数字の見方についてずっとお伝えしてきましたが、今回は前回の【VOL66】企業の経営状態がわかる4つの見るべき財務上の数字に基づいて上場企業の分析を実際にしてみたいと思います。
行き当たりばったりな企画ですが、3回にわたって回転寿司で有名な「かっぱ寿司、スシロー、くら寿司」の財務分析をしていきます。(最後に比較とか出来たら良いなと思っていますが…)
今回はかっぱ寿司という名称で親しまれている「カッパ・クリエイトホールディングス株式会社」についてです。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。
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今回は『上場企業の財務分析:かっぱ寿司』です。(編集前のメルマガは2015年8月12日(水)に配信されています)
この記事の目次
かっぱ寿司のIR情報
平成27年3月期の数字を使って分析していきましょう。
上場企業の財務の数字はIR情報として企業のホームページ等に出ていますので、「企業名 IR」等でGoogleで調べるとすぐに出てきます。
かっぱ寿司こと、カッパ・クリエイトホールディングス株式会社のIR情報もありました。
以下、平成27年3月期のカッパ・クリエイトホールディングス株式会社の有価証券報告書より。
かっぱ寿司の重要指標
平成27年3月期(連結決算の数値)
売上高・・・・・約876億
粗利益額・・・・約491億
営業利益・・・・約5億
経常利益・・・・約8億
当期純損失・・・約▲135億
減価償却費・・・約34億
総資産・・・・・約351億
純資産・・・・・約121億
有利子負債・・・約100億
かっぱ寿司の総資本経常利益率は?
経常利益(約8億)÷総資産(約351億)=約2.2%
理想は10%ですから、351億×10%ですから約35億の経常利益が出ていないといけないこととなります。
そういう意味では事業効率はあまり良くないと言えます。
総資産約351億のうち、建物及び構築物で約299億(減価償却前)と大半を占めていて店舗にお金がかかっていることがわかります。(土地に関しては、約32億)
店舗にかけた分を効率よく回収できていないという状況ですね。
かっぱ寿司の償還年数は?
本来は税引き後利益で計算したいのですが、かっぱ寿司の税引き後利益は減損損失を140億計上して約135億の赤字となっていますので、今回は便宜的に経常利益で計算します。
有利子負債は、短期借入金、長期借入金、1年以内返済長期借入金、リース債務をいれています。
有利子負債(約100億)÷(経常利益(約8億)+減価償却費(34億))=約2.4年
10年を超えたら危険と言われていますが、3倍借りても10年を超えませんので、優秀な数字です。
(あくまでも単年で計算した数字であす。本来は3年分程度の税引き後利益+減価償却費で計算します。)
自己資本比率でも解説しますが、自己資本が多く借入依存度が低いことが、この償還年数の短さの一因ともいえ安定している企業といえます。
かっぱ寿司の自己資本比率
純資産(約121億)÷総資産(約351億)=34.4%
50%は超えていませんが、当面は安定といえる30%を超えています。
この自己資本の充実が、建物及び構築物への投資額が大きく総資本経常利益率で効率が悪くても、債務償還年数が短くすみ、企業の財務が安定しているといえる理由の1つです。
とはいえ、30%台ですので、油断は出来ない状態といえます。
かっぱ寿司の損益分岐点比率
100%ー(経常利益(約8億)÷粗利益額(約491億))=98.4%
売上高が1.6%減少したら赤字に転落してしまうくらいギリギリの状況といえます。
理想は80%です。
売上高876億に対すると約0.9%の経常利益しか出ていませんので、総資本経常利益率と同様に効率が悪い経営となっています。
但し中小企業と違い、投資家や債権者保護の観点から、将来の負債、例えば退職給付引当金等もすべて会計基準に合わせて計上していますので、同じ視点では考えられませんが…
ちなみに粗利益率は粗利益額(約491億)÷売上高(約876億)=約56.1%です。
これも飲食店の平均が70%とすると、低めな気もしますが、くら寿司約54.2%、スシロー約50.7%、元気寿司約59.1%などと比較してみると悪くない数字といえます。
飲食店でも業態によって違うので、回転寿司業界だとこのくらいと考えたほうがいいのかもしれません。
編集後記
結論としては、債務償還年数や自己資本の2つの数字は良い数字でしたので、財務体質としては安定しているといえるでしょう。
ただ、損益分岐点比率が低いことから、いつ赤字企業に転落するかわからない点、総資本経常利益率の低さといったところから、収益力の低さがわかります。
多少の赤字に転落しても支えられる自己資本があるので、当面は大丈夫ですといえますが、経営効率が悪いということは投資がうまくいっていないことを表しますので、今後収益力が改善していかないと厳しい状況といえそうです。
※あくまでも公告されている数字を表面的に分析しており、財務分析の題材として使わせていただいておりますので、実際のかっぱ寿司様の経営とはかけ離れている可能性がありますので、ご了承ください。
ちなみに他にかっぱ寿司の分析をされた方の記事がありましたので、参考にどうぞ。
→カッパ・クリエイトHD 元気寿司との経営統合で業績立て直しできるか
こう見ると数年前まではもっと悪かった収益力が、不採算店舗閉鎖等の経営改善で良くなってきているという見方もできそうですね。