特に企業の成長期に起こる現象です。
売上が伸びているのに資金繰りが厳しいな…と思ったら、落とし穴にはまりつつあるので、よく考えてみましょう。
成長しているはずなのに資金繰りがきつい、または借入が増えている経営者の方はぜひお読み下さい。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。
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今回は「財務に弱い経営者がひっかかるよくある落とし穴」です。(編集前のメルマガは2014年10月01日(水)に配信されています)
売上を増やせば手元資金が増えるわけではありません
前回と前々回で利益面からと資金面からの長期事業計画の考え方をご説明致しました。
→【VOL20】最低限稼がなければいけない利益を計算してみましょう!長期事業計画の立て方:数値編-利益
→【VOL21】最低必要手元資金とは?長期事業計画の立て方:数値編-資金
前回お話しましたが、事業を安全に経営するために必要な手元資金の理想的な金額と実際の手元資金には大きな差があります。
そこで、多くの方は手元のお金(手元資金)を増やすために、売上をたくさんあげ、利益をたくさん稼ごうとする傾向があります。
しかし、そこに大きな落とし穴があります。
売上を増やせば、手元のお金が増えるのであれば、こんなにも倒産する会社が多くはなりません。
もちろん最終的には売上を増やし、利益を増やすことが事業経営を良くします。
しかし、短期的には資金繰りがとても大事なのです。
売上が伸びていくと資金がどうなるのか事例で考えてみましょう!
例えば、年の売上6,000万円(月平均500万円)で経費5,400万円(月平均450万円)の事業があったとしましょう。
利益は600万円/年ですね。
現在手元資金は100万円だったとします。
余裕のある月商3ヶ月分の手元資金は欲しいと思ったので、約1,500万円(500万×3ヶ月)の資金にしたいと思いました。
しかし、今のままでは約2.3年(1200万-100万=1,100万÷600万)かかってしまいます。
これを1年で達成したいと思いました。
600万の利益の会社で、1,100万円を1年間で増やさなければいけないので、おおよそ倍の規模にしなければいけません。
つまり年商1億2000万円、経費1億800万円の会社です。(本来は売上に連動して増える経費である仕入れなどの変動費と、売上の連動には関係ない家賃などの固定費がありますが、割愛しすべて変動費と考えています。)
月平均500万の売上を増やさないといけませんが、いきなり月の売上を倍にすることは難しいので、毎月80万円ずつ増やすことを目標としました。
(1ヶ月目580万円、2ヶ月目660万円、3ヶ月目740万円・・・という感じです。結果、580+660+740+820+900+980+1,060+1,140+1,220+1,300+1,380+1,460=1億2,140万の年間売上になります。現実にこんなにトントン拍子に行くわけはありませんが、例題ですのでご容赦ください。)
経費の比率は90%ですので、経費も80万×0.9=72万ずつ増えていきます。
この会社、入金が3ヶ月後、支払が1ヶ月後としましょう。
○1ヶ月目
売上580万-経費522万=利益58万
手元資金100万+3ヶ月前の売上入金500万-先月の経費支払450万=150万円
○2ヶ月目
売上660万-経費594万=利益66万
手元資金150万+2ヶ月前の売上入金500万-1ヶ月目の経費支払522万=128万円
○3ヶ月目
売上740万-経費666万=利益74万
手元資金128万円+1ヶ月前のの売上入金500万-2ヶ月目の経費支払594万=34万
○4ヶ月目
売上820万-経費738万=利益82万
手元資金34万+1ヶ月目の売上入金580万円-3ヶ月目の経費支払666万=▲52万円
つまり、倒産です。
少し極端な例でしたが、長期事業計画を考える際に、資金に関してしっかりシミュレーションしているかどうかということです。
これを怠るから、せっかく商売のセンスがあるにも関わらず倒産する会社が多くなってしまうのです。
簡単に資金シミュレーションをする方法がありますので、次回はそれを一緒に見ていきましょう。
黒字倒産の種類
ちなみに黒字倒産の種類には、この回収サイトによるものと、借入金の返済が多くて潰れるパターン、税金の支払いができずに潰れるパターン、設備投資のしすぎで潰れるパターンなど、数多くありますので、どこかで解説していきたいと思います。