中小企業の融資は圧倒的に信用保証協会の保証の下に行われます。
つまり、信用保証協会を知らずして、中小企業は金融機関と上手に付き合うことはできないということです。
今回は信用保証協会とは何者なのかを知って頂けたらと思います。
前回はプロパー融資と保証協会付き融資についてまとめさせて頂きました。
→借入基礎知識:借入の種類編 ①プロパー融資と保証協会付き融資
中小企業向けの融資は圧倒的に保証協会付き融資が多いのが現実です。
ですので、今回は信用保証協会とは何者かについてまとめさせて頂こうと思います。
この記事の目次
信用保証協会とは
「借入基礎知識:借入の種類編 ①プロパー融資と保証協会付き融資 」でも簡単に解説致しましたが、簡単にいえば融資を受ける際に第三者保証が必要な場合に代わりに保証人になってくれる公的団体です。
不動産の賃貸などをする際に保証人の代わりに保証会社に保証料を払うことがあると思いますが、その借入版だと思って頂ければ大丈夫です。
中小企業融資の場合には、代表取締役の連帯保証以外に保証人または連帯保証人を求められることはほとんどなく、この信用保証協会の保証を使うところが多くなります(他に役員がいる場合には保証人になることを求められることもあります)
これは、中小企業側が第三者に連帯保証人を頼める人がいるいないとかの問題ではなく、金融機関が信用保証協会の保証制度を使って融資をすることを好むためです。
結果として、中小企業にとっても、金融機関にとっても、信用保証協会は切っても切れない関係ということになっています。
なぜ金融機関は保証協会付き融資を好むのか
答えは簡単、借主である中小企業が返済不能に陥った場合に、保証協会がついていない場合には、売れるかどうかわからない不動産の売却や、回収できるかどうかわからない連帯保証人に返済のお願いをしにいかなければならないですが、保証協会付きの場合には信用保証協会が総額の80%分については代理で返済してくれるからです。
あくまで信用保証協会は立て替えて返済してくれるだけであり、借主である中小企業は、金融機関ではなく信用保証協会に返済しなければいけないので、チャラになるわけではありません。
つまり、借主である中小企業は保証してもらう代わりに保証料を払う割には、保険のように返済不能という事故が起こった場合に保険金が支払われたり、返済がチャラになったりするものではなく、何のメリットもありませんが、金融機関にとっては安全に返済されるというメリットがあるので好んで使われます。
現在はどうなっているかわかりませんが、昔は金融機関の営業ノルマの中で保証協会付き融資は通常の融資よりも営業成績上の評価が良かったので、営業担当者は保証協会付きを勧めたという噂もあるくらいです。
では中小企業が保証協会付き融資を利用するメリットはどこにあるのでしょうか?
一言でいえば金融機関の審査より、信用保証協会の審査のほうが圧倒的に緩やかであるということです。
つまり、金融機関では絶対に融資ができないような企業でも、信用保証協会では保証してくれるということです。
そして、金融機関は信用保証協会が保証してくれれば、ほぼ100%融資してくれます。(例外はあります)
裏を返せばよほど財務状態が良いとか、担保価値のある不動産を持っているとか、保証人がいるとか、総合的に信用力がない場合には保証協会付き融資以外の融資は金融機関から借入はできないということです。
メリットといえるのか微妙なところですが、信用保証協会を利用するから融資を受けることができるということになります。
経営者が抑えておくべき保証協会のポイント
自社の保証協会の保証枠がいくらあるかという点です。
企業の財務状態や返済実績によって変わってきますが、無担保で最大8,000万円の枠があるとされています。
つまり保証枠が5,000万円の企業が、現在3,000万円しか借りていなければ、あと2,000万円はいざという時に借りれることになります。
では、どうしたら自社の保証枠がわかるのでしょうか?
これは教えてくれない場合もありますが、優秀な金融機関の担当者であれば、保証協会の担当者からそれとなく聞いてくれます。
私がコンサルティングをやっていたお客様はほぼこの方法で確認しました。
確実にいくらの枠があるとは教えてくれなくとも、会話の端々でそれとなく教えてくれる方もいるので、それとなく探ってみるのが一番でしょう。
信用保証協会利用時の注意点
まず1点目は金融機関ごとに自社の信用保証協会の保証枠があるのではなく、信用保証協会1つに対して1社の枠があります。
つまり、信用保証協会の保証枠が5,000万円あって、A銀行から3,000万円、B信用金庫から2,000万円の保証協会付き融資を受けていた場合には枠いっぱいということで、追加では借りることはできません。
但し、例えばB信用金庫のほうの2,000万円が保証協会付きではなく、金融機関独自のプロパー融資だった場合には信用保証協会の枠は3,000万円しか使っていないことになり、2,000万円の保証枠が残っていることとなります。
例外になるので、詳しくは説明しませんが、本店が東京で支店が埼玉にあった場合には、東京の信用保証協会の枠を目いっぱい使っても、埼玉の信用保証協会の枠が残っている場合があります。
もちろん本店と支店で保証枠は同額ではないでしょうし、絶対に借りられるということではありませんが、本当に資金繰りに困った時には、支店のある地域の保証協会の枠があるかもと頭の片隅でも良いので覚えておくと良いかもしれません。
そして2つ目は、金融機関に不動産等の担保を入れた場合です
その不動産を担保に入れた金融機関から保証協会付きの融資を受けた場合に、不動産の担保は金融機関に対しての担保として扱われているのか、それとも信用保証協会の担保になっているのかは必ず確認して下さい。
1部は金融機関、1部は信用保証協会なんていうこともありますので注意が必要です。
編集後記
ちなみに信用保証協会とは何かと言いますとWikipediaによれば、
一般に、中小企業が銀行などの市中金融機関から融資を受けようとする場合、その成長性や経営のリスクが大企業に比べて大きいため、融資を得ることができなかったり、調達できる額や条件において不利になったりすることが多い。それを解消し、中小企業がスムーズに資金を調達できるよう、信用保証協会は中小企業の委託に基づき金融機関に対して信用保証(保証承諾)を行う。これは、大企業と比べ資金調達上の不利性を持つ中小企業の信用力を補完し、中小企業と金融機関との架け橋になることで、中小企業の資金調達の円滑化を図るものである。協会の信用保証に基づき金融機関は中小企業に融資を行い、信用保証協会は信用保証の対価として信用保証料を借り手の事業者から得る。
(中略)
全国で51の信用保証協会がある。
同様の公的信用保証制度は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、韓国、台湾などでも採用されている。
つまり信用保証協会は中小企業のために設立されていると言っても過言ではなく、中小企業とは切っても切れない関係ということになります。
この信用保証協会の制度を知り、保証枠の仕組みなどを理解することが金融機関との上手な付き合い方の第一歩となります。
次回は、保証協会付き融資は一切できないにも関わらず、中小企業でも借りやすい日本政策金融公庫の借入制度について書きたいと思います。
その日本政策金融公庫と信用保証協会の驚くべき関係性にも迫りたいと思います。