新卒採用

少子高齢化によって心配されるのが、労働力の低下です。
中小企業の経営者にとって、年々深刻化する問題のひとつが、新卒新入社員の採用が難しくなっていることではないでしょうか。
今回は、大卒新入社員の採用の現状についてご紹介します。

表面化しない就職戦争

新聞や雑誌をにぎわせるだけでなく、中学校や高校までをも巻き込むのが、現代の表面化しない就職戦争です。
各大学側は、より多くの学生を望む企業へ就職させようと就職課やキャリアセンターとよばれる部署を持ち、力をいれています。

なぜなら、大学院へ進む学生よりも卒業して就職する学生が圧倒的に多いというのが、一般的な大学の姿だからです。
そして、大学にとっては、優秀な研究がなされているというのと同じくらいに、就職率の高さや、学生の希望する企業への就職がしやすいということが、大学としての評価につながります。

これによって、高校、果ては中学までも巻き込んで、生徒の志望する大学がどのような企業への就職の道が開かれているのかを参考に、進路を選択していくという時代なのです。

就職活動解禁日が与える影響とは

そういった、表面化しない就職戦争でも、採用の時期についてのニュースが連日流れ、企業側と大学側双方の主張がぶつかりあって、結局今年も就職活動解禁日についての紆余曲折がありました。

ただし、これは経団連という経済団体に加盟している主に大手企業に対しての、ルールであってそれ以外の企業にとっては、このルールは適用されません。

そのため、多くの中小企業にとってはあまり関係ないと思いがちですが、実際はそうではありません。

みなさんもご存じのように、学生は大手企業への就職を望む傾向が強く、世界的なシェアを“隠れて”誇っていてもなかなか、振り向いてもらえないというのが現状です。

そのため、大手企業の就職活動解禁日は、中小企業にとっても重要な日でもあるのです。

欧米では採用活動はどうなのか

比較のために海外に目をむけてみると、欧米では就職活動ということ自体があまりありません。

大学生は、在学中から企業へインターンとして仕事を覚えておかないと就職はとても難しいのです。
日本のように、会社にいれてからたたき上げるなどという採用はしません。
欧米の場合は、ポストが空かないと採用しません。そのポストにみあった仕事をできる人を採用します。

そのため、学生といえども、就職しようと思えば、インターン時代にその職種を体験しているので、すぐに活躍できますというようなアピールが必要になってきます。

また、そのポストごとの採用契約なので、他のポストに空きがでたからといって異動させることはできません。

営業から経理へ、東京から大阪へなどの人事異動は欧米ではほとんど見られません。
日本の学生の就職活動も熾烈ですが、パターンが違うだけで、欧米においても同じことが言えます。

新卒採用の2つのメリット

それでも、新卒の採用は必要なのでしょうか。
日本の場合は、慣例的に一斉に新卒を採用しますが、その仕組みはなぜ、今も続けられているのでしょうか。

諸説ありますが、一斉採用は大正時代にはじまったと考える説があります。
さまざまな変化を受けて現在も一斉採用は日本での就職の王道となっています。このメリットはいったい何でしょうか。
企業側は、人・もの・金・コネ・情報をつかってまで新卒を採用する必要があるのでしょうか。

これについては、大きくわけて2つのメリットがあると考えられています。

企業風土の育成

ひとつは、企業風土の育成です。
転職組ではなく、生え抜きの社員を育成することによって、その企業で培われてきた企業風土を受け継がせること。
業務だけでなく、その企業の考え方や表面化されない根底にある心構えなどを新卒採用の社員に根付かせていくことが目的でありメリットであるとされています。
また、欧米とちがって、仕事に対しての対価を支払うというよりも、その人の能力に対して対価を支払うという考え方で雇用契約が成り立っている日本では、いわゆるポテンシャル採用という考え方が社会に浸透しています。

そのため、職業経験がない新人でも、教育や研修を受けさせて育てていきます。

そのかわりに、人事の裁量で異動や転勤も受け入れる必要があります(特定のポストに対する雇用ではないため)。

教育研修制度の一本化

そういった場合に、重要となるのが、教育や研修です。
一斉に採用することによって、その教育研修が一度に行えるということが二つ目のメリットです。

 

中小企業の採用の3つのポイント

では、中小企業が新卒を採用するときに必要なこと、ポイントとは何か考えてみたいと思います。

社内一丸になること

まずは、社内での採用に関する意思やシステムを共有することです。
社内全体に新卒採用に対する良い雰囲気が高まるようにすることによって、自然に学生にもその熱が伝わります。

電話の対応ひとつとっても、人事の採用担当以外の社員でも学生の入社したいという気持ちを高めることができます。
実際に、学生が心を決めた理由は、社員がやりがいを持って楽しそうに仕事をしていたからというようなものがほとんどです。

学校との連携

大学または専門学校等にこまめに情報を送ることです。
中小企業では難しい側面もあると思いますが、大学側は、毎日多くの求人やセミナーの案内を受け取ります。掲示する場所や発信する情報にも限りがあるため、どんどん更新されていってしまい、情報は埋もれていきます。

そのため、一度に大量のチラシやポスター、求人票を送るのではなく、こまめに情報を出し続けることがポイントです。

学生の立場にたつ

学生も情報戦につかれているということです。
多くの就職に関する情報が氾濫し学生自身も情報に飲み込まれているというのが現実です。

そのため、ぜひ、アナログな方法も視野にいれていただきたいと思います。

縁故採用もその一つです。
社員の家族や、知り合いの家族の紹介制度を取り入れているところもあります。
正社員の家族だけでなく、パート社員や派遣社員のご家族にも優秀な人材は眠っています。
アナログな方法とデジタルな方法をミックスすることです。

まわりの中小企業を見回してみると、意外と援護採用が多いのに気づくのではないでしょうか?(大企業は更に多いことに気づくはずです)

新卒採用

編集後記

欧米とは全く違うシステムで採用する日本。雇用自体の形態が独特であるために、採用活動も特殊になっているのでしょう。そのシステムもグローバル化の波で維持するのが難しくなってきています。近い将来は、この採用活動のシステムもなくなっているかもしれません。

 

最後に

[メルマガ]

[免責事項]