財務三表とよばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書には入っていませんが、事業を経営していく上で大切になるのが、資金繰り表です。
公の書類になっていないため、独自の資金繰り表を使用している企業が多いですが、抑えておいてほしいポイントをご説明していきますので、参考にしていただければ幸いです。
また、資金繰り表を作成していないという事業経営者の方も、この機会に資金繰り表の作成を検討してみてはいかがでしょうか?
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今回は『資金繰り表の基礎と3つの収支を抑えた作り方』です。(編集前のメルマガは2016年10月5日(水)に配信されています)
この記事の目次
資金繰り表作成の目的
資金繰り表には期間による種類があり、一般的には「年、月、日」の3つを目的に合わせて作成します。
どれも資金繰り、つまり手元現金預金の推移がどうなるかを予測し、資金ショートをしないかどうかを把握することが目的となります。
年に関しては、金融機関に5カ年計画などを出したときに作ることが多く、5カ年の中で目標の売上、利益を達成できた場合に追加融資が必要か?8割の達成だったらどうなるのか?などの参考資料として使われることが多くあります。
月に関しては一般的な資金繰り表で季節変動がある業種などでは必ず作ることをお勧めします。
これも大雑把な傾向がつかめるだけで、本当に資金繰りがわかるのは、毎日の資金繰り表となります。
特に資金繰りに不安のある企業は必ず作成することをお勧めします。
支払日が月末の場合には月別の資金繰り表でもある程度わかりますが、10日や25日が支払日の企業では、月末にはお金が足りても支払日にお金がショートすることが多々ありますので、まずは日別の資金繰り表を作成し、いつのタイミングでもっとも資金が減るのかを把握し、そこを基準に資金繰りを考えるようにしましょう。
手元現金預金の目安
一般的には月商の3ヶ月分が理想、月商の1ヶ月を切ると危険と言われています。
多くの事業形態で、ほぼ当てはまるのですが、厳密にいえば月商で考えるのは危険です。
仕入や外注費などの変動経費がどの程度あり、入金支払のタイミングはどうなっているのか、固定費はどのくらいかかっているのか、などの要素を検証し、自社にとって適正な手元現金預金残高の目安を見つけましょう。
詳しくは以前書いたこの記事を参考にしてみてください。
→【VOL39】事業に必要な運転資金を「月商何ヶ月分」という危険な考え方をしていませんか?
資金繰りも予算と実績で考える
サラリーマンのように毎月決まった額の入金があるような事業を除き、毎月の入金額と支払額は変動しますので、予測を立てることが重要になります。
また、事業計画と同様ですが、予算(予想)を立て実績との差をはかることで、経営者自身の先を読む力の正確性が増します。
作りはじめた当初は、予測と実績の差が大きくなり、何ヶ月も先の予測をする意味があるのかと疑問に思うこともあると思いますが、やり慣れると予実の差は小さくなります。
これは私自身がコンサルをしていての体感ですが、事業計画も含め予実の精度が高い経営者の会社ほど儲かっているという事実があります。
常に予実を作りPDCAサイクルを回すことで精度を高め、不足の事態がない経営ができるようになります。
多少面倒でも、予算も作ることは絶対に必要です。
また、税理士事務所や経理にお任せという経営者も多いですが、作成作業自体はともかくとして、出来上がった資金繰りの予測に対しては経営者自身が興味と責任を持ちましょう。
但し、資金繰りに余裕があるのに、日別の資金繰りを経営者が気にする必要はありません。
資金繰りの状況によりますが、6ヶ月後や3年後などを意識しながら、金融機関との付き合い方などを検討しながら、月別や年別の資金繰りを見ながら戦略を考える必要があります。
資金繰りは最悪を想定して考える
厳密には最悪を想定したパターンも考えるという意味ですが、売上が計画通り100%上がった状態、入金も一社も遅れることなく入金した場合で考えては不足の事態に対応できません。
売上は過去の計画対実績の割合を参考にするのはもちろん、そこから更に80%程度しか売上があがらなかった場合も考えて資金繰りを作成し、入金も最悪一番入金額の大きい取引先が入金しなかった場合に資金繰りを回せるのかを検討する必要があります。
理想は支払日の支払は1社も入金しなくても支払が出来る状態です。
A社の入金を待たないとB社の支払ができないような状況は、資金繰り末期といえます。
早急に金融機関からの借入を含む資金対策が必要な状態です。
資金繰り表で3つの収支を把握する
資金繰り表では必ず3つの収支を把握し、資金繰りを困難にしている原因を探しましょう。
日別の資金繰りの際には収支を分けなくても良いですが、月別の収支を見る際には収支別に集計し直して予算と実績を比較することをお勧めします。
経常収支
損益計算書の経常利益と同じ意味での経常という言葉です。
売掛金の入金や買掛金や未払金の支払など、毎月事業を行う上で必要な資金のみでの収支を表すのが、この経常収支です。
季節変動があるような業種では当然経常収支がマイナスになる月もあるかもしれませんが、どの月がマイナスになるのか、マイナスになる月の前にどの程度資金を貯めておかなければいけないのかなど、何年か資金繰り表をつけていけばわかるようになります。
損益計算書は会計処理によって損益が変わることもありますが、この資金繰り表だけは変わることがありません。
つまり、年間通して経常収支がマイナスの場合には、借入金を返済する力はもちろん、新しい投資をする力も会社にはないということになります。
経常収支がマイナスの場合には早急に対策が必要となります。
設備収支
機械や備品などの設備を新規に購入したことによる支出や、逆に売却したことによる収入の差し引きを表します。
資金繰りがマイナスな理由が一時的な設備投資による支出であれば特に問題がありませんが、逆に売却したことによる収入で資金繰りが一時的にプラスであるにも関わらず手元にお金があると勘違いしていたら大変なことになります。
予算を立てる際には、設備投資をどの段階でできるのか、購入と支払タイミング(一括か分割かローンかなど)をどうするのかなどを考えることができ、実績よりも予算を立てる上で非常に重要な項目となります。
財務収支
主に金融機関からの借入や役員からの借入金などの収支を表す欄となります。
新規借入をした際にはプラスとなりますが、その借入が何に対応するものなのかを見逃してはいけません。
新規設備投資に対するものであれば問題ありませんが、経常収支が累積でマイナスな分を補填しているようだと、黄色信号です。
また、経常収支の毎月の平均が、財務収支の支出の部分を上回っているかも1つのポイントとなります。
下回っているようであれば、金融機関からの追加融資がどこかのタイミングで必要となりますので、金融機関とどう付き合っていくかが大きなポイントとなります。
また、新規借入が難しいようであれば、借入金の返済自体を減らす方法を考える必要があります。
もちろん経常収支のプラスが返済を上回るようにできるのがベストですが。。。
中小企業の金融機関との付き合い方についてはこちら
→「金融機関・銀行・資金調達」に関する記事一覧
編集後記
意外と軽視しがちな資金繰表ですが、非常に重要なものですので、どんぶり勘定はせずキチンと管理することをお勧めします。
赤字で潰れる会社はいませんが、資金がショートして会社は潰れるのです。
たまに平気で支払遅延を何度もしている会社がありますが、信用はガタ落ちとなります。
また、業界内でそういう噂はすぐに回ってしまうものです。
お金の支払ができない会社や経営者にお願いする仕事はどんどんなくなっていくでしょう。
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