信用保証、政府系金融機関の融資、助成金、税制等、様々な面で優遇措置を受けることができる経営革新計画の認定制度。
その概要とメリットなどをまとめて見ました。
資金調達を円滑に行いたい企業にとっては経営革新計画の作成と認定は1つの選択肢となります。
この記事の目次
経営革新計画とは
平成17年4月に施行された中小企業新事業活動促進法(旧:中小企業経営革新支援法、中小企業創造活動促進法、新事業創出促進法の中小企業支援3法を統合したもの)に基づくものです。
経営革新とは、新商品開発や新たな販売方式の導入などの取り組みのことで、その計画を立てたものが経営革新計画となり、中小企業活動促進法に基づき都道府県知事等が承認すると、経営革新計画が認定されたことになります。
経営革新計画の認定を受けるメリット
信用保証協会が行う信用保証、政府系金融機関の融資、助成金、税制等において優遇措置を受けることができます。
信用保証協会の優遇措置
通常の保証枠とは別に同額の別枠が認められます。
通常枠
普通保証: 2億円
無担保保証:8,000万円(うち無担保無保証人保証:1,250万円)
別枠
普通保証: 2億円
無担保保証:8,000万円(うち無担保無保証人保証:1,250万円)
その他注意点
※無担保保証は、小規模事業者(従業員数20人以下、商業・サービス業は5人以下)のみ
※経営革新事業の内容が新事業開拓保証の対象になるもの(研究開発費用)の場合には、普通保証限度額は3億円
※あくまでも限度額であり、審査により実際の貸し出し額は決まります。また、他で別枠を利用している場合は利用額は減額されます。
政府系金融機関による低利融資制度
経営革新計画の実行に必要な資金を調達するために、政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工組合中央金庫)が用意している優遇制度です。
日本政策金融公庫ー国民生活事業部
貸付限度額
設備資金: 7,200万円
内運転資金:4,800万円
貸付期間
設備資金:原則15年 実情に応じ20年(うち据置期間2年)
運転資金:原則5年 実情に応じ 7年(うち据置期間2年 実情に応じ3年)
日本政策金融公庫ー中小企業事業部
貸付限度額
設備資金: 7億2千万円
内運転資金:2億5千万円
貸付期間
設備資金:原則15年 実情に応じ20年(うち据置期間2年)
運転資金:原則5年 実情に応じ 7年(うち据置期間2年 実情に応じ3年)
商工組合中央金庫
貸付限度額
設備資金: 7億2千万円
内運転資金:2億5千万円
貸付期間
設備資金:原則15年 実情に応じ20年(うち据置期間2年)
運転資金:原則5年 実情に応じ 7年(うち据置期間2年 実情に応じ3年)
その他注意点
※上記は2015年4月時点のものです。詳しい情報は日本政策金融公庫のホームページより確認して下さい。
海外展開事業者への支援制度
日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット制度
対象者
海外展開のため現地の通貨で長期資金を調達したい中小企業
制度内容
スタンドバイ・クレジットとは、債務の保証と同様の目的のために発行される信用状です。
中小企業の海外支店又は海外現地法人が海外金融機関から現地の通貨で融資を受けために、日本政策金融公庫が提携する海外金融機関に対して信用状を発行します。
海外現地法人等による海外での現地流通通貨の円滑な調達を支援する制度です。
その他
実際にご利用される場合には、日本政策金融公庫のホームページをご確認下さい。
日本貿易保険(貿易保険法の特例)
対象者
海外展開のため現地の通貨で短期資金を調達したい中小企業
制度内容
中小企業者が現地(海外)の金融機関から期間1年未満の短期資金を借入する際に、地銀等の保証に加え、独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が海外事業資金貸付保険を付保することで信用補完でき、現地金融機関からの借入が容易となる制度です。
その他
実際にご利用される場合には、独立行政法人日本貿易保険のホームページをご確認下さい。(リンク先は東京の信用保証協会になっています)
中小企業信用保険法の特例(海外投資関係保険)
対象者
海外直接投資を行う国内中小企業者。
制度内容
中小企業が金融機関から海外直接投資事業の必要資金の融資を受ける際、信用保証協会が保証を行う制度です。
平成24年8月30日の中小企業経営力強化支援法の施行により、海外において事業を行う中小企業者等には、保証限度額が増額されています。
その他
実際にご利用される場合には、信用保証協会のホームページをご確認下さい。
