安定した経営をするためには、1社に依存する売上構成比を何%以下にしておくことが必要かご存知でしょうか?
もちろん、業種業態によって違いますが、基本的な考え方をお伝えしていきます。
どんな業種で大手から仕事をもらっていても100%の売上を1社に依存することが、どれだけ経営上のリスクがあるかは誰もがご存知だと思います。
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今回は『得意先別の売上構成比は◯%以下が安全です』です。(編集前のメルマガは2016年2月3日(水)に配信されています)
この記事の目次
売上構成比とは?
得意先別の売上高の構成比率を言うのが一般的です。
得意先別の他には、店舗別や商品別などが存在しますが、今回は得意先別の売上構成比についてお話していきたいと思います。
例えば、1億円の売上がある会社であれば、
A社 5,000万 構成比50%
B社 2,000万 構成比20%
C社 1,000万 構成比10%
D社 1,000万 構成比10%
E社 1,000万 構成比10%
となります。
売上依存度とは?
1つの得意先に依存している売上高のことをいいます。
上記の事例であれば、
A社への依存度は50%となります。
B社であれば、依存度20%です。
この依存度が高ければ高いほど、その会社からの仕事がなくなったり、その会社が倒産したりした場合のリスクが高くなります。
この依存度を1社に対する売上依存度を何%以下にすべきかが気になるところではないでしょうか?
この他にも1つの商品サービスへの売上依存度が高い場合も注意が必要ですが、今回は割愛します。
自社の損益分岐点比率と得意先別売上構成比の関係
業種業態によって、どの程度売上を分散すべきかは違いますが、基本的な考え方をまずはお伝えします。
損益分岐点比率とは
簡単に言うと、あと何%売上高が少なくなったら、経常損益が赤字になるかという指標です。
例えば損益分岐点比率80%の事業であれば、あと20%売上高が落ちたら赤字になりますよという意味になります。
損益分岐点比率は、
(固定費+営業外費用−営業外収益)÷粗利益額
で計算されます。
損益分岐点比率と売上構成比
損益分岐点比率の考え方がわかれば、ある程度予測がつくかもしれませんが、あと何%売上高が落ちたら赤字になるかによります。
例えば上記の事例のように、損益分岐点比率80%の事業であれば、20%売上高が落ちたら赤字になるわけですから、1社への売上依存度は最大でも20%以下にしなければいけないわけです。
そうしなければ、その得意先次第で事業が赤字になってしまうからですね。
損益分岐点比率が90%の会社であれば、売上構成比は最大でも10%以下にしなければいけないというわけですね。
損益分岐点比率の理想は80%
細かい説明は割愛しますが、一般的に理想の損益分岐点比率は80%と言われています。
それ以上高いと、安全性に問題があるということです。
一方、それ以下だと、投資不足や外注やスタッフへ分配できていないのではないかと見ることができます。
つまり、1つの得意先に対する売上構成比も20%以下にするのが理想ということになります。
非常時でも強い事業を作るのが経営者の仕事
売上構成比を最大でも20%以下にというのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいのが現実です。
8対2の法則でも有名ですが、一般的には、2割の得意先が8割の売上高をもたらすとか、2割の商品サービスが8割の売上高をもたらすとか言われています。
平常時であればそれでも問題はないのかもしれません。
しかし、最近でいえば、リーマンショック、東日本大震災などで、売上高が8割近く減ってしまい潰れていく会社を見てきました。
売上高が2割減ったのではなく、8割減ってしまったのです。
そういう事業の多くが、1品または1つの得意先に依存し続けていたのが現実です。
20%というと5分割ですから、最低でも5つの事業者、5つの事業または商品サービスにわけていくのが理想です。
簡単ではないですが、理想をそこにおき、常にどうしたらリスク分散できるかを考えながら事業をつくっていくことこそ経営者の仕事だと思います。
編集後記
昔より時代の流れが早くなっているとは言われていますが、あっという間に主力商品だと思っていたものが売れなくなります。
得意先はもちろん商品サービスも何かに頼りすぎることは危険ですね。
私は税理士法人にいた時代に、リーマンショックも東日本大震災も体験しました。
本当に多くの企業が苦しみました。
もちろん国からの助成制度はありましたが、全部を助けてくれるわけではありません。
不景気だから、地震だから、リーマンだからと言っても、結局は自分たちで何とかしていかなければいけないのです。
業績が良い時にこそ、悪い時を想定してリスク管理をすることが大切です。
売上依存度もいきなり変えることは難しいと思いますが、私たちは◯◯業だからしょうがないとか、当たり前だと考えるのではなく、少しずつでも依存度を下げるための努力をすることが大切なのではないでしょうか?
2008年がリーマン・ショック、2011年が東日本大震災、2013年がアベノミクス、良くも悪くも経済環境に大きな影響を与えることが数年おきに起こっています。
変化をリスクと捉えるのではなく、変化は数年ごとに訪れるものと捉え、変化はチャンスの精神で事業をしていくことが大切なのではないでしょうか?
※今回の内容にリーマン・ショックや東日本大震災、アベノミクスなどの表現がございますが、経済環境の大きな変化ということを伝えたいために事例として出させていただきました。ご気分を害された方がいらっしゃいましたら大変申し訳ございません。
被災者の方や当事者の方には改めてお悔やみ申し上げます。