金融機関(銀行)の融資審査の際に何がどう見られているかご存知でしょうか?
2期分または3期分の決算書の提出を求められることが多いと思いますが、数字だけではなく様々なところを見られています。
実は決算書の一番上の税務署から印鑑をもらう別表一だけでもたくさんのところが見られているのです。
今回は別表一の見られているポイントを中心にまとめてみました。
この記事の目次
決算書とは?
まずは決算書とは何かというと、基本的には税務署に提出した申告書類を指すことが多いようです。
税務署への申告書類は以下のものから構成されます。
・別表
・決算報告書
・勘定科目内訳書
・税務権限代理証書
・事業概況書
通常はここまでのもので良いことが多いですが、
更に近年では、
・税額適用明細書
・復興特別法人税申告書
などが加わります。
また、金融機関によっては、
都道府県及び市区町村への申告書も必要な場合もあります。
どこまで提出すれば良いかは金融機関に確認して頂ければ良いと思いますが、決算書を決算報告書(貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費、製造原価報告書、株主資本変動計算書、個別注記表)のみと考えている方も多いので注意が必要です。
決算書の会社名
法人名と代表者名及びそれぞれの住所などをチェックされます。
稀にですが、複数の会社の経営をしていて、融資の申し込みをした企業と別の企業の決算書を持ってくる方がいるためです。
違う会社の決算書をもとに間違えて融資してしまったら取り返しがつかないことになってしまうからです。
また、代表者の変更や本店所在地の変更の有無、本店所在地と代表者住所が一緒か否かなどのチェックもされます。
代表者や本店所在地の変更があればその理由を聞かれるでしょうし、本店所在地と代表者住所が同じ場合には家賃等はどうなっているのかを確認されます。
税務署の受領印
最近は電子申告も主流になってきているので、実際の印鑑ではない場合も増えていますが、税務署に提出した書類と金融機関に持ってきた書類が同じものなのかをチェックしています。
(細かくは決算報告書の損益計算書の最終利益が別表4の最初の数字と一致しているか、別表4の最後の数字が別表1のスタートの数字と一致しているかなど)
電子申告の場合には、電子データの送信完了通知が税務署の印鑑の代わりとなります。
税理士の署名押印
申告書が税理士が作成またはチェックしたものかどうかを見ます。
必ずしも税理士の関与が必要なわけではありませんので、融資審査に直接影響することはありませんが、やはり税理士が関与している決算書類のほうが正確だろうという心象は避けられません。
税理士の変更の有無
基本的には融資審査に影響することはありませんが、頻繁な税理士変更は明確な理由が説明できたほうが良い傾向があります。
税理士とのトラブルや、税理士報酬の支払い遅れ、無理な決算書の調整(粉飾や脱税)をしようとして断られた等のあらぬ疑惑を招く可能性もあります。
決算期の変更の有無
法人は決算期を自由に変更できますが、合法か非合法かは問わず利益を調整するためのことが多いため、金融機関が警戒するケースがあります。
非合法はともかく、合法な節税等が目的であれば、その理由を明確に説明できれば大丈夫です。
但し、頻繁な場合は注意が必要です。
期限内申告をしているか
通常決算日より2ヶ月以内、延長している企業は3ヶ月以内となっています。
期限を過ぎての申告だと、融資した借入金の返済期日を守ってもらえないのではないかなどという疑念を招く結果となります。
期日内であれば、多少は毎年ギリギリの申告か、とか、毎年早めの申告だな等思われる可能性がありますが、心象レベル以外で融資審査に影響することはありません。
法人税申告書の法人税額と法人税の納付書の金額は一致するか?
これも法人税の申告書が税務署に出されたものと金融機関に出されたものが一緒かどうかを確認するためのものです。
今でこそほとんど無いようですが、一昔前は「税務署提出用の決算書」、「金融機関提出用の決算書」「◯◯のための決算書」などと複数作成されていたという本当か嘘かわからない噂があったようです。
納税は期日内に行われているか
納税も申告期日と同様です。
支払能力を見るとともに、期日意識を確認する資料となります。
編集後記
決算書の中でも別表1と呼ばれる1枚目の紙から見られるものをまとめてみました。
はじめて知った時は、こんなにも細かい情報をあの資料から読み取っているのかと驚いたものです。
実は別表1だけでなく、各別表ごと、内訳書の各勘定科目ごとにたくさんのことを金融機関は分析しています。
(担当者に能力があればの話ですが・・・)
1つ1つまとめていこうと思っていますので、金融機関なんて貸借対照表と損益計算書しか見てないでしょ?と思っていた方にこそ、ぜひご覧頂けたらと思います。