定費がお給料と工場維持代で30万かかる
②商品1個売って1万円の利益がでる(販売価格2万円-材料代1万円)
③30万円÷1万円=30個
30個売れば良いんだ!と。
正解です!
これが限界利益の考え方、つまり変動費である材料費と、固定費であるお給料と工場維持代をわけて考えた考え方です。
売上総利益(粗利益)と限界利益それぞれで経営改善方法を考えてみる
上記の例題で、20個売れている会社があったとしましょう。
なんとか赤字脱出をするための経営改善方法を考えてみましょう。
もちろん、正解はあと10個売れば損益トントンになります。
売上総利益で考えた場合
売上高 40万円(20個×2万円)
原価 50万円(材料費1万円×20個+給料20万円+工場維持代10万円)
粗利益 ▲10万円
改善方法
1個あたり作るのに、50万円÷20個=2.5万円かかっているわけだから、なんとしてでも販売価格以下の製造原価にしよう!という発想しか生まれません。
その結果、材料仕入先を値切る、従業員の給料を削減する、電気や水道を節約して使うなど、コスト削減思考に動きがちです。
いい結果が生まれやすいとはいいにくいのは経営者の方ならわかるのではないでしょうか?
限界利益で考えた場合
売上高 40万円(2万円×20個)
変動費 20万円(1万円×20個)
限界利益 20万円
その他 30万円(給料20万円+工場維持代10万円)
最終利益 ▲10万円
改善方法
足りない利益10万円÷1個販売した時の限界利益1万円=10個
つまり、今より10個多く売る
限界利益20万円<その他30万円 その他を10万円削減する という販売を増やす方法と、経費を削る両方に視点がいきます。 もしくはその両方を組み合わせるという方法もあり、売上総利益=原価で考えるより良い方向に進みます。 実際にどこに手を打てば利益がでるかは、MQ会計での利益感度分析が有効です。 →【VOL79】利益感度分析で経営改善に最も効果的な一手を探そう
→【VOL80】戦略MQ会計で儲かる経営の地図を手に入れよう!
→【VOL82】戦略MQ会計を応用して未来の利益計画を作ろう
編集後記
中小企業であれば、よほどのキャパオーバー、人手が足りない、事務所が狭いなどがない限り、製造原価計算は必要ありません。
限界利益が1円でも出る仕事を、ひたすらお客様に喜んでいただくためにやっていくことが、事業成功の早道です。(1円は言い過ぎですし、なかなかお客様に喜ばれない業種もあると思いますが、基本的な考え方という意味でご理解いただけたらと思います。)
変に製造原価計算などして、コストカットに注力しても価格面では大企業には勝てません。
それよりも、商品や製品はもちろん、販売員、営業マンの付加価値を高め、高くても買ってもらえるような事業構造をつくることこそ、中小企業には必要ですし、その事業構造作りこそ中小企業経営者の仕事ではないでしょうか?
事業計画作成ツール
参考までに