金融機関(銀行)からの融資の審査基準にはどんな項目があるかご存知でしょうか?
何をどのように審査しているのかがわからないと、どう融資のお願いをして良いかわからないのではないでしょうか?
融資の審査基準がわかれば、金融機関(銀行)が企業にお金を貸す際に何を心配しているかがわかります。
相手が何を知りたいのかを把握しておけば余計な手間が省けて、お互いスムーズに取引できるので、ぜひ知っておきましょう。
融資の審査基準:①担保基準
以前はこの担保基準が大枠を占めていました。
現在では企業の事業そのものに着目していこうということで、企業の業績や将来性に注目されるようになってきていますが、それでも依然として根強く残っております。
人的担保
保証人とか連帯保証人とか言われているものです。
借り主が返済できなくなった場合に変わりに返済してくれる人という意味です。
物的担保
土地や建物、機械や車両、場合によっては在庫や売掛金などが対象になります。
昔から続く土地神話というのが未だ根強く残っており、不動産の物的担保というのは、所有している土地がある場合には借入の際には求められるケースが多くあります。
この場合抵当権や根抵当権を設定します。
物的担保はどう評価されているのかはこちらから。
→借入基礎知識:担保編 ③不動産の評価方法と担保になりにくい不動産
また、物的担保と人的担保の詳しい説明や、連帯保証人と保証人の違い、根抵当権と抵当権の違いなどはこちらから。
なぜ金融機関が担保を求めるのかはこちらから。
融資の審査基準:②定性評価
数字では評価しづらい経営者の資質や、社風、業界の成長性などを加味したもの。
例えば、以下のようなものがあります。
経営者の資質
中小企業は経営者で決まるともいわれるくらい大事な部分です。
起業の経緯や、これまでの経歴はもちろん、今後のビジョンや志なども重要になってきます。
また、役員や従業員、その他関係者からの評判なども関係します。
株主の構成
同族会社なのかそうではないのか。
誰が実質的な会社のオーナーなのか等によって審査は変わってきます。
(例えば会長と社長がいる場合、株を持っているほうの意向はどうなのか等)
従業員の特質(年齢構成、仕事キャリア等)
どんなメンバーで構成されていて、社風は明るいかなどが見られます。
経験者が多いのか、年齢は若いのかなど、業種にもよる部分があります。
外部関係者(会計士・監査法人・弁護士等)
経営者、経営陣の交友関係者
類は友を呼ぶではありませんが、どういう人たちと仲が良いのかである程度わかる部分があります。
特に、同じ金融機関から借入をしている企業の経営者などが入れば参考にするケースがあります。
競合状態
競合に比べてどうなのかという部分もありますが、競合についてどう考えているのかをヒアリングされます。
客観的に分析できているのか、批判的なのか、対策は合理的に説明できるかなどが審査に影響してきます。
取引金融機関(銀行、証券等)
他の金融機関や証券会社との取引があるのかないのか、あるのであれば額や取引年数等などが確認されます。
主要な取引先(販売・仕入れ先等)
どんな取引先があるのかを確認されます。
危険な取引先があればマイナス審査になルケースもあります。
業界の特徴(成長性、収益性、規模等)
業界、業種の成長性や全経済の中での業界の規模などが見られます。
これから伸びる業界、業種なのか、それともしぼんでいく業界、業種なのかによって審査は変わってきます。
市場規模(規制、参入障壁、シェア、競争力)
業界の中での自社のシェアや、今後競合と戦っていくための競争力(=強み)などが聞かれます。
また、新規参入するための規制や参入障壁があるのかないのかなどもヒアリングされます。
以上
こういった数値化が難しく、主観が入ってしまいある意味ではあやふやになってしまう部分が定性評価といわれます。
融資の審査基準:③定量評価
いわゆる格付け表といわれるもので、すべて決算書の数字から導き出されます。
定性評価とは違い、良くいえば客観的、悪きいえば画一的な審査基準となります。
金融機関によって若干違いますが、主に以下のような項目で評価されます。
自己資本比率
「自己資本÷総資産」で計算され、企業の安定性を示す指標です。
(詳しく知りたい方は過去の記事をご覧下さい→【VOL50】貸借対照表で見るべき大事な数字:自己資本比率とは?)