設備投資減税
経営革新計画の認定を受けた事業において取得した機械装置については、取得価格の7%が税額控除、または取得価格の30%の特別償却を利用することができます。
例えば300万円の機械を購入した場合、
300万円×7%=21万円の税額控除(但し、その年の法人税の20%が限度)
または、
300万円×30%=90万円をその年の経費(それとは別に通常の減価償却)
にするかを選べます。
融資を受ける上でのメリット
上記に記載した優遇制度意外には、直接的な影響はありません。
但し、経営革新計画の認定を受けているということは、計画をしっかりと作っているという客観的な証明になるので、その部分は評価されます。
審査上の評価アップには繋がりますが、経営革新計画の認定を受けているからといって業績の悪い会社が一発逆転の融資を狙えるような制度ではなく、金融機関から現状も借りられている会社が、資金調達能力をアップさせるために認定を受けるのが効果的です。
また、借入の諸条件を有利にしたい、優遇制度を受けたいという企業にとっては認定を受ける価値があります。
助成金・補助金
2015年現在では、以前の経営革新補助金等の経営革新計画に基づく助成金や補助金はありません。
しかし、各都道府県や市区町村、その他団体において実施している助成金・補助金の申請対象要件が「経営革新の承認を受けた事業」等になっているものがあり、受けられる助成金や補助金の幅は広がります。
各制度の要件を確認の上、申請下さい。
その他の優遇制度
多くの中小企業には直接関係ないですが、一応あげておきます。
中小企業投資育成株式会社による投資の特例(中小企業投資育成株式会社法の特例)
中小企業投資育成株式会社による投資は、通常資本金額が3億円以下の株式会社が対象になります。
経営革新計画の承認を受けることで、資本金額が3億円を超える株式会社も対象になります。
ベンチャーファンドからの投資
支援内容
経営革新計画に従って、経営革新のための事業を行い、株式公開を目指す未公開株式会社が対象となっています。
通常
対象企業:主に設立5年未満の創業又は成長初期の段階にある中小・ベンチャー企業
経営革新計画承認企業
対象企業:設立年次に関わらず対象
※本制度を利用する場合には、経営革新計画の承認とは別途審査が必要となります。
以上、詳細は中小機構のホームページから抜粋。
実際にご利用される方はご確認の上ご利用下さい。
特許関係料金減免制度
対象者
経営革新計画のうち、技術開発に伴う研究開発事業に係る特許申請等を行う中小企業者(経営革新計画開始から計画終了後2年以内の出願が対象)
※既に支出した分は含まれません。
支援内容
経営革新計画における技術に関する研究開発について、特許関係料金が半額に軽減される制度で、審査請求料と特許料が対象となります。
以上、詳細は特許庁のホームページから抜粋。
実際にご利用される方はご確認の上ご利用下さい。
経営革新計画の申請条件
①中小企業であること(業種の縛りはありません。)
②新たな取り組みであること
次のいずれかの事業
(1)新商品の開発または生産
(2)新役務の開発または提供
(3)商品の新たな生産または販売方式の導入
(4)役務の新たな提供方式の導入
個々の中小企業にとって新たな取り組みかどうかがポイントであり、業界で初めて等でなくても良い。
但し、ある程度同業種で普及している場合には対象外
③経営の相当程度の向上が見込まれること
「付加価値額または1人あたりの付加価値額」と「経常利益の伸び率」の2つに具体的な基準が定まっています。
(1)付加価値額または1人あたりの付加価値額の伸び率
3年計画:9%以上
4年計画:12%以上
5年計画:15%以上
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
※1人あたりの付加価値額=付加価値額÷人数
(2)経常利益の伸び率
3年計画:3%以上
4年計画:4%以上
5年計画:5%以上
経営革新計画の申請手順
窓口は各都道府県の担当部局になります。
経営革新計画申請書の様式にそって書類を作成し、認定を受けます。
担当部局で事前にアドバイスを受けることも出来るので、確認しながら作成しましょう。
認定を受けたあと1年〜2年程度の間に進捗状況の確認等があります。
編集後記
経営革新計画の概要を説明させて頂きました。
認定を受けるために無理に会社の方針を変える必要はありませんが、もし新しいことをやろうとしているのであれば認定を受けるメリットがあるので検討してみましょう。
経営革新計画の認定の受け方は専門の方がいらっしゃるので、実際に受けたい方は事前に相談してみると良いと思います。