支払利息・割引料は、金融機関の収入になるものですので、他の金融機関に何%の金利を払っているのかは気になるところです。
また利率は企業の財務状態によって変わりますので、金利が高ければ財務状態が良くないと他の金融機関が判断しているということになりますし、金利が低ければその逆となるわけですから、他の金融機関がその企業をどう評価しているかを見る1つの指標ともなります。
借入金及び支払利子の内訳書から金利をチェックする
厳密には支払利息の内訳書というのは存在せず、借入金及び支払利子の内訳書に金融機関を含む借入先や借入金額、利息などを記載します。
参考:
こちらも厳密には長期・短期とそれぞれ内訳書があるのではなく、あわせて借入金及び支払利子の内訳書となりますが、それぞれ性質が違うので別々に解説しています。
→金融機関の融資審査のポイント【長期借入金の内訳書編】金融機関の融資審査のポイント【長期借入金の内訳書編】
記載事項は、「借入先名称、法人・代表者との関係、借入先住所、期末現在借入金残高、期中支払利息額、利率、借入理由、担保の内容」です。
どこからいくら借りていて、借入理由は何で、利率はいくらで、1年でいくらの利息の支払があるかなど、借入に関するほとんどのことが丸裸になります。(内訳書にすべて記載すればですが…)
例えば、金融機関の借入より、代表者本人やその親族からの借入に対する利息の金利が高ければ、実は消費者金融などの高い利息のところから個人が借りて企業に貸しているからなのではないかなど、疑われることとなりますので注意が必要です。
または私腹を肥やそうとしているのではないかなどの疑惑を持たれる可能性もありますので、節税のためや役員報酬の一部など、合理的な理由が必要となります。
金利は金融機関からの評価をあらわす
企業の財務内容が良ければ良いほど、金利は低くなる傾向があります。
財務内容が良い企業にはどこの金融機関もお金を貸したいわけですから、金利を下げることはもちろん好条件での貸出競争がおこることになるからです。
逆に、財務内容が悪ければ悪いほど、金利は高くなり、追加の担保も要求され厳しいこととなります。
信用格付けにも影響
財務状況が良ければ金利は低くなり、悪ければ金利は高くなると書きましたが、金融機関が財務状態を判断する指標は信用格付けになります。
→金融機関(銀行)の融資審査の最大のポイント、信用格付けを徹底解剖
→信用格付け対策が重要!信用格付けの企業へのメリットとデメリット
そしてこの信用格付けに支払利息が影響する項目があります。
インタレスト・カバレッジ・レシオと呼ばれる項目であり、「(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料」で計算され、企業の支払能力をみる指標といわれています。
金融機関によって配点の違いがありますが、一般的には、計算結果が「5」を超えると最高点が配点され、「1」未満になると最低点であるゼロ点になることが多いようです。
割引料
割引手形の割引にかかる利息です。
参考:
→金融機関の融資審査のポイント【受取手形の内訳書編】
割引料に関しても、どのくらいの利率で割り引いているのか、どのくらいの頻度で割り引いているのかがわかれば、その企業の資金繰り状況がわかるので、確認される項目となります。
手形を割り引く場合の金融機関の選び方をまとめた記事があるので、参考程度にご覧下さい。
実質借入金利の計算の仕方
借入金には期中の増減もあるので、実質的な金利は何%くらいなのかを計算する必要があります。
実はこの計算はとても簡単で、
(支払利息+割引料)÷(借入金+割引手形)×100%
で計算することが可能です。
但し、期中に借りて期中に返してしまった短期の借入金や割引手形は、決算書にも内訳書にも載ってこないので、期中の借入が多い場合には金利が実際より高くなってしまうので、その場合には金融機関にキチンと説明しましょう。
(なぜ、そんなに短期の借入や割引手形が必要だったのか、資金繰りに困っているのではないかと疑われるという別の問題が発生しますが。)
逆に決算直前に借入をした場合には、実際の金利よりも低く計算されることとなります。
編集後記
金利は金融機関にとっては収入源の1つでもあり、貸出の際の交渉条件の1つでもあり、様々なことを物語っている科目となります。
また、金利が異常に高い場合には、高利貸しの利用や期中に怪しい借入があるのではないかなどを疑うようになります。
資金繰りに困って高い金利の借入や割引をしていなければ、ほとんど問題とはなりませんし、逆に高い金利で借りていた場合には、合理的な理由がなければ融資審査の際に不利になります。
考え方によっては、この金利や貸出期間、担保などは複数金融機関から借入の提案を受ける際には重要な選択基準となるので、金利がどう変動するのか(主に信用格付けですが、他行とのバランスも重視されます。)をキチンと理解しておくと、金融機関との付き合いがしやすくなります。