資金会計理論は、粉飾すら見抜くことのできる究極の財務諸表です。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を見てもわからない、なぜ手元にお金がないのか、手元にあるお金のうちいくらなら使っていいのか、投資と回収のバランスが適正か、などなど様々なことがわかります。
慣れるまでは読み解くのが難しい帳票ではありますが、今回はイメージをつかんでいただくために、例題として取引と数字をつかいながら説明していきます。
参考:
→【VOL83】資金会計理論を活用して事業の本当の財務体質をみましょう
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今回は『資金会計理論を例題で紐解く』です。(編集前のメルマガは2015年12月9日(水)に配信されています)
この記事の目次
資金会計理論は4つの分類から成り立つ
前回の復習になりますが、損益会計理論は、「損益資金の部」「固定資金の部」「売上仕入資金の部」「流動資金の部」から成り立ちます。
詳しくはこちらから。
→【VOL83】資金会計理論を活用して事業の本当の財務体質をみましょう
簡単に説明すると、
損益資金の部
事業をはじめてから稼いできたお金を表します。
純粋な儲けすべてがお金として残っていたら、損益資金の調達(売上など)と運用(原価など)の差額が手元の現金預金となります。
固定資金の部
長期的な資金調達(長期借入金や資本金など)と長期的な資金運用(棚卸資産や固定資産など)の差額を表します。
長期的な資金調達と長期的な投資のバランスがとれているかを見る指標となります。
多くの企業はここの数字がプラスとなっているため手元に現金預金が残っているケースが多いです。
つまり長期借入金に依存した財務体質が多いということです。
なぜ棚卸資産が固定資金に入るのかなどについては前回の内容を参考にしてください。
→【VOL83】資金会計理論を活用して事業の本当の財務体質をみましょう
売上仕入資金の部
売上の回収と原価の支払の差額となります。
業種によって大きく変わり、現金商売であればプラスになり、それ以外の業種ではマイナスになる傾向があります。
流動資金の部
一年以内の入金、支払を表すもののうち、上記に入らないものをいいます。
資金会計理論の中では、流動資金は帳尻合わせと捉え、財務体質になんら影響を与えないものとしています。
つまり、ここで大量のお金があったとしても財務体質は健全とはいえないということになります。
預り金や未払金などがこの流動資金の調達になりますから、一時的にスタッフから預かったお金や、一時的に未払だったお金がいくらあってもすぐになくなってしまうわけですから、安定しているとはいえないということです。
具体的な数字で資金会計理論を作ると?
以前、【VOL40】入金支払サイトから考える資金繰りとは?で使った事例に近い数字でご説明します。(興味のある方は比較してみてください。)
例題
初期資金(資本金)300万円
商品を買う1個1万円×100個=100万円→支払い30日後
商品を売る1個1.5万円×100個=150万円→入金60日後
わかりやすくするために、この会社にこの取引しかないと仮定しましょう。
会社ですから、毎月利益を稼ぐために商売をしていかなければいけません。
毎月同じ取引が続くとしたら、
1ヶ月目
損益:売上150万円ー仕入れ100万円=利益50万円
資金:入金0円ー支払0円=0円
2ヶ月目
損益:売上150万円ー仕入れ100万円=利益50万円
資金:入金0円ー支払100万円=▲100万円
3ヶ月目
損益:売上150万円ー仕入れ100万円=利益50万円
資金:入金150万円ー支払100万円=+50万円
3ヶ月目の損益計算書
売上高 450万円
仕入高 300万円
利益額 150万円
3ヶ月目の貸借対照表
現金預金 250万円
売掛金 300万円
資産の部 550万円
買掛金 100万円
負債の部 100万円
資本金 300万円
利益剰余金 150万円
資本の部
負債資本の部 550万円
手元現金預金の根拠は?
手元現金預金は250万円になっています。
利益は150万円なのに、なぜ手元現金預金は250万円なのでしょうか?
最初の資金(資本金)が300万円で、利益が150万円ですから、手元資金は450万円のはずなのに、なぜ手元資金は250万円なのか説明ができるでしょうか?
資金別貸借対照表にすると?
損益資金の部
売上高 450万円(+)
仕入高 300万円(ー)
損益資金の部 +150万円
固定資金の部
資本金 300万円(+)
固定資金の部 +300万円
売上仕入資金の部
売掛金 300万円(ー)
買掛金 100万円(+)
売上仕入資金の部 ▲200万円
流動資金の部
なし
トータル計
損益資金の部 +150万円
固定資金の部 +300万円
売上仕入資金 ー200万円
流動資金の部 0万円
結果、手元現金預金が250万円になります。
資金会計理論を使って未来を予想する
さて、上の例題で、4ヶ月目に借入を2,000万円して、機械に2,000万円投資するとしましょう。
そうすると、機械によって合理化され、売上が2倍になるとします。
借入の返済期間を5年、機械の減価償却を5年(定額法)とした時、6ヶ月目の手元資金はどうなるでしょうか?
編集後記
次回は上記の例題について解説します。
何回か実例の解説を通して理解を深めていいただけたらと思います。
前回、資金会計理論という本を資金会計理論の本のバイブルとして紹介させていただきました。
ただ、この本は結構高いです・・・。
そこで思い出した本が会社にお金が残る経営です。
実は、税理士法人に入った頃に先輩に勧められて読んだ本で、もっともわかりやすかった本の1冊です。(実は資金会計理論の本よりわかりやすかったです)
金融機関からの格付けやキャッシュフロー計算書、MQ会計もどき、などなど、広い範囲のことがわかりやすく載っているので、ぜひ読んでいただけたらと思います。
長らく後輩に貸してそのまま返ってこなかったのでタイトルを忘れてしまっていましたが、先日探して中古で買ってみました。
中古なら送料含め500円くらいで変えると思いますので、ぜひご興味ある方は読んでみることをお勧めします。(2015年12月9日現在)
但し、発売が2005年2月ですので、法律的なものは変わっている可能性がありますのでご注意ください。
それでも財務諸表の読み方は昔から変わらない普遍的なものですので、参考になると思います。