頑張る社員

「自分のお給料の3倍稼げ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
これは当然売上高ではなく粗利益額で考えるべき数字ですが、なぜ3倍なのか疑問に思った方も多いのではないでしょうか?
今回は事業が安定的成長または継続していくために1人あたりいくら稼いだら良いかについて解説していきます。

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【VOL1】起業したら真っ先に見るべき会計の3つの数字

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今回は『社員・スタッフ1人あたりいくら稼いだら良いのか?』です。(編集前のメルマガは2016年1月20日(水)に配信されています)

なぜ売上高ではなく粗利益額なのか?

これは少し考えれば難しくないと思います。

例えばA社はコンサル業で仕入れはなく粗利益率100%の会社です。
20万円のお給料をもらっている人が、3倍の60万円稼げば、売上高60万円、粗利益額60万円です。
他の経費はおいておいても、粗利益額が60万円あれば、20万円のお給料を払えますね。

一方、B社は小売業で粗利益率は10%です。
同じく20万円のお給料をもらっている人が、3倍の60万円売り上げても、粗利益額は6万円です。
お給料の20万円も払えません…

なので、粗利益額で考えなければいけないのです。

事業をやっていると頭では粗利益額が大事とわかっていても、ついつい売上高を基準に考えてしまうことが多くなってしまいます。

しかし、大事なのは粗利益額=付加価値を企業がいくら生み出しているかです。
ここでも同じ考え方になります。

一人あたり3倍稼げの根拠

経営者なら当たり前ですが、社員やスタッフに払っているのはお給料だけではありません。

しかし、悲しいことに社員やスタッフはお給料しかもらっていない、もっといえばお給料の額面ではなく、手取り金額しか会社からもらっていないと考えている人も少なくありません。

実際には、社会保険料(概ねお給料の15%が会社や事業主の負担)、将来の退職金、福利厚生費、人が増えれば家賃、広告宣伝費に代表されるお客様獲得費、機械などの設備、事務所で使う事務用品などたくさんの経費が、人がいるだけでかかります。

なので、3倍かはともかく、給料以上に社員やスタッフに稼いでもらわなければ事業は継続できないのです。

労働分配率との関係

労働分配率とは、人件費÷粗利益額で計算され、粗利益額に占める人件費の割合です。

人件費とは、お給料に法定福利費と呼ばれる社会保険料と、福利厚生費を合わせたものを一般的に呼びます。
社会保険料がお給料の15%程度、福利厚生費は企業によって違いますが、一般的には5%程度と言われています。

つまり、お給料20万円であれば、20万円×120%=24万円となります。
この時の粗利益額が60万円であれば、24万円÷60万円=40%が労働分配率となります。

そして、理想は粗利益額の20%の利益を残すこと(=損益分岐点80%)ですから、粗利益額60万円×20%=12万円となります。

つまり、粗利益額60万円ー人件費24万円ー固定費24万円=経常利益12万円となります。

この場合、お給料20万円の3倍稼げというのは的を得ているといえます。

実際には業種、業態によって違う

上記の例題を見ていただいて、気づいた方もいるかもしれませんが、固定費がいくらかかるかによって稼がなければいけない利益は違います。

例えば上記の例題で固定費が50万かかるとしたら、人件費24万円+固定費50万円=74万円ですから、粗利益額60万円では、粗利益額60万円-固定費計74万円=▲14万円と赤字になってしまいます。

3倍稼いでも赤字ではダメなわけです。

この場合、理想の損益分岐点比率80%を達成するためには、人件費と固定費の合計である74万÷80%=92.5万円の粗利益額が必要となります。92.5万円ー74万円=18.5万円(92.5万円×20%=18.5万円)

お給料の何倍かというと、20万円のお給料の社員は92.5万円÷20万円=4.625倍の粗利益額を稼がなければいけないこととなります。

つまり、お給料の何倍稼ぐべきか?3倍というのは、目安であって本来は、業種業態によって違うということになります。

稼ぐ人員が何人いるか?

1億の売上で粗利益理50%、粗利益額が5,000万円の事業でも稼ぐ人間が何人いるかで給料の何倍稼ぐべきかは変わってきます。

仮に平均年収400万円で8人の会社、固定費が800万円の会社とします。(社会保険や福利厚生費は割愛)
利益は粗利益額5,000万円-人件費3,200万円(400万円×8人)-800万円=1,000万円(5,000万円×20%=1,000万円)
となります。

仮に、8人全員が粗利益額を稼ぐプレイヤー(わかりやすくいえば営業マン)であれば、5,000万円÷8人=1人625万円稼げばいいので、625万円÷400万円=1.28倍稼げばいいことになります。

しかし、8人中4人が事務員で、4人がプレイヤーであれば、5,000万円÷4人=1人あたり1,250万円稼がなければいけないこととなり、1,250万円÷400万円=3.125倍稼がなければいけません。

粗利益額を稼ぐプレイヤーとそれ以外の人のバランスによっても違うわけです。

一般的にはいくら稼げば良いのか?

上記のように業種業態、プレイヤーの占める割合によってもかわりますが、一般的には社員数を1人とカウント、アルバイトやパートを0.5人とカウントし、1人1,000万円の粗利益額を稼げればいいと言われています。

それでも足りない事業は、儲かる事業構造ができていないか、プレイヤー以外の人が多すぎるということになります。

1つの基準として、1人あたり1,000万円は参考にしてみてください。

編集後記

一般的にいわれている給料の3倍というのは、あくまで目安だということがわかっていただけたと思います。

しかし、給料の3倍というのは利益が確実に出る数字であり、1人1,000万円の粗利益額というのも、よほどお給料の水準が高い事業でないかぎり、目安になる数字です。

給料の3倍稼いでも、粗利益額を稼がない人間を含めた総人数で、1人1,000万円の粗利益額稼いでも、利益のでない事業は、事業構造自体に問題があるといえます。

1人1,000万円で1/3が給料とすると333万円が平均年収ですから最低限といえるでしょう(業種にもよりますが…)

1つの目安として参考にしていただけたらと思います。

最後に

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