前回の「中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎」の中で、中小企業に必要なマーケティングは2つのみだとお伝えしました。
1つは、名前を覚える必要はありませんが3C理論で、「なぜお客様はライバル企業の商品ではなく、御社の商品を買ってくれるのですか?」という質問に答えられるようにしましょうという内容でした。
もう1つは、3Mと呼ばれるもので、誰(マーケット)にどんなメッセージをどんな媒体(メディア)で伝えるか?でした。
そして、それを最大限に活かす技術が消費者の行動心理を学ぶこととそれを活かしたコピーライティングだとお伝えしたので、今回は代表的な消費者心理についてご説明します。
前回の内容の発展系ですので、忘れてしまった方はまずこちらから。
→【VOL122】中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎
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今回は『マーケティングを最大限に活かすための消費者心理の基礎と代表例5つ』です。(編集前のメルマガは2016年9月7日(水)に配信されています)
この記事の目次
マーケティングで大事なのは差別化と伝え方
まず大切なのは差別化です。
今回の内容からは外れるので具体的な差別化方法の詳細は割愛しますが、もっとも大事なことは「なぜお客様はライバル企業の商品ではなく、御社の商品を買ってくれるのですか?」という質問に明確に答えることができるかどうかということです。
極論ですが自己満足でも構いません。
自分たちの商品・サービスに自信がなければどんなことをしてもお客様買ってくれません。
まずは自分たちが自信を持って商品・サービスを好きになり、上記の質問に答えられるようにすることです。
その上で、その強みをいかにお客様に伝わるように伝えるかが大事となります。
その時に活躍するのが、コピーライティングです。
コピーライティングは消費者心理に沿って作られていますので、今回はすぐに活用できそうな消費者心理についてご紹介させていただきます。
コピーライティングについてはまた次回以降にご紹介します。
前回もご紹介しましたが、すぐに知りたい方には、こちらの本がお勧めです。
消費者心理とは
学術的な話は割愛します。
恐らくこの後羅列していく消費者心理を見ると、せこいとかみみっちいとか思う方もいるかもしれません。
しかし、現実に世の中ではたくさん使われていて、お客様の購入動機を後押しする効果があるものばかりです。
嘘をついて、この消費者心理を悪用しては当然いけませんが、正しい使い方をして自社の商品・サービスを世の中に知ってもらい使ってもらうためのノウハウとしていただけたらと思います。
ですので、前回の【VOL122】中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎でご説明した「なぜお客様はライバル企業の商品ではなく、御社の商品を買ってくれるのですか?」という質問が大切になります。
もしかしたら、自社の商品やサービスに自信がなく、他のライバル企業の商品のほうが本当は良いんだよな・・・と思っていても、この消費者心理とコピーライティングを使えば商品やサービスは売れてしまうかもしれません。
というか、売れるでしょう。
しかし、それはお客様を騙しているのと変わりません。
ぜひ、第1ステップの自社の商品やサービスを自己満足でも良いので他社より差別化するというのをクリアしてから、消費者心理をマーケティング活動に使っていただけたらと思います。
では、代表的な消費者心理についてご紹介して行きます。
返報性の法則
聞いたことがある人が多いのではないでしょうか?
また、最近ではネット上でのビジネスでは、当メルマガでもやっていましたが、登録特典で無料プレゼントがあるなど、先に何かをGiveすることから始めることが多くあります。
これは当然ビジネスですから、ボランティアのように無償でもという気持ちでやっていることはほとんどありません。
何かをしてもらったら何かを返さなければという人間の心理に基づく戦術となります。
ネット上での話だとわかりづらいですが、例えば電気屋さんに言って、店員さんにいろいろ説明してもらい、わからないところを相談して、懇切丁寧に説明してもらったら、ネットで買ったほうが安くてもその店舗で購入するのではないでしょうか?
これは、ここまでやってもらったらとか、丁寧に説明してくれたし、ここで買うかという心理が働くからです。
保険屋や不動産屋などという営業が厳しいため洗練されている世界でもこの返報性の法則は活用されています。
お客様の相談に無料で乗り、必要があれば現地の視察にも同行し、何件内覧しようが嫌な顔一つせず無償で対応してくれます。
ここにも返報性の法則があるわけです。
単純接触効果(ザイオンス効果)
恋愛などでも言われる効果ですが、接触回数が多いほど好意を持ちやすくなることを言います。
例えば、CMもそうですが、最初は覚えられなかったり、好意を抱けなっかたりしたCMをいつの間にか覚えていたり、無意識に思い出したりしていたことはないでしょうか?
