損益は会計方針によって同じ取引でも変わりますが、キャッシュフローは変わりません。
キャッシュフローが真の企業の実力と言われる理由と、フリーキャッシュフローはキャッシュフロー計算書上の損益と言われる理由を書きました。
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今回は『損益は解釈、キャッシュこそ企業の真の力を表す、その理由は?』です。(編集前のメルマガは2015年6月24日(水)に配信されています)
この記事の目次
損益は解釈、キャッシュは企業の真の実力とは?
タイトルにもしてみましたが、損益は解釈、キャッシュは真の企業の力を表すという言葉を聞いた事はないでしょうか?
少し難しい話になりますが、損益は会計方針によって変わります。
売上計上のタイミングによる損益の差異
例えば、売上を計上するタイミング、一般的には商品を納品した時点で売上が計上されますが、相手方の検品が完了した時点にする事もできます。
また、わかりやすい事例でいけば、建設業で長期間にわたって工事がされる場合、完成時に全額売上を計上する方法(工事完成基準)と毎月進行度合いに応じて売上を計上する方法(工事進行基準)と2つの方法があり、どちらを選ぶかで一時的に損益が変わります。
経費処理のタイミングによる損益の差異
更に言えば、中小企業の場合には30万円未満の資産に関しては、資産計上して減価償却することも、資産計上せずに一括して経費計上することも認められています。(中小企業の少額資産の特例、但し、年間300万円まで)
例題で損益のズレを確認してみましょう
25万円の減価償却期間5年の資産を購入した場合を考えてみましょう。
資産計上をした場合の1年目の経費は25万÷5年=5万円ですが、少額資産の特例を使って一括経費を選択した場合には、1年目に25万円が経費となり、会計処理の方法で20万円も利益が変わることになります。
会計にはこういう複雑な仕組みがたくさんありますが、お金はというと、1年目に25万円の支出があったという事実以外何もありません。
そのため、キャッシュフローが企業の真の実力を表すと言われるのです。
キャッシュフロー計算書にすると?
これを簡単にキャッシュフロー計算書に表すと、
<資産計上した場合>
(営業活動によるキャッシュフローの部)
損益 ▲5万円
減価償却費 +5万円
営業活動によるキャッシュフロー 0万円
(投資活動によるキャッシュフローの部)
資産の購入 ▲25万円
投資活動に寄るキャッシュフロー ▲25万円
フリーキャッシュフロー ▲25万円
(営業活動+投資活動によるキャッシュフロー)
(財務活動によるキャッシュフロー)
取引なし
キャッシュフローの増減 ▲25万円
<一括経費に計上した場合>
(営業活動によるキャッシュフローの部)
損益 ▲25万円
営業活動に寄るキャッシュフロー ▲25万円
(投資活動に寄るキャッシュフローの部)
取引なし
フリーキャッシュフロー ▲25万円
(営業活動+投資活動によるキャッシュフロー)
(財務活動によるキャッシュフローの部)
取引なし
キャッシュフローの増減 ▲25万円
となります。
フリーキャッシュフローが大事
結論として損益は違いますが、キャッシュフローの増減は同じとなります。
1つ今回覚えて頂きたいのが、フリーキャッシュフローという概念です。
フリーキャッシュフローは、キャッシュフロー上の損益と言われるくらい大切なものとなります。
今回の事例でも取引が同じなので、企業の真の実力は同じでなければいけませんでした。
そして、その真の実力を表すのが、フリーキャッシュフローだと思って頂ければと思います。
今回、営業活動、投資活動、財務活動の具体的な科目等の説明をしようと思っていたのですが、その前に「キャッシュフローこそ企業の真の実力を表す」というお話をしたほうが良いと思い、事前告知とは違ってしまいましたが、そのお話をさせて頂きました。
次回は、フリーキャッシュフローの概念を中心に営業活動、投資活動、財務活動の具体的なキャッシュフロー項目のお話をさせて頂こうと思っています。