ギアリング比率
「有利子負債(短期・長期借入金社債等)÷自己資本」で計算され、自己資本の何倍(又は何分の一)の借金があるかを示します。
固定長期適合率
「固定資産÷(固定負債+自己資本)」で計算され、長期的な投資である固定資産にかけたお金をどの程度だけ長期の資金で調達できているかを示します。
流動比率
「流動資産÷流動負債」で計算され、現金預金と1年以内に入金するものの額と、1年以内に支払するものの額の割合を示します。
売上高経常利益率
「経常利益÷売上高」で計算され、売上のうち何%が経常利益として残っているかを表す指標です。
少ない売上高でたくさんの利益が出ているほうが経営効率が良いということで評価されます。
総資本経常利益率
「経常利益÷総資産」で計算され、会社のすべての資産、つまり運用しているお金の何%利益が出ているかを見る指標です。
投資の世界でいう利回りに当たります。
収益フロー
何期連続黒字であるかという指標です。
多くは2〜3期分の決算書を見ますので、3期連続黒字、2期連続黒字、単年黒字で評価され、直近(前年)が赤字だとその前が黒字でも評価は最低になります。
経常利益増加率
「(当期経常利益ー前期経常利益)÷前期経常利益」で計算され、前年からの経常利益の増収率を見る指標であり、成長性を確認するための指標です。
自己資本額
出資または自社で過去に稼いできた利益の積み重ねであり、金額が大きいほど、財務状態が安定している証拠としてみられます。
売上高
企業の規模を示す指標です。
債務償還年数
「有利子負債(短期・長期借入金、社債等)÷償却前営業利益」で計算され、有利子負債(借入)を何年で返済できるのかの参考になる指標となります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
「(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料」で計算され、企業の利息の支払能力を測る指標です。
キャッシュフロー額
「営業利益+減価償却費」で計算され、当期の計算上の現金預金の増加額と見なされます。
金融機関の審査は総合評価
以上の3つのどれかが決め手になる場合もありますが、3つが総合的に判断される場合もあります。
現在では、企業そのものを審査しようという風潮が強くなってきていますので、定性評価である経営者の資質や企業の将来性を重視し、今までの業績である定量評価で細くしていこうという動きもありますが、まだまだ担保主義と過去の数字主義(定量評価)が根強く残っております。
しかし、これは金融機関がお金を貸す組織である以上、返済されるかどうかを気にするわけであり、将来の実現できるかどうかの夢物語よりも、現実に換金できる物的担保や代わりに返済してくれる保証人、はたまた過去の積み上げてきた実績を重視するというのは、当然といえば当然の傾向です。
そのためにも、担保戦略や、定量評価を意識した決算書作りが必要になってくるのです。
担保戦略についてはこちらで紹介しています。
定量評価(信用格付け)については後日紹介させて頂きます。
何か疑問点があれば、こちらからお問い合わせ下さい。
→お問い合わせ
編集後記
金融機関(銀行)が何を重視して、どんな審査基準を設けているかご理解頂けたでしょうか?
金融機関(銀行)が一番恐れているのは貸したお金が返ってこないことです。
この心配である返済ができるということを、いかに客観的にそして論理的に説明することが大事です。
そういう意味でも、返せなかったら不動産を売って返済しますというのは信用に値したわけです。
しかし、そうはいっても不動産を持っていない会社も、不動産を担保に入れていて既に担保価値がない会社もあるかと思います。
次回以降で、金融機関の審査基準の中でも、重要ファクターであり、今後重要度があがってくることが予測される信用格付けについてご説明させて頂きます。