営業マンが「近くを通ったのでよりました」みたいな訪問も、このザイオンス効果が狙いです。
また、ネット広告などでも同じ広告が何度も何度も表示されるのは、このザイオンス効果狙いの一例です。
最近ではYouTubeの動画の前に入る広告などは、それ自体で収益をあげる目的というよりはザイオンス効果で認知度を広めようという意図を感じます。
このザイオンス効果は、ネットはもちろんリアルの営業でも十二分に活用できます。
こまめに電話をする、メールをするでももちろん構いませんし、SNSを定期的に更新するだけでもザイオンス効果は得られます。
一度しかあったことが無くても、SNSで頻繁に近況を見かけるといつの間にか親近感を覚えます。
親近感を覚えてもらえば、営業もしやすいですし、逆に向こうから問い合わせがくる確率も高まります。
希少性の法則
「限定◯個」などの数量的希少性や、「残り◯日」などという時間的な希少性など、多くのところで使われている方法です。
子ども騙しのような方法ですが、意外と効果があります。
その背景には、人は損をしたくないという心理が得をしたいという心理より強く働きます。
それを証明した理論を「プロスペクト理論」といいますが、割引期間中に買わなければ損なんじゃないか、とか、限定商品を購入しなければ損なんじゃないかという心理が働くため「希少性の法則」は使い古された手法にも関わらず現在でも有効な手法のままです。
もちろん、限定としておいて、売り切れたらまたすぐに限定◯個とか、期日が過ぎてすぐに残り◯日などとやっていたら誰も信用しませんので効果は薄くなります。
また常時「人気爆発!売り切れ直前」などとうたっていても初見の人以外には効果は薄くなってしまいます。
プロスペクト理論
人は得をしたいという願望より損をしたくないという願望が強いという理論ですが、面白い実験がありますので、参考までにご紹介します。
選択肢が2つあるとします
①必ず10,000円を貰える
②コイントスをして、20,000円が貰える確率が50%、1円も貰えない確率がが50%。
このケースだと①を選ぶ人が多いという統計データがあります。
次に質問を変えて
①必ず10,000円を支払う
②コイントスをして、20,000円を支払う確率が50%、1円も払わなくて良い可能性が50%。
このケースだと②を選ぶ人が多いという統計データがあります。
あなたはどう思いましたか?
同じ10,000円という効果にも関わらず、損をするとなったらリスクがあるにも関わらずゼロになる可能性を求め、得をするとなったら倍になるチャンスを逃してでも得を確定させたいというのが人間の心理です。
この心理は、ギャンブルや投資で勝てない人が多い理由の1つです。
利益は早く確定し、損はしないチャンスにかける、結果、小さな利益の勝ちを積み重ね、大きな負けを一度してトータルで損をするという結果を招くわけです。(余談でした・・・)
社会的証明の原理
これもよく使われている方法ですが、本にかかっている帯などがその1つです。
その業界で有名な人の顔写真入りの、「◯◯さん大絶賛」とか「◯◯も唸る」などといった帯がつくことによって、その著者を知らなくても本を購入してしまうことがあるのは、この社会的証明の原理が働いているからです。
また、お客様の声や感想、Amazonやぐるなびなどのレビューをお客様が見るのも、この社会的証明をされているものを購入したい、利用したいというお客様の心理が働いています。
士業の名前や学者の名前を使うのもこの社会的証明の1つです。
恐らく経験がある人が多いと思いますが、同じことをやっていても、有名なスポーツ選手であれば認められるのに対して、無名な人だと認められないということは往々にしてあります。
例に出すのも大変恐縮ですが、例えばイチロー選手、毎日決まったルーティンを大切にしていることで有名です。
あれはイチロー選手が野球選手として結果を出しているという社会的証明があるから、自己管理がしっかりできて結果が出せる人という評価になりますが、他の選手でまったく結果がでていなければ、オリジナリティの無い人、融通の聞かない人などという評価を受けてしまいます。
また、イチロー選手お勧めの時間管理術という本があれば売れるでしょうが、これが同じ方法だったとしても無名で結果の出ていない人の時間管理術という本には全く需要がないでしょう。
中小企業においてもお客様の声や、その業界で有名な方の推薦をもらうなど、どうやったら社会的証明ができるのかを考えてみるとマーケティングがしやすくなります。
HPのPV数やFBのいいね数なども1つの社会的証明になりますし、雑誌やTVへの掲載、出演も社会的証明の1つです。
松竹梅の法則
人は真ん中を選ぶという習性があります。
これは無難な選択をしたがるという証明ですが、得てして無難な選択をしています。
この法則を活用している例としてはファーストフード店や、カフェなどです。
大きさと値段で、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズなど、3つのサイズを用意しているところが多いですね。
何も考えていないと知らず知らずのうちに真ん中のサイズを選んでいませんか?
また人には複数の選択肢があると、買うか買わないかという迷いから、いつの間にかどれを買うかという迷いに変わってしまうという実験結果もあります。
ただし、あまりにも選択肢が多いと比較検討ができず、購入自体を諦めてしまうというデータもあり、この選択肢3つというのは理想的というのがここでも証明されています。
つまり、最もお客様にお勧めしたい商品を価格設定の真ん中におき、その上位商品と下位商品を用意すれば良いということになります。
上位、下位商品と書きましたが、必ずしも商品でなくとも何かとセットにするとか、サービスをつけるなどでも構いません。
かなり有名な法則なのでご存知の方も多いと思いますが、ちょっと気をつけて見てみると街の中の様々なところで使われていますので、観察してみると自社のヒントにもなること間違いなしです。
編集後記
とりあえず代表的なものを5つ紹介しました。
恐らくどこかで聞いたことがあるものばかりではないでしょうか?
大事なのは、聞いたことがある、知っているということではなく、それをどう活用するかです。
今回紹介した5つに関してはあらゆるところで使われていると思いますので、まずは観察してみてください。
その上で自社にどう応用できるかを探すのが一番の近道です。
そしてしつこいくらいの繰り返しになりますが、今回ご紹介したのはあくまでテクニックです。
一番大切なのは、前回の【VOL122】中小企業の経営に最低限必要なマーケティングの基礎で解説した自社の差別化です。(3Cと3Mです)
その上で消費者心理を学びマーケティングに活かしていただけたらと思います。