今回は金融機関が売掛金の内訳書のどんな点を融資審査の際に参考にしているのかをまとめました。
内訳書には決算日時点での売掛金しか載っていませんが、前期と比較したり、取引条件を参考にしたりすることで、多くの情報が読みとっています。
不良債権、架空債権の有無
不良債権とは、回収ができなくなっていて、入金できる見込みが少ない債権のことです。
架空債権とは、実際には存在しない債権のことです。
どちらも企業の業績や資金繰りを見るためには除外して考えなければいけないものになります。
業種にもよりますが、前期と今期に同じ相手先に同額の売掛金額が残っていると期中の取引を確認される可能性があります。(士業やコンサル業のような毎月定額の業種は別です。)
また、50万円未満の小口の売掛金に関しては、内訳書に得意先別に表示せず、その他にまとめて表示することが認められていますが、このその他が前期と比較して多額に増えている場合にも、細かい内訳一覧の提出を求められたり、期中の取引を確認されたりする可能性があります。
取引条件と推定売掛金残高、実際売掛金残高
以前この記事でご紹介しましたが、取引条件から想定される推定の売掛残高と、実際の期末時の残高を比較されます。
その差が70%程度〜150%程度であれば概ね問題視されませんが、その幅を上回る場合にはその理由を求められることがありますので、原因を突きとめておきましょう。
売上と原価、売掛金と買掛金の対応性
推定有り高の売掛残高と実際の売掛金残高がずれる原因としては季節変動などがあります。
季節変動についてはこちらの記事に書いてあります。
→金融機関の融資審査のポイント【取引条件と推定有り高編】
本当に季節変動や突発的な事象により売掛金が多かったり少なかったりしているのかを調べるために、原価のチェックをする場合があります。
売上が増えるということは、それに対応して仕入や外注が増えているはずですので、原価が増えるはずです。
売上が減っていればそれと逆のことがおきます。
そのため、期末の売上とそれに対応した仕入や外注のチェック、そして買掛金の内訳書のチェックをし、つじつまが合うかを確認します。
取引先の変動
どんな取引先と取引をしていて、メインの取引先がどこか、変化はないか、全体売上の何%くらいなのかなどの確認をします。
特に数社に取引先が限定されている企業(下請け体質の企業)の場合には、取引先の変化やその割合の変化などがあれば聞かれる可能性が高くなります。
編集後記
金融機関が総勘定元帳までチェックするケースは稀ですが、決算申告書一式と総勘定元帳、場合によっては請求書や契約書などを確認すれば大概のことはわかってしまいます。
特に売掛金や在庫、買掛金などの科目は粉飾の際に良く利用される科目なので、金融機関もより着目して見ている科目です。
総勘定元帳までチェックできて、粉飾や取引の異常性に気づけるほどの能力の高い金融機関の担当者は少ないですが、その視点で各科目の解説をしているので参考にして頂ければ幸いです。
このシリーズを全て読み準備をすると、「あれ?こんなに準備したのに融資審査ってこれしか聞かれないんだ?」と意表をつかれることでしょう。
備えあれば憂いなしですので、細かいところまで引き続き解説して行きます。