この資金シミュレーション簡易版は本当は教えたくない方法です。 なぜなら私たちの仕事が1つ少なくなってしまうからです。 意外と知っている人は少ないと思いますが、効果は抜群です。
経営に活かせる方法ですので、ぜひ活用して頂けたらと思います。
今回の内容は、メルマガ版財務講座「実践型!経営者向け財務講座 ~財務に強い経営者が見ている数字のポイント~」で過去に配信した内容を再編集して掲載しています。
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今回は「簡単だけど役に立つ、資金シミュレーション簡易版」です。(編集前のメルマガは2014年10月08日(水)に配信されています)
この記事の目次
まずはシミュレーションのための例題です
それでは資金シミュレーションをするためにも、前回の例題を改めて確認します。
(例題)
年の売上6,000万円(月平均500万円)で経費5,400万円(月平均450万円)の事業があったとしましょう。
利益は600万円/年ですね。
現在手元資金は100万円だったとします。
余裕のある月商3ヶ月分の手元資金は欲しいと思ったので、約1,500万円(500万×3ヶ月)の資金にしたいと思いました。
しかし、今のままでは約2.3年(1,500万-100万=1,400万÷600万)かかってしまいます。
これを1年で達成したいと思いました。
600万の利益の会社で、1,400万円を1年間で増やさなければいけないので、おおよそ倍の規模にしなければいけません。
つまり年商1億2000万円、経費1億800万円の会社です。(本来は売上に連動して増える経費である仕入れなどの変動費と、売上の連動には関係ない家賃などの固定費がありますが、割愛しすべて変動費と考えています。)
月平均500万の売上を増やさないといけませんが、いきなり月の売上を倍にすることは難しいので、毎月80万円ずつ増やすことを目標としました。
(1ヶ月目580万円、2ヶ月目660万円、3ヶ月目740万円・・・という感じです。結果、580+660+740+820+900+980+1,060+1,140+1,220+1,300+1,380+1,460=1億2,140万の年間売上になります。現実にこんなにトントン拍子に行くわけはありませんが、例題ですのでご容赦ください。)
経費の比率は90%ですので、経費も80万×0.9=72万ずつ増えていきます。
この会社、入金が3ヶ月後、支払が1ヶ月後としましょう
以上 例題終わり。
簡単に資金シミュレーションするためには?
そして、1ヶ月目、2ヶ月目と毎月毎月解説していったのを覚えていますか?
あれはあれで、もちろん大切なのですが、そもそもこの1年の資金が足りるか足りないかを調べるにはもっと簡単な方法があります。
入金が3ヶ月後、支払が1ヶ月後ということは、売上が月平均500万、仕入が月平均450万ですから、この会社の貸借対照表は、
貸借対照表
(資産)
現金 100万円
売掛金 1,500万円(月平均500万×3ヶ月)
資産計 1,600万円
(負債)
買掛金 450万円(月平均450万×1ヶ月)
負債計 450万円
(資本)
資本等 1,150万円(資産計1,600万円-負債計450万)
(資本等とは=元手+過去の利益)
貸借対照表は、資産=負債+資本になります。(またいずれ解説しますので、今はそういうものだと思っていて下さい。イコール、つまりバランスするので、別名バランスシートと呼ばれています)
そして、今年1年の売上目標は1億2,140万円(月平均約1,000万円)で経費予算は売上の90%ですから、1億926万円(月平均約900万円)で、利益は1,214万円です。
これで、1年後の予測貸借対照表を計算すると
1年後の予測貸借対照表
(資産)
現金 不明(これを調べるために予測しています)
売掛金 4,140万円(1,300+1,380+1,460=期末3ヶ月の売上)
資産計 不明(現金残高が現在では予測できないため)
(負債)
買掛金 1,314万円(1,460万円×90%×1ヶ月)
負債計 1,314万円
(資本)
資本等 2,350万円(過去の繰越1,150万円+今年の年間利益約1,200万円)
となります。
資産=負債+資本等でしたから、負債1,314万+資本2,350万=3,664万円です。
つまり、資産も3,664万円になるはずです。
しかし、売掛金だけで4,140万円あります。
現金は▲476万円でないとバランスしないわけです。
どういうことかというと、この計画でいくと現金が476万円不足するということです。
仮にこの不足を補うために、借入を500万円すると、負債が500万円増えて1,814万円(会課金1,314万円+借入金500万円)、そこに資本等2,350万円を足すと、4,164万円が負債+資本等になります。
結果、4,164万円-4,140万円=24万円が手元の現金として残るというわけです。
シミュレーションは空論ではなく、事業経営の地図です。
もし、そんなの机上の空論だと思ったとしたら、かなり危険です。
シミュレーションはあくまでも、旅をする時の地図みたいなものです。
でも、市販の地図はないので、自分で作り、その地図との差を見て、その場その場で舵取りをしてかなければいけないのが、経営です。
そして、その予測や差異を示してくれるのが、財務をはじめとした数字です。
今は対策として、借入500万円と書きましたが、選択肢としては、買掛金をもう1ヶ月待ってもらうことや、売掛金を1ヶ月早く回収するという方法もあります。
シミュレーションをすることで、資金ショートする可能性が見えるので、事前に選択肢が増やせるのです。
行き当たりばったりで経営している会社に、金融機関もお金を貸しませんし、ましてや取引先や仕入先はこの会社危ないんじゃないかと思い協力してくれるわけはありません。
しかし、上記のようなシミュレーションをして、協力を要請すれば、金融機関、取引先、仕入先のどこかが協力してくれるかもしれません。(してくれないかもしれませんが…)
それが難しくても、売上のペースをいくら押さえたらどのくらいの資金的余裕が生まれるのかもわかります。
もちろん、その通りには行きませんが、このシミュレーションをするのに、1時間もかかりません。
その割には、効果は抜群です。
BS経営も大事ですが、まずはキャッシュフロー(資金)経営を
昨今、BS経営(貸借対照表中心の経営)がもてはやされています。
私個人としては、小規模の企業には中途半端な理解は逆に危険だと思っていますが、利益計画から、予測貸借対照表を作る、このシミュレーションこそBS経営の入口だと思っていますし、小規模企業でも勘違いせずに使いこなせるツールだと思っています。
とは言っても、1度説明しただけでは難しいですね。
繰り返し何度か説明していきますので、ご安心ください。
今回はここまでです。