債務超過という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?
債務超過には表面上の債務超過と実質債務超過の2つがあり、それぞれの概念の違いやそれが引き起こすデメリットについてご紹介します。
金融機関(銀行)は債務超過の企業を嫌いますので、債務超過にならない経営をすること、またもし債務超過になってしまった場合に何年で解消すれば良いのかなどの目安などを知っておきましょう。
この記事の目次
債務超過とは?
貸借対照表の負債の金額が資産を上回り、資本の部の合計がマイナスになっている状態のことをいます。
負債とは、買掛金や未払金などの今後支払う必要があるものや借入金などの返済が必要なもののことで、将来お金が支出されるものを言います。
資産とは、現金預金と、売掛金や未収入金のように今後入金される見込みがあるものと、土地や建物などの売却したらお金になるような価値のあるものをいいます。
資本とは、資本金などの社長個人を含む他人からの出資のことを良い、基本的には返済不要のものをいいます。
表面上の債務超過とは?
決算書や試算表などの数字上において、負債の金額が資産の金額を上回っている状態のことをいいます。
実質債務超過とは?
表面上の決算書は債務超過ではないのですが、回収不能の売掛金があったり、土地などの資産が購入時より値下がりしていたりなどの理由で、実質的には債務超過状態のことをいいます。
現行の会計制度だと、土地は買った時の価格を売るまで使いますので、例えばバブル時に1億で買った土地が現在3,000万円の価値しかなかったとしても、決算書上は1億の資産として計上されます(減損会計などの例外を除きます)
7,000万円の損失が隠れていることとなるので、土地を時価に直して、つまり7,000万円の損失が出ているとみなして換算しなおすこととなります。
土地の他に投資有価証券などが時価換算される他、長期間返済されていない役員への貸付金や、開業費や開発費などの繰延資産は表面上(決算書や試算表上)で金額があったとしてもゼロ円の価値として換算し直されることもあります。
金融機関(銀行)の債務超過に対する対応
原則として金融機関(銀行)は債務超過を嫌います。うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。を参考にしてみて下さい。
実際には金融検査マニュアルにおいて、金融機関は表面上の貸借対照表ではなく実質の貸借対照表において債務超過かどうかを判断しなければいけないとされています。
しかし、現実的には土地の時価1つとっても、逐一調べるには時間的にも金銭的にもコストがかかることから、綿密に実質の貸借対照表で判断することは稀です。(というより現実的に不可能)
バブル期と現在のように明らかに時価が違うことが明確であったり、全体のバランスから考えて売掛金が異常に多かったり、在庫が異常に多かったりした場合に、詳しく調査することとなります。
意図的に粉飾をしていなくても、回収困難になっている売掛金や、捨てるほどではないが販売困難でダブついている在庫など様々なケースがあるでしょう。
うっかりやってしまいそうな借入がNGになる8つの行為。でご紹介した通り、表面上の債務超過の企業にお金を貸すことは金融機関にとってはNG行為となります。
すぐに借入金を返せといわれることはありませんが、追加融資を辞めたり、場合によっては短期借入金の借換に応じなかったり、割引手形の枠が減少したりと、借入金の残高を減らす方向に舵取りを変えるケースが多々あります。
表面上の債務超過を避ける方法
実質的な債務超過かどうかを調査することは稀ですから、まずは表面上の債務超過を避けることが金融機関との関係性をよくします。
粉飾決算をするのは論外ですが、例えば不良在庫は廃棄した時点で損失が確定しますので、債務超過になりそうであれば決算日後に廃棄すれば、その期の経費にならないわけです。(減損会計などの例外を除く)
または、役員借入金などが存在していれば、役員借入金の債務免除を行うことで負債を利益に変えることができるので、損失をカバーすることもできます。
その他にも過度な節税を控えて内部留保を増やしておけば、多少負債が増えても債務超過にはなりません。
節税と金融機関対策は同じ数字のことですが、似て非なるものですから、両方に詳しい税理士さんなどにアドバイスをもらいながら、長期的な視点で考えていくことをお勧めします。
債務超過になってしまった時の対策
債務超過を解消することです。
債務超過の解消方法は利益を出す以外にありません。
損失が出そうなこと(損が見込まれる資産の売却や廃棄)をするのは極力さけ、利益をだしましょう。
目安としては、5年で債務超過を解消できるような利益を出していると金融機関から一定の評価はされます。
(リスケ時には5年で債務超過から脱出できるような経営計画書の作成を求められます。)
例えば、5,000万円の債務超過の企業であれば、毎年1,000万円の税引き後利益を出すことです。
そうすれば5年後には債務超過を脱出できますので、金融機関としても一定の評価をすることができるということになります。
その他、単発でも良いので役員借入金の免除等で利益を出し債務超過の額を圧縮することも有効です。
債務免除益を計上しなくても、中小企業は役員借入金は負債から外して考えるというのが金融機関の統一ルールとなっています。
役員借入金を負債から外して債務超過でないにも関わらず、債務超過がどうこうという話をされた場合には、金融機関の勉強不足の可能性もあるので、堂々と主張してみて下さい。
編集後記
金融機関からの評価がどうこうというのももちろんありますが、負債(将来の支払額相当)が資産(将来の入金額相当)よりも多いというのは、企業として非常に危険な状態であるといえます。
当然金融機関も警戒しますし、実際の経営もかなり苦しくなっていることが容易に予想されます。
債務超過にならない経営を心がける必要があります。
また、金融機関にとっては1円でも黒字なのと赤字では大きく違うように、基準があるため1円でも債務超過だと債権者区分を要注意先としますので、特に少額だけ債務超過になりそうな場合には1円でもプラスにし債務超過ではない状況を作ったほうが、債務超過と比べて圧倒的に金融機関と良い関係を作れるので、なんとかする方法がないか試行錯誤することをお勧めします。